平凡なプライベートですよ。
雨の日。ひどく片付いた、ともすると生活感のない、と言われてしまうような部屋で青年は目をさました。ベッドから起き上がり、まだ鳴っていない目覚まし時計へと手を伸ばす。
「…4時、23分…。」
早すぎますね、と呟きながらも彼はベッドから抜け出した。秋の中頃、少し肌寒い部屋で、青年は上着をはおり窓を開ける。
雨粒が跳ねて、窓に近い机を濡らす。しかし彼はそれも気にならないようで、ひたすらに外を見つめていた。
やがて気が済んだのか、窓を閉め、濡れてしまった部屋を丁寧に拭っていく。それから素早く制服に着替えると、階下へと降りていった。
所変わって、学校。
授業が終わり、道具をしまう彼のもとに男子生徒が駆け寄る。
「なぁ、悪い!ノート見してくんねぇ?」
「…また居眠りですか?感心しませんね。」
「だってよぉ、池本の声って眠くならねぇ?あれで寝ない方がおかしいっつーの!」
「そうですか…。まあ、あなたが寝ようと寝まいと私には関係ないことですしね。どうぞ。」
「…とりあえずさんきゅー!」
昼休み。
「そういえばさ、お前一昨日告白されてたじゃん。結局どうなったの、アレ。」
「…あぁ、そんなこともありましたね。勿論彼女の想いを尊重しましたよ。」
「…前もそう言ってなかったか?」
「私を好きでいることを許可しただけですけど。」
「…。」
午後。
「それで、ええと…。こないだはどこまで話したかな…」
「垣崎先生、教科書183頁14行目、"確執を残すこととなった。"までです。」
「そうだ、そうだったな、うん。じゃあ富士」
「次の時間は大庭くんから始める、とおっしゃっていましたよね?」
「…そうだったかな。」
放課後その1
「先輩、付き合ってください!」
「御気持ちは嬉しいです。ありがとう。しかし、私はあなたとは付き合うことができません。」
「…ぁ、でも、その、私は」
「ですが、あなたが他に好きな人ができるまでは私のことを好いていてくださって結構ですよ。」
「…はい?」
放課後その2
「おいてめぇ何ぶつかっといて素通りしようとしてんだよ!」
「もしかして私のことですか?」
「てめぇ以外に誰がいるんだよ!どこに目ぇつけて歩いてんだ、ぁあ!?」
「顔に決まっているではありませんか。」
「…はあ?!」
「いえいえ、あなたのおっしゃりたいことはわかっています。ちょっとしたジョークですよ。」
「てめぇふざけてんのか!」
「ふざけているのはあなたの方でしょう。くだらない言いがかりで人に絡むのは、やめていただけませんか?この様な愚かしいことをしている暇があるのなら、そのチンパンジーにも劣る知能指数を上げる努力でも、なさったらどうです?」
「んだとてめぇ!!!」
「―昨日の放課後、喧嘩があったらしい。他校の生徒の話だが、ひどい怪我だったそうだ。我が校の生徒諸君も巻き込まれないように充分注意してくれ。」
「喧嘩だってよ。ヤバくねぇ?」
「本当に。全く、ひどい話ですね。」
青年はいたって普通の学園生活を送っている。
と、自分では思っている。
迷走するかもしれないですね。