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最終回 月光舞う夜の旅の終わり

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……あの日から数ヶ月が経過した。3人はどこか静かな場所に家を買い、3人でまったりと暮らしている。


ブライと別れたカゲツは、一度実家に戻った。それも、リィラを連れて。最初の方は、リィラを見た両親はかなり怒っていた。なぜ人を連れてきたのか?なぜ人と共に生きるのか?と。


しかし、そんな考えもカゲツの一言で消え失せる。


「俺はミラを連れていくよ」


カゲツがそう言った時、両親は酷く慌てた。そして、何とかミラだけでも残るように説得をした。しかし、止まりはしない。本人の意思もあるし、1度決めたことは変えない。そして止まらない。3人はその思いで月下星まで戻ってきたのだった。


「……カゲツ、ご飯出来たよ」


リィラの声が聞こえる。その声でカゲツは目を覚ました。目を開けるとそこにはリィラが居る。どうやらカゲツに股がっていたらしい。


「おはよ。ご飯出来たよ」


「おはよ。じゃあ……俺はリィラを堪能するかな」


カゲツはそう言ってリィラに抱きつき布団の中に連れ込む。


「もぅ♡やめてよ〜」


リィラは笑いながらカゲツの胸に顔を埋めた。そして、布団の中で2人はイチャイチャする。そんな二人を見ていたミラは呆れたような目をしていた。


「お兄ちゃん!リィラさん!ご飯食べないの!?」


「「「っ!?」」」


ミラの声で2人はガバッと起きる。そして、カゲツは大慌てで布団から出て起き上がると、何事も無かったかのように椅子に座った。


「誤魔化しても無駄だよ」


「……ご飯食べよ」


カゲツは小さな声でそう言った。すると、ミラはカゲツに起こったような目をして顔を近づける。


「私言ったよね?ちゃんと反省してる?」


カゲツはその言葉に対して小さく頷いた。そして、立ち上がって台所に行こうとする。ミラは少し怒りながらも先に台所に向かった。


「リィラ、行こうぜ……って、なんで裸エプロンなんだ?」


カゲツはリィラにそう聞く。布団から出て初めてわかったが、リィラは裸エプロンだったのだ。


「なんでって、カゲツが喜ぶからだよ」


「え?まぁ、喜ぶけど……普通にしてても可愛いからそんな事しなくてもいいんだよ」


カゲツはそう言ってリィラの頭をなでなでする。そして、ゆっくりと服を着せ、そのまま台所に向かった。


「「「いただきます」」」


3人はそれぞれ手を合わせてそう言って朝ごはんを食べる。今日の朝ごはんはオムライスだ。朝から少し重ためではあるが、まぁいいだろう。


「あ、そういえばだけど手紙が届いてたよ。2人宛に」


「手紙?」


カゲツはミラから渡された手紙を見る。かなりの量だ。読み切るのに何日かかるのかと思ってしまうほど大量の手紙をカゲツは見ていく。


「……ふふ」


思わずカゲツは笑った。どうやらここにある手紙は全てこれまでカゲツが関わってきた人たちのものらしい。そして、その人達が皆協力して今日の午後に祭りを開催するようだ。その招待状が来ている。それも三通。


「祭り行こうぜ」


カゲツはそう言って笑った。そして、招待状を2人に手渡す。2人はその招待状を見て笑みを浮かべる。


「うん!行こ!」


「今すぐ準備!エプロンにストッキングに、あれとこれと……」


2人はそんなことを言いながら自分のバッグの中身を確認し出す。そんな2人を見ながらカゲツはもう1つの手紙を見た。


「これって……」


カゲツはそれを見ながらこっそりと笑った。そして、リィラに気づかれないようにその手紙をそっとポケットの中にしまった。


「とりあえず飯食ってから準備しろよな」


「「「んっ!」」」


2人はそう言って静かに朝ごはんを食べる。そんな二人を見ながらカゲツはにっこりと笑った。そして、早々に食べ終わり立ち上がると、自室に向かう。


「どこ行くの?ついて行く」


「準備するんだよ。着替えとか歯磨きとか……」


「じゃあ、綺麗にする。カゲツ、今すぐ部屋行く」


リィラはそう言って目をきらきらさせる。しかし、カゲツはどこか嫌な気がしたため、それを断り一人で部屋に向かって準備した。リィラは少し落ち込んでいたが、それも仕方ないと思った。


