エピソード21 体育祭2
三奈美の競技本番
放送席から名前が呼ばれた瞬間、空気が一段変わった。
『次の競技、女子障害物競走。第一走者、赤組――西園寺三奈美』
ざわ、と観客席が揺れる。
派手な歓声というより、どよめきに近い。
期待と視線が、一斉に集まる感じ。
俺は無意識のうちに、少し背筋を伸ばしていた。
スタート地点に立つ三奈美は、他の競技のときと同じ体操服のはずなのに、どこか違って見えた。
姿勢がいい。
無駄な動きがない。
周りの騒がしさから、少し切り離されたみたいに静かだ。
「……やっぱ雰囲気あるよな」
隣で結希が、珍しく小声で言った。
「近寄りがたい系だよね。ああいうの」
澪も頷いている。
「でも、ちゃんと見てくれてる人には優しそうです……」
それ、分かる気がした。
三奈美は軽く深呼吸をして、前を見据える。
表情は落ち着いているけど、指先がほんの少しだけ強張っているのが分かった。
――緊張してる。
それが分かるのは、俺がずっと見ているからだろう。
『位置について……』
笛を持った先生の声が響く。
『よーい……』
一瞬、世界が静止する。
『スタート!』
笛の音と同時に、砂が跳ねた。
三奈美は、飛び出しが速い。
無駄に力を入れず、一定のリズムで地面を蹴っていく。
「速っ……」
誰かが呟いた。
第一障害、低いハードル。
三奈美は歩幅を乱さず、軽く跳ぶ。
――きれいだ。
跳び方が派手じゃない分、着地が安定している。
着地の音が小さい。
続く段ボールくぐり。
ここで詰まる選手が多い。
しゃがんで、前傾になった瞬間。
三奈美のポニーテールが揺れ、砂埃が舞う。
一瞬、出口が見えなくなったのか、動きが止まった。
「……っ」
観客席が息を飲む。
でも、次の瞬間。
三奈美は迷わず身体をひねり、前に出た。
「今の判断、すごくない?」
結希が感心したように言う。
事実だ。
焦って無理に突っ込むと、引っかかる。
でも三奈美は、一拍置いて最短ルートを選んだ。
次は平均台。
ここでバランスを崩す選手が続出する。
三奈美は、腕を大きく広げない。
視線を前に固定して、一歩一歩、確実に進む。
落ちない。
揺れない。
「……静かに強いな」
思わず、そんな言葉が漏れた。
最後の障害、麻袋ジャンプ。
袋に足を入れる瞬間、さすがに少し手間取る。
周りが追いついてくる。
「西園寺さん、後ろ来てる!」
澪が声を上げる。
三奈美は一度だけ、歯を噛みしめた。
――そこから。
一回目のジャンプ。
二回目。
三回目。
派手じゃない。
でも、確実に前に進んでいる。
最後の直線。
袋を脱ぎ捨てた瞬間、全力疾走。
ゴールテープが近づく。
――一位。
テープを切ったのは、三奈美だった。
一拍遅れて、歓声が爆発する。
「おおおお!!」
「やった!!」
俺は、気づいたら拳を握っていた。
三奈美はゴールしたあと、少し息を整えてから、周りを見回す。
そして。
一瞬だけ、俺の方を見た。
目が合う。
ほんの一瞬。
でも、確かに――微笑んだ。
控えめで、でも確かな笑顔。
その瞬間、周囲の喧騒が遠のいた気がした。
「……これは」
結希が、ぽつりと言う。
「圧倒的だね…」
澪も小さく頷いている。
俺は何も言えなかった。
ただ、胸の奥がじんわり熱くなっていた。
――そして。
俺は思い出す。
「もし体育祭で一位になれたら、お願い事を……」
三奈美の言葉。
今、その条件は――満たされた。
次に来るのは、
その“お願い”。
そして、俺自身がアンカーとして立つ番だ。
体育祭は、まだ終わらない。
三奈美ちゃんは元々圧倒的マドンナキャラなんですけど最近マドンナ感全く出せず恋する乙女って感じだったので少しマドンナ感出せたかなーって感じです笑やっぱり色んな人に自分の作品を見てもらいたいと思っていてよければ皆さん宣伝してみていただけませんか?設定自体は面白いと自負しております。一人でも多くの人に見ていただけるようにご協力よろしくお願いします。




