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第5話 月の里

 ━━……二人はリィラの元まで戻った。あの時のあの神妙な趣はどこに行ったのだろうか。そう思えるくらい二人の雰囲気は明るい。


「……疑問」


「どした?」


「愚問」


 カゲツの質問にリィラはそう言って嫉妬するような目を向けた。


「……ま、まぁ、そう思われても仕方ないですよね……」


「え?は?え?」


「……爽快」


「はぁ……どゆこと?」


 カゲツはそう言って頭の上にはてなマークを浮かばせた。そして、そのはてなマークを頭の上で騒ぎ散らかせる。


「マジで分からないんですか?」


「なんの話しをしてるかさっぱり分からん。ま、とりあえず祭りを楽しもうぜ」


 カゲツはそう言ってリィラとフィロウの手を掴み走り出した。2人は引っ張られて転けそうになるが、直ぐに姿勢を戻して走り出す。


 そんな2人は心から楽しそうで、心の底から笑っていた。


 ━━……そして次の日……


「はい!ということで、旅立つ時が来たみたいだな」


「んっ」


 カゲツの言葉にリィラは頷く。


「うぅ……もう行っちゃうんですね」


 フィロウはそう言って涙を流した。


「いや、もうって……お前らのせいでもう夜なんだよ!見ろ!太陽は既に山の陰に隠れ始めている!道は赤く染まり、夜の訪れが見えるんだぞ!」


 カゲツはツッコミを入れるようにそう言った。


「だ、だって……寂しかったんですもん……」


「はぁ、まぁいいけどさ、なんで街のみんなで俺らを止めたんだ?」


 カゲツは頭を抱えながらそう聞いた。すると、村長のような人が前に出てきて言った。


「昨日が月日つきびだったからじゃよ。月日の次の日は何があるかわからん。急がば回れという言葉があるように、急ぎすぎるでない」


「なるほどな。で、今は大丈夫なのか?」


「月日の次の日の夜は神隠しがよく起きるという伝説がある。もしかしたらお主らがそこに行ってくれると思っての」


 村長は突然神妙な顔をやめてそんなことを軽く言った。


「死ねってか?」


 カゲツはピキピキと血管を浮かばせながら聞く。


「いやいや、お主らなら神隠しの先まで行ってくれるじゃろうと思っての。なぁに、多分帰って来れるぞ」


 村長はそう言って高らかと笑った。しかし、カゲツは笑えなかった。ため息をひとつ着くと、村の外に目を向ける。その先には道があった。しかし、その道は木々で覆われている。


「……はぁ、行くしかないのか……。てか、俺が帰ってくるのは来年だぞ?」


「手紙をよこしてくれればそれでいい」


「んなもん書いたことねぇよ。ったく、あんたろくな死に方しねーからな」


「死に方なんぞどうでもよかろう。楽しく生きればそれでいいんじゃよ」


 村長はそう言って笑っていた。カゲツはため息をひとつ着いて茜色に染る道を見つめた。少し道を外れれば暗闇だ。そんな道を進ませようと言うのだ。この村長は。


「ま、いいや。世話になったよ。ありがとな」


 2人はそう言って歩き出した。茜色に染る道の上に立つと、二人の影がくっきりとその道に映し出される。


 リィラはそれを見てカゲツの手を掴んだ。そして、手を繋いでルンルン気分になる。すると、地面に映し出された影も手を繋いでいた。そして、嬉しそうにルンルンと歩いている。


「光によって映し出された影は、分身体みたいなものだよな。俺らに人生という大きな時間軸の、沢山の道があるように、影にも大きな時間軸と沢山の道を持っている」


 唐突にカゲツがそんなことを言い出した。リィラは首を傾げてカゲツを見る。すると、カゲツはフッと笑って言った。


「何でもないよ。そんなことより前見ろよ。道が無くなってるぜ」


 カゲツはそう言って目の前を指さす。


「変異。周囲。確認」


 リィラがそう言うと、カゲツはあることに気がついた。なんと、周りの景色が変わっているのだ。先程までは茜色の道に森があったのに、今は夜のように真っ暗な森の中にいる。しかも、そこにある植物は今までに見た事もない。


「うわっ、神隠しやん」


 カゲツはそう言った。すると、リィラが震えながら頷いて、カゲツの腕をがっしりとホールドした。


「リィラ、離れるなよ」


 カゲツはそう言ってリィラの体をなるべく自分に引き寄せる。そして、自分が来ているコートでリィラを覆い、いつでも守れるようにする。


「何者だ!?」


 カゲツの叫び声が響いた。そして、周りの木々がざわめき始める。カゲツは目を開いて暗闇を見つめた。本来なら見えるはずもない。しかし、カゲツはちょっとした能力で見えるようになった。


