エピソード8 勘違いドジっ子は一直線
芦戸澪は、その日一日ずっと落ち着かなかった。
──昨日の昼休み。
「眼鏡ないと、すごくかっこいいですよね」
……言った。
言ってしまった。
(ああああああ!!)
布団の中で転がりながら思い出すだけで、顔が熱くなる。
でも。
(でもでも……)
一ノ瀬悠翔。
ぶつかったときに見た、あの顔。
優しそうで、少し困ったようで、でもちゃんと目を見てくれる人。
(絶対、いい人だよね……)
澪は自分の胸をぎゅっと掴んだ。
(これって……一目惚れ、だよね)
──翌日
廊下を歩きながら、澪はきょろきょろと周囲を見回す。
(いない……)
クラスも違う。
席も分からない。
そもそも、あれ以来ちゃんと話してない。
(昼休みに声かけよう……!)
そう決意した矢先。
「いた!」
勢いよく走り出した澪は——
「きゃっ!」
つるっ。
ドンッ。
「うわっ」
今度は、壁じゃなくて人だった。
しかも。
「……また?」
見上げた先にいたのは、一ノ瀬悠翔本人。
(これって…運命!?)
「ご、ごめんなさい!!」
「大丈夫?」
「はい!あ、いえ!たぶん!」
意味不明な返事をしながら、澪は立ち上がる。
(やばいやばい近い近い)
今日は眼鏡をかけている。
(でも……それでも……)
「はぁ…かっこぉ…」
「え?」
「な、なんでもないです!!」
澪は深呼吸して、意を決した。
「あの、一ノ瀬くん!」
「はい」
「私……昨日のこと、ちゃんとお礼言えてなくて」
「昨日?」
「角でぶつかったときです!」
「ああ」
「それで……その……」
言葉が詰まる。
頭が真っ白になる。
(何言うんだっけ!?)
「……優しくしてくれて、ありがとうございました!」
深々と頭を下げた。
一ノ瀬は一瞬驚いた顔をしてから、少し困ったように笑った。
「それだけ?」
「はい!」
「律儀だな」
(やさしい……)
心臓がうるさい。
「あと……」
澪は思わず続けてしまう。
「一ノ瀬くんって、誰にでもああなんですか?」
「どういう意味?」
「その……優しいの」
一ノ瀬は少し考えてから言った。
「自分では普通だと思うけど」
(それが一番ずるい)
「……そっか」
その瞬間。
澪の脳内で、勝手な結論が出る。
(これは……チャンス……?)
「じゃあ!」
澪は勢いで言った。
「また……お話ししてもいいですか?」
「別にいいけど」
即答だった。
(え、即答!?)
「じゃ、じゃあ……お昼とか……?」
「タイミング合えば」
(合えばってことは……可能性あり!?)
澪の頭の中で花火が上がる。
放課後。
友達に囲まれながらも、澪は上の空だった。
「澪ー、どうしたの?」
「え、なにが?」
「ニヤニヤしてる」
「してない!」
(たぶん)
そのころ。
一ノ瀬悠翔は、まったく気づいていなかった。
廊下で転び、勘違いし、
勝手に一目惚れして、
勝手に距離を縮めた少女が、
今日一日ずっと自分のことで頭をいっぱいにしていたことを。
──ドジっ子の恋は、だいたい全力で暴走する。
それを止める役がいないときは、特に。
次回予告的に言うなら。
この勘違いは、まだ始まったばかりだ。
こんにちはインフルのわんわんです。錠剤を2錠同時に飲めるようになりました。進化ですねー。三奈美ちゃん、結希ちゃん、澪ちゃん3人の回をそれぞれ書いて見ましたどうですかね。皆さん今のところは誰が好きですか?わんわんは秘密にしておきますね。今回も読んでいただいてありがとうございました!よければブックマークといいねお願いします!感想もお願いします!




