8 サルシュ
翌日、夜陰に紛れてサルシュの館に一人で赴く。
昨日の偵察隊からの情報によれば、かなりの人数が館に出入りしていた。
一年前の状態より更にサルシュの力は増している様だ。
ダンジョンでの採掘や採集も力の増長の一端を担っているのだろう。
物々しい警備の中俺はサルシュのいる部屋の外に身を潜めた。
これだけ物々しい警備だと、俺のダンジョンの魔物を嗾けても、こちら側もかなりの被害を受けるだろう、出来ればダンジョンに誘き寄せて有利に戦いを進めたい。
魔物達による視界だけの情報ではその糸口が掴めない。
とにかく情報が欲しい。
何やら室内が騒がしい。
そっと覗き込む。
「姉さん!母さん!今助ける!!離せぇぇぇ!!」
「ほう。元気の良い小僧だ」
相変わらずゴテゴテの装飾を全身に着けたサルシュが一年前より更に肥えた肉体を揺らして嬉しそうに微笑む。
「旦那!大人しくさせますか?」
「この細っこい腕をポッキリって手もありますぜ」
叫ぶ少年の左右に立ち、少年の腕を拘束しながら、冒険者ライルと冒険者ダウがそう提案した。
「いや、これもまた一興。どんな反応が見れるか楽しみじゃないか?母親と娘どちらが先が良いかね?」
穏やかにそう言ったサルシュはネットリした視線を、天井から下げられた鎖に手錠で繋がれた細身の女性2人に注いだ。
「こんなこと許されないわよ!ロウは?主人は何処に?」
先程の少年の言からすると2人の女性と少年は家族なのだろう。
姉と言っても差し支えない母親の方がサルシュを睨み付けながらそう尋ねる。
「旦那の居場所が知りたければ素直になる事だ。悪い様にはせんよ。むしろ今までのように土にまみれて生活せんでも良いようにしてやるぞ。2人ともまずは足を大きく開くんだ」
勝ち誇ったように話しかけるサルシュに向ける母親の視線は汚物を見るような目だ。
「あんたの言いなりになんてなったら、ロウに会わせる顔が無いよ!さっさと離せクズ!」
「いつ迄、そういう口が聞けるか楽しみになってきましたよ。ダウさん、お願いします」
「了解しました」
ポキュッ
奇妙な音を立てて少年の左手の小指が、手の甲側に曲げられた。
「ガアァアアアアグウゥゥアアアアアア」
「やめてっ!もうやめて!レントには手出ししないでっ!」
「ジーナ!レント!ロウがきっと助けに来てくれるそれまでの我慢よ!こんな奴らの脅しに屈したら一生這いつくばって心を砕いて生きていく事になる!」
号泣する娘と絶叫する息子に母親は気丈にも激を飛ばす。
「どうやら少し気が立ってる様だね。お腹が減っているのかい?先に食事にするかね?」
意味あり気な笑みを浮かべたサルシュが手を叩く。
パンッ!パンッ!
「おいっ!おいっ!食事だっゴルスさん!例のモノを運んでちょうだい!」
魔導師ゴルスが大鍋の下に滑車が付いたモノを格闘家ジウと一緒に運び込んできた。
リストの上位陣が勢ぞろいだな。
絵に描いたような悪党共で惚れ惚れする。
鍋の材料もこの流れと、鍋が運び込まれてきてから室内に漂う香りで大方の予想はつくが。
さぁて、この後どうなるんだろうな…