そして、それから時間は経過し準備を終えた。時計を見ると、既に起きてから2時間が経過している。


「どうするの?間に合うかな?」


「間に合うさ。俺がいるから」


カゲツはそう言って外に出る。そして、きちんと戸締りをして祭りが行われる方角を向いた。


「何するの?」


「瞬間移動的な高速移動」


「何それ?」


「まぁ見てろって。ほら」


カゲツはそう言って2人に手を差し伸べる。すると、2人は戸惑いながらも手を握った。


カゲツは2人の手を強く握ると、全身から黄色い光を放った。その光は瞬く間にカゲツの体にまとわりついていく。


「じゃ、行こうぜ」


カゲツがそう言うと、3人の体はだんだんと粒子になって散乱していく。


「え?あ、ちょ、待って、怖い」


リィラがそう言ってブルブル震えながらカゲツに抱きついた。カゲツはそんなリィラを笑いながらゆっくり抱きしめる。


ミラはなれているのか動じてなかった。


そして、3人の体は段々と粒子となっていき、その粒子はどこか遠くに向かって飛んでいく。


3人の粒子はとんでもない速さで飛んでいくと、すぐに祭りの会場までたどり着いた。そこに着くと、粒子は再びカゲツ達の体を構築し始める。


「……っ!?か、変わった……!」


リィラは突然場所が変わったことに驚いた。粒子化している時は基本的に光速で動いている。だから、瞬きしたら違う場所にいる感じだ。


リィラは怯えながら周りを見渡す。そんなリィラをカゲツはゆっくりと抱きしめた。


「……苦しい……」


リィラはそう言ってもがく。しかし、カゲツは離れない。そのままスーハーとリィラの匂いを吸って森の奥に走っていこうとした。しかし、後ろからミラが殴ってきて離れることができた。


「ちょっと!早く行くよ!」


「悪ぃ悪ぃ」


「てか、みんな待ってるよ」


「え?」


カゲツは素っ頓狂な声を上げる。そして、門がある方向を見ると、そこには何人かの人影を見つけた。


「あいつら……はえーよ」


カゲツはそう言って人影に向かって歩いていく。近づくと、それがこれまでカゲツが出会ってきた人達だと分かった。


「もぅ、遅いですよ!」


「久しぶりですね!待ってました!」


「そういうだらしないところが良くないんですよ」


「早くしないと祭り終わっちゃいますよ」


皆はそれぞれそんなことを言ってくる。カゲツはそこにいる全員に目をやりニヤリと笑った。


「え?なんですか?その気持ち悪い目は」


「まさか、私達を犯すつもりですか!?」


「なんでそうなるんだよ!しねぇよ!俺はリィラと子供を作ると決めている」


「それもそれでやばい発言ですよ」


皆はそれぞれガヤガヤと言ってくる。カゲツはため息をひとつ着くと、リィラの手を握って門をくぐり抜けた。


「全く、やかましい奴らだな」


「でも、それだけ平和になったってことだし、それだけカゲツが出会ってきたってことだよ」


リィラは珍しくそんなことを言う。カゲツは少し驚きながらも、少し嬉しそうに笑った。そして、ゆっくりと振り返り、後ろから歩いてくるミシュリア達を見た。


「……10年の旅は無駄じゃなかったんだな」


カゲツはそう言ってリィラを見る。リィラは楽しそうにヨダレを垂らしていた。


「なんか食うか?」


「ん!」


リィラはそう言って楽しそうにてけてけとどこかに向かって走っていく。カゲツはその後を追いかけた。すると、次々とリィラは食べ物を売る屋台にむかっていく。カゲツはそんなリィラを楽しそうに眺めていた。


その時、カゲツはふとミラのことが気になった。今カゲツはリィラと二人で行動しているが、ミラは果たして誰かといるのだろうか。そう思って辺りを見渡す。


もう既にあのグループは別れていた。チラホラと別の場所にミシュリアやフィロウ、ヒカリにホタルを見つける。


「……カゲツ、あれ誰?」


リィラは巨大なウインナーを加えながらある場所に向かって指を指した。その方向を見ると、なんとブライがいるのだ。


「え?なにしてんの?」


カゲツは思わずそうつぶやく。すると、その声で気がついたのか、ブライがカゲツの方を向いて近づいてきた。


「やぁ、久しいね。あの日以来だ」


「何してんの?」


「ん?あぁ、いや、呼ばれたから来たんだよ」


「呼ばれたって……どうやって?」


「あの日以来ずっと月を良くすることばかり考えてたから、カゲツがいた村にお供え物を持っていこうと思ってさ。あの惨劇を忘れない為にも、必要だと思ったんだ。そしたらたまたまミシュリアちゃんと出会っちゃって、カゲツの話で意気投合し今に至るのだよ」


