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エピソード12 ラブコメ的超一大イベント



クラスの雰囲気も、体育祭が近づくにつれて少しずつ浮ついてきた。

廊下では競技の話、放課後は応援の練習。

いつもより声が大きくて、笑い声も多い。


……本来なら、俺もその空気を感じていたはずなんだけど。


「一ノ瀬、次これ確認しとけ」


「はいはい……」


正直、それどころじゃなかった。

実行委員の仕事が、想像以上に忙しい。


「結希、ここの動き確認しておいてくれるか?」


「えーめんど――」

今、確実に「めんど」って言いかけた。


「……お、おっけー!わかったー!」

露骨すぎる方向転換に、思わずため息が出る。


「お前な……」


「細かいこと気にしない!ほら次次!」


今は本当に、猫の手も借りたいくらいだ。

先生はどうして、この人数で回ると思ったんだろう。

そんなことを考えていると、


「一ノ瀬さん」

静かな声が、後ろからかかった。

振り返ると、西園寺三奈美が資料を抱えて立っている。


「物品の確認なんですが、一緒に体育倉庫まで来ていただいてもよろしいですか?」

どうやら、少し力仕事になるらしい。


「わかった。行こうか」

そう言って、俺たちは校舎裏へ向かった。



体育倉庫の中は、相変わらず独特の匂いがする。

マット、平均台、謎に古いボール。

体育祭で使う予定の物品を、一つずつチェックしていく。


「ハチマキ……ありますね。色も揃ってます」


「綱引きのロープも問題なさそうだな」

淡々とした作業。

二人きりだけど、変に気まずくなることはない。

三奈美は、必要以上に距離を詰めてくることもないし、

かといって壁を作るわけでもない。

ちょうどいい距離感。


──落ち着くな。

そう思った、その時だった。

 

 ガチャ。


背後で、はっきりとした音がした。


反射的に振り返る。

この音を聞いた瞬間、俺の脳裏に一つの言葉が浮かんだ。

──ラブコメ的・超大型イベント。


「あれ? 今、何の音が鳴ったんですか?」

三奈美は首を傾げている。


「……まぁ、ドア開けてみれば分かるよ」


嫌な予感しかしないけど、事実確認は大事だ。

三奈美が倉庫の扉に手をかけ、ぐっと押す。

……動かない。

引く。

……やっぱり動かない。


「……開きませんね」


「だろうな」


「え……?」

三奈美が、ゆっくりこちらを見る。


「もしかして、私たち……」


「閉じ込められたっぽいな」

一瞬、沈黙。

倉庫の中に、やけに大きく換気扇の音が響く。


「……どうしましょう」

声は落ち着いているけど、少しだけ不安が混じっている。


「とりあえず、スマホで連絡――」

ポケットを探る。

……圏外。


「……だよな」

校舎裏の倉庫。電波は期待できない。

三奈美もスマホを確認して、小さく息を吐いた。


「誰かが気づいてくれるのを待つしか、なさそうですね」


「だな。実行委員もバタバタしてるし、そのうち来ると思う」


「……はい」

そう答えた三奈美は、倉庫の壁に背中を預けて座った。

俺も、少し離れた位置に腰を下ろす。


「すみません……私が確認に誘ったばかりに」


「いや、気にすることじゃない」

むしろ、俺が鍵のことを確認すべきだった。


「それに」

三奈美が、少しだけ笑う。


「体育祭前に、こんなハプニングがあるのも……記憶に残りそうです」


「前向きだな」


「本は、トラブルがあった方が面白くなりますから」

──なるほど、読書脳の発想だ。


「一ノ瀬さん」


「ん?」


「実行委員、大変じゃないですか?」


「まぁ……正直きつい」


「ですよね」

即答だった。

「でも、不思議です」


「何が?」


「一ノ瀬さん、逃げ出しそうなのに、ちゃんと全部やってます」


「それ、褒めてる?」


「はい。かなり」

そう言われて、少しだけ照れる。


「西園寺さんこそ。こういう役、得意じゃないだろ」


「得意ではないです。でも……」

一瞬、言葉を探すように視線を落としてから、


「みんなが一生懸命なので。ちゃんとやりたいなって」


静かだけど、芯のある声だった。

──やっぱり、この人すごいな。




「一ノ瀬さんここ暑くないですか?」




いやー遂に来ましたね、体育倉庫閉じ込めイベント!これは自分でラブコメ書く上で絶対に書きたいイベントだったので書けて嬉しいです。誰と閉じ込めさせようかなと悩んだ末に1番しっくり来た三奈美ちゃんにしました。閉じ込めは次のエピソードでも続くので楽しみにしておいてください。今回も読んでいただいてありがとうございました!よければブックマークといいねお願いします!感想もお願いします!

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