エピソード9 勘違いドジっ子は話したい
昼休み。
教室の空気はいつも通り騒がしいのに、俺の頭は妙に静かだった。
結希が隣の席で、俺の筆箱を勝手に開けている。
「ゆーと、消しゴムまた減ってない?」
「知らねぇよ。お前が持ってったんだろ」
「失礼な。借りただけだし」
いつものやり取り。
当たり前すぎて、考える必要もない距離感。
その時だった。
視線を感じた。
ふと顔を上げると、廊下の向こうに――
芦戸澪が立っていた。
一瞬、目が合う。
澪は驚いたように瞬きをして、すぐに視線を逸らした。
(……あれ?)
昨日ぶつかっただけの相手。
それなのに、妙に記憶に残っている。
澪はそのまま何事もなかったように歩いていった。
「今の誰?」
結希が何気なく聞いてくる。
「え? あー……昨日ちょっとな」
「ふーん?」
やけに勘の鋭い声。
でも、それ以上は突っ込んでこなかった。
少ししてから、今度は三奈美が俺の席に来た。
「一ノ瀬さん、この前の本……」
「あ、ありがとう。もう読み終わった?」
「はい。とても面白かったです」
本の話をしているだけなのに、
なぜか背中に視線を感じる。
さっきと同じ場所。
廊下の角に、澪がいた。
今度は目が合わなかった。
いや、正確には――
合う前に、澪が目を伏せた。
(……なんだ?)
変な感じだった。
嫌な空気じゃない。
でも、放っておくと気になってしまう類の違和感。
昼休みが終わり、澪の姿は見えなくなった。
放課後。
靴箱へ向かう途中、ふと昨日のことを思い出す。
角でぶつかったこと。
眼鏡を外していたこと。
澪が一瞬、言葉を失った顔。
あれは――
(……気のせいだろ)
そう思おうとした時。
「一ノ瀬、くん」
後ろから、少しだけ控えめな声。
振り返ると、澪が立っていた。
昨日より少し距離がある。
逃げ道を残した立ち位置。
「昨日は、その……ありがとう」
「え?」
「ぶつかった時、気にしなくていいって言ってくれて」
そんなことで、わざわざ?
「いや、別に大したことじゃ……」
「でも、嬉しかった」
澪はそう言って、小さく頭を下げた。
それだけ。
それ以上、踏み込んでこない。
「じゃあ……ばいばい」
澪はそれだけ言って、去っていった。
引き止める理由も、言葉も、
俺には見つからなかった。
でも。
胸の奥に、妙な余韻だけが残る。
気づけば、結希や西園寺さんとは違う形で、
澪の存在が頭に引っかかっていた。
──(あの子はどうしたんだ?)
自分にそう問いかけている最中
誰かが俺を見ていること。
それに気づいてしまった。
はい、そろそろインフルネタ擦るのは辞めます。さぁあれは誰が見ていたんでしょー見ていた人とどんな事がおきるのでしょー次回のお楽しみです。今回も読んでいただいてありがとうございました!余計ブックマークといいねお願いします!感想もお願いします!