「マジかよ。やべー縁だな」


「ハハッ!確かにね!それより、俺が君たちの邪魔をするのは良くないだろ?すぐにどっか行くよ。それに、ミラちゃんをまたせてるんだ」


「え?お前ミラに何するつもりなの?」


「さてね。えっちなことするかもだし、しないかもだよ」


「したら殺す」


「ごめんごめん。しないよ。そんな怖い顔するなよ。ま、とりあえずまたどこかで」


ブライはそう言って手を振ってどこかに行ってしまった。カゲツは呆れながらもにやけながらブライに手を振る。そして、再びリィラの顔を見て笑顔になった。


「そのお面いいな」


「もう一個ある」


リィラはそう言ってカゲツにお面を差し出す。カゲツはそれを受け取るのを断ったが、リィラが無理やりカゲツの体によじのぼり、つけた。


「ん。似合ってる」


「ほんとか?でも、リィラが選んだものだからな。似合わないわけが無い」


カゲツはそう言ってリィラの口元に着くケチャップを指で取り、舐めた。リィラは少しだけ頬を赤くしていたが、カゲツはあまり気にしなかった。


そして、そのまま少しずつ時間が過ぎていく。真南に君臨する太陽も、既に半分以上傾いて、月が空へと浮かび始めていた。


カゲツとリィラはそれまで散々遊んだのか、大量の荷物を持っていた。しかも、いつの間にか服も着物に着替えている。


「……もうこんな時間か。短いな」


「楽しい時間ほど短い」


「それな。まじでクロノスの力欲しいよ」


「ふふ、そうだね」


2人はそんな会話をする。とても楽しそうだ。その場の雰囲気とも相まって、ロマンチックに見えてくる。


周りを見渡すと、既にイルミネーションが灯っている場所もちらほら見つけた。空はあかあおに別れてきている。カゲツは少しだけ深呼吸をすると、リィラに言った。


「……少し、来て欲しいところがある」


「何?」


「こっち」


カゲツはそう言ってリィラの手を掴みどこかに向かって歩いていく。リィラはそれを楽しみについて行った。


それから数十分ほど歩いただろうか。途中でてものに入ったし、途中で階段をあがったからなのか、リィラは少し疲れてしまっまている。


「はぁ……はぁ……まだ……?」


「……着いたよ。ここ。ここに来たかったんだよ」


カゲツはそう言ってベランダのような場所に出た。どうやらそこは、時計塔のベランダらしい。そのベランダの塀から顔を出せば、煌めく夜景が一望できる。


「綺麗」


「だろ。俺もさっき知った」


「そうなんだ。なんでここに来たの?」


「何でだろうな」


「?」


カゲツは戸惑うリィラを横目に塀に寄りかかった。そして、後ろ目に下を見つめる。少し離れた水辺でワチャワチャやってるのが見えた。カゲツはそれを見て少し笑うと、リィラの目の前まで行く。


「?」


リィラはさらに戸惑う。


「リィラはさ、これまで旅をしてきてどうだった?俺は楽しかったよ。旅の目的すら忘れるほどにね」


「私も……楽しかった」


「そっか。良かった」


カゲツはそう言って笑う。そして、さらに続けて言った。


「月の光はこの世界を幸せにする。そう思われてきた。たしかにそうなのかもしれないな。今のこいつらを見てたらそう思えてくるよ」


カゲツはそう言って手をヒラヒラさせると、リィラの前に片膝を着く。そして、在り来りな、でもかっこいい感じで指輪を取りだした。


「俺と結婚してくれ」


その言葉は月の光に乗って煌めきを放った。そして、それに合わせて夜空に大きな花が3つほど咲く。


破裂音とともに煌めく炎が2人を取り巻く。その様子は幻想的で、言葉に出来ないほどだ。


「……」


その光景に、言葉に、全てにリィラは心を動かされ言葉を失う。ただ、ポロポロと涙だけが落ちる。


そんな様子を見たカゲツは微笑む。そして、ゆっくりと立ち上がってリィラを抱きしめた。


「手を出して」


カゲツがそう言うと、涙で濡れる左手をリィラは差し出してきた。カゲツはその左手の薬指に優しく指輪をかけた。


「好きだよ、リィラ」


「はい……!私も……好き……!」


2人を月の光が照らし、燃える日の花びらが2人を祝福するように舞い上がっていた。

読んでいただきありがとうございます。ハッピーエンドです!

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