占いほど当てにならないものはないですね。
その日、彼はいつもより遅く目がさめた。目覚ましより早く起きるのが通例だったのだが、アラームを聞いて起きたのだ。珍しい、と原因を考えてみても、夜更かしをしたわけでも無い。首をかしげながらも制服に腕を通し、部屋を出た。
リビングのテレビをつけ、紅茶を淹れる。
「―ラーは赤!さて、今日の一位はー?」
能天気なアナウンサーの声を聞き流し、そういえば星座占いを見るのは三年ぶりくらいだったかと考えた。
「―座のあなた!素敵な出会いがありそうです!ラッキーカラーは青です、よい一日を!」
今思えば、これが今日起きることの予兆だったのかもしれない。というのはあんまりといえばあんまりだった。
事件は、会議室、ではなく、通学路で起きた。
「そこのあなた!ちとまたれぃ!!」
「はい、何の用ですか?」
勢いよく声をかけられた青年は、戸惑うことなく振り向いた。これには少女の方が驚いた。
「な、なんでそんな簡単に振り向いちゃうのかな!自意識過剰なの?そうなの?ここは、
「そこのあなただよ!待って!!」
「え!?も、もしかして僕ですか?!」
"こんな美少女が声をかけてくるなんて、何てラッキーなんだろう!ヤッタネ!"
ってなるべきでしょ!!」
「…あなたが何に憤っているのか知りませんが、用がないなら失礼してもよろしいですか?」
「あ、これはすいませんでした、お引き留めして申し訳ない…ってちがう!何でここまでして、用は特にありません!ってことになるの!?意味わかんないよ!」
「言いたいことがあるなら、少し整理してから話しかけられてはいかがですか?無駄な時間を他人のために割くほど、私は暇ではありませんので。それでは。」
「っだから待ってってば!話を聞けよ!」
「何の権限があってあなたは私に命令するんですか?」
「命令なんかしてないっ!もぉ…。少しあなたと話したいんだけど。…お願いシマス。」
「お断りですね。私は見ての通り登校中ですし、あなたと話したいなど、これっぽっちも、爪の垢ほども思いません。残念ですが諦めてください。」
固まっている少女をよそに彼は歩き出した。今日は朝から絡まれるなんてついてないですね、と考えていると腕が掴まれた。
「このまま登校させると思ってるの?!話、絶対聞いてもらうからね!!」
どうやら今日は厄日となりそうだった。
紅茶を好きなのは作者です。どうでもいいですねすいません。
お茶請けはドーナツがいいです。訊いてませんよねすいません。