ドキッ、神様のヒ・ミ・ツ!(CV:燐音)
「かくかくしかじか、これこれうまうまって訳なんだよ。」
「なるほどわかりませんね。」
「もー、なんでわかんないの!?」
地団駄を踏む自称神様を、男子学生たちは冷たい目で見つめながらかく述べた。
「呪文唱えられたところでわかるわけないでしょうが。あなたは馬鹿なんですか?」
「それ通じるのは、ある程度の情報が開示されてる状態だけだよねー。」
「周知の事実を反復説明するのを防ぐために存在する言葉です。あなたみたいな面倒くさがりが、なにも考えずに乱用していい言葉じゃありませんよ。」
二人に説教をされた燐音は涙目になる。それにしてもよく怒られる神様である。
「別にそんな責めなくても良くない?私可哀想じゃない?」
いつもはここで間にはいる尚樹だか、さすがに疲れてきたのか力の無い声を出した。
「まあぶっちゃけいつまでふざけてんの?って感じではあるかな。説明回で説明しないつもりなのかって思っちゃうし。」
「こんなに尺がとれる機会なんてそうそう来ませんよ。話の途中に無理矢理挟むと、いつもグタグタな展開がさらにややこしくなりますからね。できるならここで終わらせてほしいところです。」
「私に前回とか言うなって怒ったくせに自分では言うんだね?」
「私がルールですから。」
「うざい!」
一通り済んだところで、燐音が仕切り直しとばかりに咳払いをした。
「じゃあねぇー…。私たちは人間よりとっても優れた存在なの。」
「貴方が私より優れている…ですか。」
「そうだよ!」
「…。」
「なに…その人を小バカにした笑いは!!」
怒り出した燐音をなだめるように青年は手をふる。
「いえいえ、なんでもありません。それで、だからどうだっていうんです?」
「…もういいよ、君を気にしてたら進まないからね!ふんだ!無視無視!」
ホント進まねぇなぁ、声に出さずに尚樹は嘆息した。
「そう、神は至高の存在!私たちは人間が生きるために必要とする諸々は一切いらない!まさに!永遠なる至高の存在!」
「なんと…」
驚きを隠せない様子の青年に、燐音はご満悦な様子である。
「ふふん、ようやく至高の存在である私の偉大さがわかったのかなぁ?」
「驚かされましたね…」
あなたのボキャブラリーの貧困さには。
彼が心の中で付け加えた後半部分には気づかない自称神様は、ひどくご満悦な様子だった。
知らぬが仏である。
「まあ、そんな感じな訳だから。私たちは頑張ってお仕事する必要がないわけ。君たちが夢中になって集めるあの紙切れ?お金?あんなののために少ない人生を浪費するなんて…ぷぷっ、ほーんとご苦労様なことだよね!」
「あ、ダメだこれ腹立つわ。」
「同感ですね。しかし調子にのって口の滑りが良くなってきたようですから、もう少し聞いていましょう。」
人間二人はおとなしく座り直した。
「ただ、それだと私たちすること無いんだよね!すっごい暇!すっごい暇なの!」
「ふむふむ。」
「なるほどねー。」
聴衆のやる気の無い相づちも気にせず、彼女は話を進める。
「そこで、至高の存在の私たちは!」
あ、また言ったなぁ、と尚樹。
他に言うことないんですかね、と相方もこぼした。
「自分達の足元でウロチョロしてる奴等の管理を仕事にすることにしたんだよ!合わせて社会システムを組み立てて、私たちの"生きがい"を作ったの。延々と続く安寧と怠惰のなかに溺れてしまわないようにね!」
「へー。」
尚樹は思ったより大したことの無い理由に脱力する。青年の方はというと、事務的に質問をぶつけ出した。
「それでは、貴方方の報酬とはなんですか?まさか暇潰しのためとはいえ、ボランティアでやってるわけでもないでしょうね。」
「うん、タダで働く神なんていないね。私たちは働いたぶん、娯楽を手に入れることができるんだよ。ここら辺はめんどくさいし、説明する必要もあんまり感じられないから割愛するけど!」
「二度手間になるよりは今説明してほしいですが…まあいいでしょう。では、少々戻りますが、"幸せにする"という行為はどういうものなんですか?」
「それはね…」
「それは?」
尚樹が聞き返す。
「●●●!」
「ひきっぽく終わらせる必要はありませんから。」
暑くて溶けそうです




