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11 令嬢エミリア、フラグが立つ。


 ハンターギルドを出た私達はとりあえず戦闘用の装備が販売されているお店に行くことになった。

 店内に入るといたる所に剣や鎧がずらりと並んでいる。建物自体も相当大きいので装備類はここで一括して扱っている感じなんだろう。


 私は多数の武具に目移りしながら順に見ていく。

 思えば私、どんなスタイルで戦うとか全然考えてなかったな。……できれば魔獣にはあまり近付きたくないから、遠距離タイプがいいかも。

 それにしても、値段はすごく高いものから結構お手頃なものまで色々だ。


「金は充分にあるんだし、エミリアの好きなの選べばいいよ。あれなんてどうだ?」


 セレーナがそう言って指したのは銃、というより携帯できる大砲だった。


 ……でか、いくら遠距離でもあれはないかな。価格も飛び抜けて高いじゃない。

 大砲に取り付けられている値札には二千五百万ルタと書かれていた。

 ちなみに、ルタはこの世界の共通通貨で、前世の日本の貨幣価値におきかえると大体一ルタが一円に相当する。なので、二千五百万だとちょっとした不動産が買えてしまう金額だ……。


 しかもあれだと常に砲弾も買わなきゃならないでしょ、と私が指摘するとセレーナは首を横に振った。


「いや、あの魔導砲は自分の習得している魔法を撃ち出すタイプだな。魔法補助の能力は杖なんかより遥かに高いはずだ」

「魔導って何なの?」


 疑問を口にするとセレーナは魔法装備と魔導装備について説明してくれた。

 まず魔法装備というのはその名の通り魔法が付与された装備品のことだ。セレーナの剣なんかがそうで、彼女の剣には切れ味が増す魔法、つまり攻撃力が上がる魔法が宿っているらしい。

 これに対して魔導装備は仕掛けが複雑で、複数の魔法が使用されているものを指すんだって。魔導兵器と呼ばれるものも存在し、この世界の最先端技術みたい。


「あの大砲も魔導兵器だし、あっちの鎧もそうだぞ」


 セレーナが見るように促してきたのは、ずっしりとした全身鎧だった。防御力は高そうだが、値段も二千万ルタとかなりの高級品だ。

 あんな重装備、着て戦える気がしない……。


「無理無理、きっと重くて動けないよ」

「重さはたぶん軽量化の魔法がかけられているから心配ない。さっきの魔導砲と合わせればかっこいいと思うんだけど。両方買えるだろ?」

「どんな重装令嬢だ、私自身が魔導兵器みたいになる。紙袋には五千万入ってるから買えるけど、買わない。そういえば、セレーナはあまり鎧つけてないよね?」

「私は動きの邪魔になるものはつけたくない方だからな。体を守るのは基本的には魔力だし、防御力を上げる装飾品もあるから問題ないよ」


 そういう装飾品があるなら私も買おうかな。

 それで肝心の武器なんだけど、やっぱり遠距離武器って扱いが難しかったりするんだよね。私に弓とか使えるかと問われれば甚だ疑問だし。あとできれば斬ったり刺したりするのも遠慮したい。

 よし、となればこれしかない。

 と私は手近にあったメイスを取った。打撃力アップの魔法が付与されていて百五十万だ。さらに、手頃なサイズ感の盾もチョイス。防御力アップの魔法付きで百万と値段もお手頃だね。そして、あとは防御魔法が付与されたこの指輪でいいか。価格は百五十万で、合計四百万となった。


 私の装備を見てセレーナは少し不満そうだった。


「五千万もあるのにそんなのでいいのか?」

「いいの、私は最低限自分の身を守れればそれでいいから。じゃあお会計を……、あれ、リーシェは?」


 店内に視線を彷徨わせると兎の契約獣は商品のネックレスをじっと見つめていた。

 ……尋ねるまでもなく、すごくあれが欲しそうだ。あれにも防御力アップの魔法がかけられているのか。リーシェも身を守るのがもふもふだけじゃ心細いだろうし買ってあげようかな。



 お店から出るとリーシェはほくほくした表情でネックレスを眺めた。


(ありがとうございます、防御力も上がりましたしエミリアが危ない時は私が盾になりますね!)

「頼んだよ、……それ、私の装備一式より高かったんだから」


 ……リーシェのネックレスは五百万ルタもする高級品だった。お金があると思っていいのを選んだな……。まったく、もふもふがあれば充分でしょ。


「あ、そうだ。私、何か攻撃の魔法を覚えたいんだけど」


 私がそう言うとセレーナとリーシェは揃って振り返った。


 武器での遠距離攻撃は諦めて、魔法で補うことにした。しっかり防御を固めて遠くから魔法で援護、これならそうそう死にかけることもないはずだ。

 確か、魔法は魔法結晶というのを体に取りこむことで習得できるんだよね。ぶ厚い本を読んだりしなくていいのはとても有難い。


 じゃあ早速魔法販売店へ、と言いかけたその時、リーシェが自分の毛の中を漁り出す。もふもふの中から取り出したのは輝く結晶が入った小瓶だった。


(これは火属性の最下級魔法〈ファイアボール〉です。たまたま持っていたのでよければエミリアにあげますよ。……ただし、魔法結晶でも取りこんですぐに習得できるわけじゃありませんからね)

「え、そうなの……? まあいいや、それちょうだい。けどリーシェって毛の中に物を収納しているんだね」

(はい、他にも色々と入ってますよ、お金も二百万ほど貯金しています)


 ネックレス、自分じゃ買えないから私に買わせたのか……。しかし、毛深いとは思っていたけど物を収納できるほどとは。どれどれ、他にはどんな物が入ってるのかな?

 ともふもふの中に手を突っこんで漁っていると、セレーナが一枚の紙を見せてきた。


「とりあえず装備も揃えたことだし、今から腕試しで最弱の魔獣でも倒しにいかないか? 実は、エミリアのためにさっきギルドで低ランクの依頼書を貰っておいたんだ」


 うーん、いきなり実戦は怖いけど、低ランクで最弱なら大丈夫か。Aランクの一人と一頭がいるし、まさか死にかけたりはしないでしょ。


 …………、今、なんかフラグを立ててしまったような……。


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