Who are you?
「それで?なんでお二人さんはそんなにいがみ合ってるわけ?」
「私が知るところではありませんね。彼女が突っかかってくるだけですよ。」
「き・み・が!話を聞いてくれないからでしょ!?」
燐音が転校してきて早一ヶ月。本格的に冬の気配が立ち込めてきた頃、彼らは依然として膠着状態を保っていた。
要するに、神様だと主張する痛い娘と、それを辛辣にあしらう青年の図がまだ続いている訳である。
「聞く必要性が皆無だと早々に判断したまでです。嫌がる人間に付きまとうとは、大変結構な御趣味ですね。」
「あはは、そっちが一度でも真剣に話を聞いてくれたら私も手間が省けていいんだけどな?」
「おや、真剣に議論するようなことなど一つも無かったと記憶しているんですが。」
「君は真面目になれない人なんだね。相談にも乗れないんだから。進路だって適当に決めたんでしょ?どうせなら別のとこ行ってくれれば良かったのに。」
「そうですね。私ほどの頭脳があれば、何処へ行っても似たようなものですから。」
「そういう嫌味なところが嫌がられるんじゃないの?」
「私は事実を述べているだけであって、それを不快に感じるというのはただの僻みでしょう?」
「根性がねじくれちゃってるんだね、可哀想に。同情するよ。」
「私に同情されるような点があるとすれば、それはあなたに付きまとわれているというただ一点ですよ。」
ここに来て、完璧な笑顔を保っていた燐音が顔を歪めた。もともと気の短い方である彼女が嫌味の応酬をするというのは無理があったようだ。寧ろ、彼女を知っている人ならば、よくここまで続いたものだと感心するだろう。
「いい加減にしてよ!!なんなのさっきから私の悪口ばっか!人を害虫みたいに言わないでよね!」
「そんなにあなたのことを貶めた覚えはありませんが。しかし、そうですね。たしかに失礼ですね。」
「ふん、わかったんなら謝ってよ。」
「ええ、全世界の昆虫に謝罪の意を申し上げます。あなたと害虫を同列に置くなど、無礼千万ですから。」
「はあ?!」
「さしずめあなたは、ミトコンドリア…いえ、それ以下ですね。」
「単細胞生物以下なの私!!」
「同じやり取りを何度も繰り返すなど、学習能力の低さが霊長類とは思えないほどですよ。犬だって芸を覚えられるのに、あなたといえば…」
「ううううるさいな!」
「動物園のチンパンジーの檻にでも同室させてもらったらどうです?彼らはとても賢いですからね、少しはましになるかもしれません。」
「私にバナナ食べてろって言うの!?」
「誰がそんなこと言ったんですか。」
「わかった、わかったから二人とも落ち着いて?ね?」
ますます(いろんな意味で)酷くなっていく口論に、少し離れて傍観していた男が割って入った。これ以上続けられると腹筋が崩壊しそうだったので。
「いやあ、はは、面白いもん見せてもらったけど、ふ、あんまりやると喧嘩になっちゃうしさぁ?」
「もうなってるよ!」
「そんな下品なことはしませんよ。大体喧嘩というのは、相手と対等な立場にあって成立するものですから。」
「そうだね、人間なんて下等な生物と対等なわけないからね!私神様だし!」
「デブリ以下は黙っていて下さい」
「え?デ、何?!」
「生物というものは何にせよ偉大な存在です。あなたと比べるなんておこがましいことできませんよ。」
「だから、その、デ、デブ?なんとかって何なのさ!?」
「何故あと一文字わからないんですか。」
「ちょ、ヤバ、もう無理!」
仲裁に入った男が盛大に笑い出したのを見て、青年の方は我に返ったようだった。不愉快だとでも言わんばかりに、片方の眉毛をつり上げ男を睨み付ける。
燐音の方はといえば、耳まで真っ赤に染め上げてから、怒りのままに怒鳴り出した。
「なんで笑ってんのこいつ!!!!!馬鹿にすんな!あれ、つーか誰!?」
「え、俺クラスメイトだけど!?」
一話一話が短いかな、と思ったりします。




