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外道の道も本能故  作者: モロモロ
第一章
6/90

6 少年

オラの名前はサマル。

今日は遂に桜芋の収穫の日だ。

先日10歳の誕生日を迎えたオラは初めて収穫に参加する。


普通は15歳を過ぎなければ収穫には参加出来ないのに、なんて誇らしい事だろう。

みんなは「ぜんぜん羨ましくない」と口を揃えてオラをやっかむ。


オラのお父ちゃんは優秀な農夫で、今は豪農と呼ばれている。

一昨年までは、小さな畑でコツコツと営んでいたが、昨年からサルシュさんが経営する食堂と専属契約をしたり、近隣の農家を買い取って畑を拡大したり、他の食べられなくなった農家から口減らしに子供を預かったりして丁稚奉公として雇っている。


「サマルもたもたすんな!出発するぞ!」


3男のバルタ兄さんがオラを怒鳴りつける。急いで行かなきゃゲンコツが待ってる。


「今行くだっ!」


外で待っていたお父ちゃん達と畑まで連れ立って歩く。

居住区から3の城壁に向かって30分ほど歩くと桜芋の畑が見えてきた。

オラの住む町は北から

     北


     海


    領主様の館

    1の城壁

川  商業区、居住区  川

    2の城壁

   工房区、農業区

    3の城壁

   

     南


となっている。

北は海、東西は川と天然の要害となっており

、南の3つの城壁は東西に20kmの長さで町を守ってくれている。


畑までの道のり、お父ちゃんの右横にはアリアさんが付き添っている。

初めてアリアさんに会ったのはバルタ兄さんが17の誕生日の日に家に連れてきたんだったっけ、当時から凄く綺麗な人だったからアリアさんを射止めたバルタ兄さんを羨ましく思ったのを思い出す。


そんなアリアさんも、今はお父ちゃんの3番目の奥さんになっている。

豪農って凄いんだな。

アリアさんの親父さんも今はお父ちゃんの畑で働いている。


今でもバルタ兄さんとアリアさんが夜中にひっそりと会っているのはオラだけしか知らないだろう。


「もうすぐ桜芋の畑に着くだ!芋を傷つけねぇ様に採るんだど!マロサのとこは初めての収穫だったな?オラがしっかり指導してやっからこっちさ来い!」


お父ちゃんが後ろを振り返りながら声をかける。

列の後方よりロウさん一家が父ちゃんのところに進み出る。

最近、お父ちゃんが買い上げた農家の一家だ。


息子のレントはオラと同じ年で近所だった事もあり仲が良い。

レントのところも、買い上げてもらったお陰で安定的な収入を得ることが出来るようになったって喜んでくれてた。


農家にしてはレントのところは子供が少なく、レントの上にジーナっていう姉ちゃんがいるだけだ。ジーナさんは母親のクレアさんに良く似たお淑やかで慎ましやかな美人で、面倒見も良く、レントはジーナさんが大好きだって公言してる。

レントの親父のロウさんとクレアさんは子供たちを溺愛してて、だからなのかレントはちょっとだけ甘えん坊で弱虫だ。


桜芋の畑に着くと、お父ちゃんがそれぞれの畑に人員をテキパキと割り振っていく、父ちゃんの畑には、俺とレント、ジーナさんとクレアさんという初心者4人が集められた。


ロウさんはバルタ兄さんと一緒の畑を収穫することになったようだ。


お父ちゃんは、桜芋の葉の見分け方から始まり、鍬の入れ方、芋の掘り出しまでを、手取り足取り熱心に教えてくれた。

俺とレントはスジが良いということで、どんどん作業を進めるように言ってもらえた。

誇らしい。


ジーナさんとクレアさんは中々コツが掴めないのか、午後になっても、お父ちゃんの熱心な指導が続いている。手取り足取り汗だくになって鍬の振るいなどを丹念に教えている。

お父ちゃんのこういう親切なところにアリアさんも惹かれたんだろう。



夕闇が迫る頃、突然お父ちゃんが倒れた。

オラが急いで駆けつけると、お父ちゃんの背中に青く光る槍のようなモノが刺さっていた。


ザスッ


次の瞬間、オラの足元の地面にも青白く光る槍が刺さる。

振り返ると、ロウさんが、ジーナさんとクレアさんの手をひいてレントと一緒に逃げるところだった。


オラはどうすればいいのか分からず、とにかくお父ちゃんを揺すり起こそうとした。


「お父ちゃん!お父ちゃん!」


ピクリともしないお父ちゃんの大きな背中。


「サマル!どけっ!」


バルタ兄さんが駆け寄ってきてお父ちゃんを抱え起こす。

お父ちゃんの土まみれの顔、目は見開いたまま焦点が合ってない、口から血の泡を吹いている。


「お父ちゃんはもう駄目だ。逃げるぞサマル!」


バルタ兄さんはそう言うと、オラの手をひいて駆け出す。

あまりに突然の事に、足が縺れてうまく走れない。

あの偉大で強くて凄いお父ちゃんが死んだ?

まさか?


「サマル!もっと速く走れ!逃げ遅れるぞ!」


バルタ兄さんの声で意識を戻すと、周囲に雨の様に、赤や青の槍のようなものが降り注いでいる。一瞬、綺麗だなと思った。


畑の土が軟らかく、足を取られる、知っている人が何人も倒れている。

工房区が見えてきたところで、オラの手をひくバルタ兄さんの背中に槍が刺さった。

それでも兄さんは走り続けたけど、背中に滲んだ血がじんわりと広がり少しづつ走るスピードが落ちていく。走っていた兄は遂には歩きになり、その足取りが止まる。


「サマル。お前だけでも逃げろ。俺はもう走れない…」


突然、オラの手を握っていた兄さんの手が緩む。

同時に倒れこむ兄さん。


「兄さん!兄さん!兄さんを残してなんて行けないよぉ!」


兄さんを揺するが、その表情は、先ほどのお父ちゃんと同じ顔をしていた。

命の息吹を感じられない。

ああ、兄さん。

寂しい。寂しいよ。


兄さんの横に座り込んだ俺の前に、青白い顔の子供が現れた。

赤い服を着て赤い髪をした子供。良く見れば背中から羽のようなものが生えている。

目の錯覚だろうか?

同じ顔の子供が何人も増えていく。空から降りてきてる?

後から降りてきた子供たちは口をモグモグと動かしている。

オヤツの時間でもないのに……


ふと子供たちが手に何かを持っている事に気付き、視線を送ると、そこには人体の一部が握られていた。

それぞれの手にいつも見慣れて憧れていた働き者で無骨で逞しい手や足が。

最後に降りてきた子供が齧っているモノ。

目を虚ろに見開いたお父ちゃんがコッチを見ている。


「わぁぁぁっぁぁぁぁぁっぁぁぁぁあああああああ」


オラは訳が分からなくなって、子供たちに殴りかかっていった。


子供たちがみんなでオラに両手向けている。

その手が青白く光出す。


一瞬の痛みと暖かさを感じた。


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