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エピソード18 明日は体育祭!



明日は体育祭だ。

校内は放課後になっても、どこか落ち着かない空気が漂っている。

廊下には未だに色紙やガムテープの匂いが残っていて、グラウンドの方からは運動部の掛け声がかすかに聞こえてきた。


俺たち実行委員の仕事も、ひとまず区切りがついた。


「ゆーとー!終わったねー!」


振り返ると、結希が両腕を伸ばして大きく伸びをしている。

いかにも「やり切った」って顔だ。


「あぁ。でも、明日が終わるまでは終わったとは言えないだろ」


「真面目か!」


結希はそう言いながらも、どこか安心したように笑った。

確かに、ここ数日は実行委員の集まりで放課後がほとんど潰れていた。

忙しかったはずなのに、今こうして終わってみると、少しだけ物足りない気もする。


「明日は本番だしさ、今日は早く帰って寝なよ?」


「結希がそれ言うの珍しいな」


「失礼な!一応、気遣いはできるんですー」


そんなやり取りをしていると、背後から控えめな声が聞こえた。


「あ、あの……」


振り向くと、西園寺三奈美が立っていた。

いつもより少しだけ緊張しているようで、両手を前で組み、視線を床に落としている。


「一ノ瀬さん、少し……お時間いいですか?」


「ん?あぁ、大丈夫だけど」


結希が一瞬だけ俺と三奈美を見比べる。

その目が、何かを察したように細くなった。


「じゃ、私は先に帰ってるねー」


軽い調子で言いながらも、去り際に俺の肩をぽん、と叩く。


「無理させんなよ、実行委員長代理さん」


「誰が代理だ」


そう返す間に、結希はもう廊下の向こうへ消えていた。


残されたのは、俺と三奈美の二人。


「どうした?」


俺がそう聞くと、三奈美は一度だけ深く息を吸った。

そして、意を決したように顔を上げる。


「もし……もしなんですけど」


少し震える声。


「体育祭で、私が出る種目で一位になれたら……」


言葉を選ぶように、一拍置いてから続ける。


「その時は……一つ、お願い事を聞いてもらえませんか?」


一瞬、頭が止まった。


「お願い事?」


「はい……」


三奈美は頬を赤らめながら、でも逃げずに俺を見ている。


「内容は……まだ秘密で……」


秘密、という言葉がやけに胸に残る。


「……まぁ、別にいいけど」


断る理由は、正直なかった。

三奈美が変なことを言い出すタイプじゃないのは分かっている。


「ありがとう……ございます」


その瞬間、彼女の表情がふっと柔らいだ。

ほんの一瞬だけ、安心したように笑った気がする。


「じゃあ、明日……頑張って」


「はい。頑張ります」


そう言って、三奈美は小さく会釈をして去っていった。


一人になった廊下で、俺は天井を見上げる。


──体育祭で一位。

──お願い事。


特別な言葉のはずなのに、どこか現実味がない。

ラブコメなら、ここで変に意識し始めるんだろうけど、俺はまだ実感が湧かなかった。


下駄箱へ向かう途中、窓の外を見る。

夕焼けに染まったグラウンドでは、明日の準備が着々と進んでいる。


その端で、結希が誰かと話しながら、ちらりとこちらを見た気がした。

目が合った瞬間、意味ありげに笑って、すぐに視線を逸らされる。


……何なんだよ。


胸の奥に、言葉にならないざわつきが残る。


明日は体育祭。

たぶん、ただの学校行事だ。


でも、なぜか。


「何も起きない」と言い切れない自分がいた。



すみません!またもや投稿期間があいてしまった…申し訳ない…西園寺さんのお願い事気になりますね、何をお願いするんでしょうか。ゆーとは変なことは言わないだろうと考えてたけど実際どうなるんでしょうか…そもそも勝てるんでしょうか!お楽しみに!今回も読んでいただいてありがとうございます!よければブックマークといいねもお願いします!感想もお願いします!

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