気合い
カナエは今日も頑張る
「寒い...」
カナエは今日も寒い冬の中漁にでていた。いくら厚着やゴム手袋をしても震えが止まらない。今日は風が比較的強く波も荒めではある。その自然のパワーがカナエの精神と体力を奪っていく。
「辞めたい...でも...」
カナエは何度も辞めたいと思っていたが辞められない理由があった。
「ハナの為にも...!」
カナエはハナという犬を飼っていた。カナエには両親も恋人もおらず、ずっと孤独であった。そんな中港の近くの公園に捨てられていたハナを見つけた。最初は飼うことを躊躇って餌だけを与えていたが愛着が湧いてきたためカナエは飼うことを決断したのだ。いつのまにかハナはカナエの心の支えとなっていた。
「ハナにクリスマスケーキを買ってやるんだぁ!」
カナエはハナに犬用のケーキを食べる姿を想像した。それはとても嬉しそうにケーキを食べるハナの姿だった。そのことを想像するとカナエの中に義務感が湧いてきた。
「気合いを入れなきゃ!」
自らの弱さに打ち勝ち、愛犬のために漁に励むカナエの姿は"母"よりも強かった。