はじめまして、消えてください。
「というわけで、お約束的に隣の席だよ!よろしくね!」
青年は朗らかに挨拶する彼女を綺麗に無視すると、窓の外を眺めた。
暗雲が立ち込めていた。
まるで今日の自分のようだ、と嘆息する。
「ねぇ、無視してる?してないよね、今朝会ったばっかなのにそんな失礼なことしないよね?」
彼は思考した。そもそも目覚めからして悪かった。占いなんて信じない主義だが、今回ばかりは考え直さなければならないか。
「あー、そういうことしちゃうんだ?いいよ?別に寂しくなんて無いからね!」
まあ過ぎたことは忘れよう、一時間目は物理か。そんな風に結論づけ鞄から教科書を取り出した。
「ほんとにスルーしないよね?話進まないよね?ちょっとはこっち見てくんないかな!」
そして読み始めた。
「うああああひどいひどいひどいひどい!!!もういいよ!こうなったら朝の出来事ぜーんぶ洗いざらい話してあげるからね!」
「はじめまして檜垣さん早速ですがそのよく動く口を閉じてついでに息も止めて座っていてください」
「ひどっ!第一声それかよ!」
「五月蝿いですね。ええ、本当に五月蝿いです」
「二回も言うことなの!?」
「大体朝のこととは何ですか?私とあなたは初対面のはずですよね」
「はあ?忘れたとは言わせないよ!今朝、私のことを、」
「今朝といえば私はなんともはた迷惑な方に会ったんですよ」
「え?」
「その方は登校中だった生徒の模範である私に話しかけてきて、その上丁重にお引き取り願ったところ、暴力をふるおうとしたんです」
「それは嘘だね!サラっと嘘吐かないでね!」
「おや、あなたは男女平等を謳っておきながら、女性が男性に与える暴力は認めないんですか?」
「うええ?そういう訳じゃなく…って話をすり替えないでよ!誤魔化されないからね!」
「まあ兎に角なんとかお帰りいただけたんですが…」
「いやいやゴミステーションだったよね!」
「もしあなたがその迷惑な方だと仰るなら私は不本意ながら対処しなければなりませんね。」
ここまで来てやっと彼女は不穏な空気に気づいたようだった。
「勿論私としてはそうでないことを望んでいるのですが、自衛のためなら手段はいとわない主義です。」
「あれ、待って待って私被害者だったよね?何で?何でこんな私が悪かったみたいな流れになっちゃってるのかな?」
「さて、答えをいただけますか檜垣さん。あなたと私は初対面ですよね檜垣さん。そのはずですね檜垣さん。どうなんですか檜垣さん。」
「あ、う。え、ええと、ううー、は、はじめまして!!仲良くしてねぇ!!」
「はじめまして、出来れば一刻も早く転校してください。」
追い詰められ自棄になったように叫んだ彼女だったが、一連の会話から察するに、彼と仲良くするのは少々難易度が高すぎるようだった。
会話多すぎましたね。
というか早く展開しろよって話ですね。