「……」


 しかしリィラはそのことに気がついてないようだ。


「出てこい!」


 カゲツはそう叫ぶ。すると、物陰から黒い服で身を包んだ男が出てくる。しかも、服装が少し珍しい。くらいせいで見間違えているのかもしれないが、その様子はまるでしのびのようだった。


忍者にんじゃ……?」


「上……!」


 唐突にリィラがそう言って指を指した。カゲツはそれを見て上を見る前にリィラを抱き抱えサッと後ろに飛び退く。すると、先程まで2人がいた場所に2人の忍が降りてきた。


「あら、よく気づいたわね」


 2人のうち1人がそう言った。カゲツはその言葉に対して何も反応しない。ただ、睨みつけるだけだ。


「……」


「……」


「っ!?」


 突然2人が消えた。カゲツとリィラはずっと見ていたはずなのに、忽然と姿が消えるのをその目に写す。カゲツはそれ見て驚き言葉を失った。しかし、即座に何かを感じとり頭を下げる。すると、その上をクナイが過ぎ去って行った。


「……」


 カゲツは目を瞑り集中する。そして、リィラに気づかれないように仮面を手のひらに作り出した。そして、その仮面を被る。


「リィラ。閃光弾を使うから目を閉じてて」


 カゲツはそう言ってリィラに目を閉じさせ、さらにその目を手で覆い隠す。その刹那、カゲツの体が黄色く発光した。さらに、カゲツにまとわりつく閃光が弾丸のようにその場にいた忍全員に襲いかかる。


「「「っ!?」」」


 その場にいた忍は全員その技に反応出来ずにやられてしまった。殺された訳では無いが、完全に気を失ってしまう。


「……さて、これで終わりか」


 カゲツは直ぐに仮面を外して光の粒子とさせ霧散させた。そして、倒れていた2人の忍に近づく。


「女かよ」


 カゲツはそう呟いて倒れている女忍の服をぬがし始めた。


「……提案」


 リィラがそんなことを言ってきた。それを聞いてカゲツは手でずっと目を隠していたことに気づく。そして、その手を離した。


「リィラ、そっちの女もこっちに持ってきてくれ」


 カゲツはそう言ってリィラの体を自分に抱き寄せた。そして、離さないように強く抱きしめる。それと同時に女忍の服をどんどん脱がしていく。


 ちょっと大きな胸がボヨンっと出てきた。そして、服の裏に大量のクナイやら何やらの暗器が隠されているのが分かる。


「まぁ、そんなもんだよな」


 カゲツはそう言って下半身も暗器を探そうとした時、唐突に女忍が起き上がった。そして、起きるなりすぐにカゲツに向かってクナイを突きつけてくる。


 しかし、カゲツは動じることは無かった。女忍がクナイを突きつけるより早く、短剣を首筋に突きつけた。そして、ついでにリィラがその腕をしっかりとつかみ、胸まで鷲掴みした。


「あなたの負けよ」


 女忍はそう言う。すると、カゲツの頭にクナイを突きつけたもう1人の女忍がいることに気づいた。と、言うより、気づいていた。カゲツは言われる前から既に知っていたのだ。


「そうだね。で?何?」


「馬鹿な人。分からないの?たとえ私を殺しても、あなたは死ぬの。それと胸を掴むのをやめなさい」


「拒否」


「俺からも1つ教えてあげよう。俺の背後に立たない方がいい」


 カゲツはそう言ってこっそり自分の背後に簡易的なロケットを置いた。そして、それにすぐ火をつける。すると、そのロケットはボンッと音を立てて飛び上がると、女忍の顎を殴り飛ばした。


「っ!?」


 女忍はその1発で完全に気絶してしまった。どうやら完璧な位置にクリーンヒットしたらしい。


「嘘っ!?」


「どうやら俺の勝ちみたいだな。どうする?死にたいなら殺してやってもいいぞ」


「っ!?……クッ……!」


 カゲツがそう言って笑っていると、女忍は苦しげな表情をうかべる。そして、少しだけ目に涙を浮かべ始めた。


「死ぬのは怖いが……里のためだ。殺してくれ……!」


「は?え?お前頭イカれてるだろ。正気か?」


 カゲツはそう言って少しだけ女忍にひく。そして、どうしようか悩んでいると、近くに人がいることに気がついた。その人の気配がした方向を見ると、偉そうな女性が立っている。


