エピソード14 宣言
……やっぱり。
体育倉庫の前で、扉が開いた瞬間に見えた空気で分かった。
ゆーとと、西園寺さん。
二人の間に流れてたのは、何もなかった顔じゃない。
「何してたの?」
私は、わざと軽い声で聞いた。
探りを入れるときは、重くしないのがコツだって知ってる。
「物品確認だよね?」
ゆーとは一瞬だけ目を逸らして、そう言った。
──あー、これ。
この目の逸らし方。
昔から変わらない、隠しごとするときの癖。
「ふーん」
私はそれ以上突っ込まなかった。
突っ込んだら、逃げるから。
西園寺さんは、いつも通り静かだったけど……
さっきまでとは違う。
頬がほんのり赤くて、前髪を何度も直してる。
──あー、はいはい。
これ、完全に何かあった人の仕草。
「鍵、閉まってたみたいだね。大変だったでしょ」
そう言うと、西園寺さんは少し驚いた顔をしてから、こくっと頷いた。
「はい……少し、焦りました」
声が、やけに柔らかい。
……焦った、ね。
ゆーとと二人で。
「じゃ、次の作業行こっか!」
私は明るく言って、二人の間に割って入った。
物理的にも、心理的にも。
歩きながら、ゆーとの横顔を盗み見る。
──変わってない。
相変わらず鈍そうで、ぼーっとしてて、陰キャ気取り。
でも。
誰かと何かが起きたあとの顔は、してる。
私は、幼馴染だから分かる。
小学生の頃、
初めてクラスの女子にチョコもらったときも、
初めて告白未遂されたときも、
全部この顔だった。
「ねぇ、ゆーと」
「ん?」
「最近さ」
少しだけ声を落とす。
「自分がどう見られてるか、考えたことある?」
「……急だな」
「急じゃないよ」
私は前を向いたまま言う。
「前はさ、誰もゆーとを“男”として見てなかった」
「ひどくない?」
「事実でしょ」
でも、と心の中で続ける。
今は違う。
「今はね」
私は笑ったまま、釘を刺す。
「ゆーとが思ってるより、ちゃんと見られてる」
「……そうか?」
「そう」
その言葉に、ゆーとは特に反応しなかった。
──だから厄介なんだよ。
自覚がないまま、距離を詰めるところ。
放課後、実行委員の作業が終わって、皆が散っていく。
西園寺さんが、少しだけ振り返って、ゆーとを見る。
ほんの一瞬。
でも、確かに特別な視線。
……(なるほどね。そうなんだね西園寺さん)
私はその様子を、ちゃんと見逃さなかった。
(澪のときと、同じだ)
違うタイプなのに、同じ目。
「……ふーん」
誰にも聞こえないくらいの声で呟く。
「ゆーと」
「なんだよ」
「覚えときなよ」
私は立ち止まって、にっと笑った。
「私は、ずっと隣にいるから」
「え?それ、どういう…」
「何でもない」
でも、それは宣言だった。
恋人でもなく、
告白でもなく、
離れないという意思表示。
──まだ、譲る気はない。
でも火種は、
今日、確実に増えた。
私はそれを、ちゃんと分かってる。
幼馴染だから。
でももうその関係は捨てたいってそう心の中で唱えた。
とうとう結希ちゃんの気持ちが露呈してきましたね。私としては今のところ澪ちゃんの話が薄いかなと思っております。これについては誠に遺憾でございます。なんつって笑どういうことやねん。私は皆さんの感想を聞きたいと思ってまして。本当にお願いします感想を書いて頂けませんか?お願いします。今回も読んでいただいてありがとうございました!よければブックマークといいねお願いします!感想もお願いします!




