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第2話 出し抜くためには

 ひとえに復讐する、奪ってやると言っても、真正面からバカ正直に挑んでも、あいつには敵わない。それは俺が一番わかってる。


 だったら、どうするか。そりゃ決まってる。不意打ちなり夜襲なりで認識外から攻撃を仕掛ける。コレしかない。

 魔法の威力こそあれだったが、詠唱もままならず、それに戦闘だというのにあの立ち振る舞い。ズブの素人そのものだ。


 まぁ、これから体術や索敵なんかを身に着けてこれまた異常な力を発揮する可能性もあるわけだが、これにはこれの対策をするとして。


「まずは、一方的に知覚できるようになることだよなぁ~。んで、絶対に見つからない隠密を身に着けることか」


 かなりきちぃな。ぱっと思いつくのは、『自分が隠密に徹する』ことと『相手の五感を狂わせる』ことぐらいか。後者は夜に仕掛けたりなんだったり、フィールドでどうとでもなるとして、問題は前者だ。


 俺に専門的な隠密の技術はない。冒険者として、魔物を相手にするために最低限の知識こそあるものの、やはり万全を期そうと思うのであれば心許ないというほかないだろう。


 やっぱ魔法、あるいは魔道具か。絶賛魔法で苦い思い出ができたばっかの俺からすりゃ、魔法に頼るのはちぃと(しゃく)だったが、この際手段なんかにウダウダ言ってらんねぇ。

 そうときまりゃあ、買い物の時間だ。まずは手始めに、装備から見積もって、そのあと不必要な場所を削っていこう。







 町はずれの路地裏、聞き込みのおかげで判明した魔道具店に続く道のりは、それはもう薄汚いったらありゃあしなかった。ネズミはちょろちょろ視界の端を駆けやがるし、チンピラはもう三人はぶん殴ってやった。


 本当に評判のいい店っていうのは、何を取り扱ってるにしろ路地裏にありがちなもんだったりするが、さすがにこれは度が過ぎる。

 いい加減この埃臭くよどんだ空気の道を引き返してやろうかなんて考えが頭をよぎったころ、ボロっちぃ木製の看板が目に入った。


 軽く汚れをぬぐってみると、『ルージュ魔法店』の文字がぼんやりと読み取れた。

 ここだ。そう確信して、立て付けの悪い木製の扉を開ける。ガタガタという音を立てて扉が開き、俺は店の中に足を踏み入れ、圧巻のあまり立ち尽くす。



 見渡す限り、物、物、物。服のようなものもあれば、妖しい壺、竜の鱗なんかがあったと思えば、きらびやかな装飾が施された剣まである。所狭しとあらゆる物が詰め込まれた店内は、まさにカオスそのもののようだ。


「店主!店主のルージュ......殿はいらっしゃるか!」

「うるっさいねぇ......アタシの店でギャーギャー喚くんじゃないよ。次大声を出したら叩き出すよッ!」

「これは失礼いたしました、ルージュ殿。私、狩猟用の魔道具を見繕って頂きたく参りました所存でございます」


 盛大な溜息と舌打ちが聞こえ、店主が近づいてくる。俺の周りをぐるりと一周して、顔を覗き込んできた。

 老いて衰えているようにも見えるが、どこか力強さを感じる双眸。ひとたび覗き込まれてしまえば、全てを見透かされてしまうような――――そんな、不思議な力を感じる瞳だった。


「アンタ、嘘をついているね」


 図星を突かれた。全てを見透かされるようとは思ったが、まさか本当に見抜かれてしまっていたとは。


「まあいいさ。じゃあ、試験の様なものをしようじゃないか。それに合格すりゃあ、嘘をついたことも、アタシを『殿』って呼んだことも水に流してやろうじゃないか」

「失礼、ルージュ様は男性とお聞きしていたのですが......」

「アンタ、人を見る目がないね。今は女だよ。わかったらルージュ『女史』とお呼び!」

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