「何者だ?」


「私はこの里の長。カゲツ様に挨拶をしに来ました」


「へぇ、長直々に俺に挨拶か。目的は俺だけか?」


「そうですね」


 カゲツはその言葉を聞いて少しだけ怒ったような目で長を睨む。


「来て貰えないでしょうか?」


「……良いだろう」


 カゲツはそう言って長について生き始めた。その間、リィラを話さないようにがっしりと抱き抱えていた。


 そして、カゲツ達が里に入ると、何故かカゲツは里中の人から賞賛され、祝福された。まるで、なにか特別な人でも来たかのように盛り上がっている。


 カゲツはそんな里の人達を見ながら長について行く。長はカゲツのことをチラチラと見ながら広場のような場所まで連れて行った。そして、まるでスピーチを行うかのような台の上に立つように案内する。その台の周りには里中の人が集まっていると思えるほどの人が集まっていた。


「……」


 そして、カゲツは台の上に立った。すると、長はカゲツの前の台の下に立った。そして、カゲツの方を向いてひざまづき言った。


「お待ちしておりました。『月人様つきびとさま』」


 長はそう言った。その刹那、里にいた人達全員がカゲツに向かって膝まづく。


「っ!?」


 カゲツはその言葉を聞いて驚き言葉を失った。そして、直ぐにリィラを見る。


「っ!?」


 リィラはまるで殺す対象を見つけたかのようにカゲツを睨みつける。そして、これまで見せたこともないような顔を見せ、オーラを纏わせて言った。


「月……人……?」


「っ!?な、な、な、何言ってんだよ……!俺が月人って……そやなわけ……」


「本当は!?」


「っ!?」


 カゲツはリィラが唐突に叫んだことに驚き言葉を失った。そして、両手を震わせながら説明しようとする。しかし、怖くて言葉が出なくなる。


「あら、ご存知無かったのですね。カゲツ様は我々月の里の者が待ち望んでいた月人で在られます」


 長は空気を読まずにそう言った。そのせいでリィラの雰囲気がさっきと全く違うものになる。


「っ!?待て!リィラ!こいつらの言うことを信じるのか!?」


「……じゃあ、本当はどうなの?」


 リィラは少しだけくらい声でそう聞いてきた。カゲツはその質問に対して言葉を詰まらせる。


 違うと言えばそれで終わりになるのだろう。だが、カゲツはリィラに嘘はつけないと思っている。既に1つ嘘をついているため、これ以上はつけない。そう思っている。だから、いいえと言えない。


「否定……出来ないんだ」


「……いつか、話すつもりだったから……全て終わった時、謝るつもりだったから……」


「そう、でも、もう遅いよ」


 リィラはそう言って振り返った。そして、先程攻撃してきた女忍の耳を掴み、引っ張りながら言った。


「宿に案内しなさい。金はあなたが出すのよ」


「お待ちください。宿は我々が用意しております。そちらにどうぞ」


「……気が利くわね。案内なさい」


 リィラはそう言って女忍の耳を引っ張る。


「あと、もう1つ。ヒカリ、ホタル、あなた達は後で私の元へ来なさい。お仕置部屋に行って貰うわ」


「「「っ!?」」」


 その言葉を聞いた瞬間女忍の顔があおざめる。そして、怯えたように震え、目に涙を浮かべていた。


「……いい。そんなところに行くな。お前ら2人は俺とリィラの執事でもやってろ」


 カゲツは吐き捨てるかのようにそう言った。すると、女忍は驚いたような顔をする。長も少し驚いたような顔をして直ぐに頭を下げ言った。


「仰せのままに」


 カゲツは頭を下げる長を見て言う。


「貴様ら。この代償は高くつくぞ」


 カゲツは恐怖のオーラを放ちながらそう言った。


「お前、名はなんという?」


 長に向かってそう聞く。


「ミレアと申します」


「そうか、ミレアか。じゃあミレア、お前は後で俺の元へ来い。俺から直々にお前にお仕置とやらをしてやるよ。この里の全ての者の代表でな」


 カゲツは赤黒いオーラを纏わせ少しだけ殺意を込めた声でそう言った。


「それと、もしリィラに手を出すやつがいるなら……俺はこの里を消し潰す……!」


 死神のような言葉がその場に恐怖を与えた。

読んでいただきありがとうございます。ハッピーエンドに傾いてきました。

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