リボンの贈り物
進次郎は、思わずニコニコと笑みをこぼしながら、聖に近づいていった。聖の銀髪が、柔らかな光を浴びて繊細に輝いている。その姿を見ていると、彼女の無防備さが愛おしく思えて、思わず心が高鳴った。
「聖、これ、俺の気持ちなんだ」と、進次郎は用意してきたリボンを取り出し、彼女の頭に巻きつけた。聖は一瞬驚いたように目を丸くし、それから進次郎の優しさに気づいたのか、頬を赤く染めた。まるで、リボンに込められた思いが彼女の心に触れたかのようだった。
進次郎は、さりげなく蝶々結びを作ると、その手の動きが自分の心を踊らせることに気づく。「こんな風に結ぶと、可愛いよ」と言いながら、彼は少しばかり緊張していた。しかし、その瞬間、聖の視線が羽のように軽やかに彼を捉え、心が温かく満たされていくのを感じていた。
聖は、進次郎の手元でリボンが自分の銀髪に結ばれていく様子を静かに見つめていた。その目は、何か切ない思いと期待を秘めているようにも見えた。進次郎は、その視線に何かしらの重みを感じながらも、心の中には甘い期待が広がっていくのを感じていた。
「これ、ほんとに似合ってる」と進次郎が笑顔を見せると、聖の頬はさらに赤くなる。彼女の繊細な表情と、そのどこか儚げな魅力に、進次郎は思わず息を飲んだ。二人の間に流れる一瞬の静寂が、まるで時間が止まったかのように感じられた。
ただの妖退治の帰還祝いのつもりだったけれど、それ以上の感情が心の奥深くから湧き上がってきていた。進次郎は、聖とのこの一瞬の関係が永遠ではないことを知っていて、だからこそその切なさが心を締め付けるのだった。彼女との距離が近くに感じられる一瞬が、どこかもろく、一瞬で消え去る夢のように思えた。彼は、聖の笑顔を見続けながら、その切なさを少しだけ楽しむことにした。
清十郎はため息をついた。妖討伐のために聖を同行させたものの、なぜか彼女がいると妖が逃げ隠れ、一切姿を現さない現象が、ここ3回連続で起こっていた。彼は次第に、その理由を確信するようになった。聖の存在が、妖にとって恐怖の源となっているのだ。彼女の威厳と神聖さが、彼らを寄せ付けないのだろう。清十郎は、彼女の力を再認識すると同時に、次の戦いに向けた不安が胸に渦巻いていた。