決してこれは逃げたわけではあり(以下略
さて、なにやら神とか語り出した少女の前から走り去った彼は自室に閉じこもっていた。今彼を悩ましているのは、いかにしてあの危ない転校生を自分の周りから排除するかということである。
ちなみに檜垣燐音は彼の頭の中では最早A級危険人物と成り果てていた。いきなり変なことを言い出したとは言え、彼女の様子はせいぜい中二病を拗らせちゃった痛い人位のレベルだ。そんな女子高生を前に反駁もせず走り去った所に彼の動揺っぷりが窺える。何しろ彼は愛の告白をされたことはあれ、某魔法少女への勧誘めいたことなど経験したことが無かったのである。大概の人は無いと信じているが。
そのため冷静沈着を信条とする彼も少々彼女の発言には驚かされた。そして脇目もふらず逃げ帰った訳である。本人に言わせれば戦略的撤退(笑)であろうが。
「さて、どうしましょうか…」
紅茶を淹れて少しは落ち着いたのだろう彼は思考を始める。無論議題は、どうやって彼女、檜垣燐音を亡き者にするか。…最初より随分目的が犯罪寄りになっている。というか犯罪だ。
「やはりシンプルな方が露見しにくいでしょうね。変なトリックをつけても話題になると面倒ですし…。それよりも普段の素行が問題ですね。今彼女に何かあれば、付きまとわれている私に疑いの目が向くことは明白です…。」
やがて、彼の沈みこんだ意識は物音によって引き上げられた。コツコツ、と何かを叩くような音が彼の耳に入る。
「…?」
顔を上げた彼は、どこからだろうと部屋を見回し、それから窓を向いた。
はたして、そこには今まさに彼が思い描いている彼女の姿があった。
そして彼女は彼の視界から消えた。
短めです。