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227 バス森林 6

 村長の家に戻り、奥さんが準備してくれていた昼食をごちそうになり、今後の予定について話すことになる。


「しばらく滞在して魔動鎧に慣れていただきたいのですが大丈夫でしょうか」

「大丈夫ですよ。ダンジョンに挑んでいることになっていますから、七日くらいは留守にできます。その間、この村の宿を使わせてもらえますか」


 宿か空き家はあるのかなと思いつつ提案すると、この家に泊まってもらう予定だそうだ。


「外とは交流していませんから宿はないんですよ。遠慮なさらず滞在してください」

「お世話になります」

「今日はもうやることはないので、荷物を置いたら村の中を散歩してみてはいかがでしょう。資料庫なども入れますから、暇つぶしはできると思いますよ」

「護符とか置いてある道具屋とかあったら覗いてみたいんですが、ありますか?」


 技術の発達したところだし、変わったものや高品質とかあったりしそうだ。


「店はありませんが、役所のようなところはあります。そこで申請すれば道具をもらえるようになっていますね。護符はありませんが、武具や戦闘に使える道具はありますから見せてもらえると思います。気に入ったものがあればもらえるように伝えておきますよ」

「無料ですか?」


 頷きが返ってくる。バズスト関連だから無料なのかな。でも俺はバズストではないと言ってあるからタダはちょっと気が引ける。


「それは悪い気がするので、なにか仕事でもしたいのですけど。村の人たちも対価は支払っているんでしょう?」

「そうですね。でしたら二つほど頼みましょうか」


 依頼内容は、研究者たちにヘリコプターといった代物について話すこと、バズストたちの生きた時代の史料に間違いがないか確認することだった。

 どちらも問題ないと思えたので引き受ける。

 

「各方面への連絡はあとでするので、仕事は明日からになります。今日はのんびりとしてください」

「わかりました」


 使わせてもらう部屋に荷物を置いて、村長の家を出る。

 とりあえずどこになにがあるか確認しつつ、散歩しようと歩き出す。

 道は馬車の移動がしやすいようにか、綺麗に敷き詰められた石畳だ。馬車が通らないようなところは土がむき出しになっている。

 土がむき出しの広場では、子供たちが遊んでいる姿も見えた。

 草人ばかりかなと思ったけど、人や獣人の姿も少ないながらあった。

 そのおかげか俺が歩いていても、変に注目を浴びるようなことはない。部外者とはわかるのか、視線は向けられるものの一度見たら満足するようですぐに視線は外される。

 村の様子を見ながら歩いて、外壁まで到着した。壁に備え付けられた見張り台に立っている人たちの姿が見える。

 その壁にそって歩いていると、門に到着した。門には弓や槍などで武装した門番がいる。


「鎧姿の人がいないな?」

「兄ちゃん、ここに来たばかりかい?」


 俺の独り言が聞こえたようで、散歩していた草人の老人が話しかけてきた。


「はい。そうです」

「だったらその疑問も当然かもしれないね。ここの兵はほぼ鎧を着ないんだよ。服が特別製で、それに加えてマナジルクイトもあるからね。防御はその二つで十分なんだ」


 畑作業している人たちも同じものを着て作業するそうだ。


「外だと魔製服というものがありますけど、それと似たようなものですかね」

「外からそれを取り入れて、研究し発展させたものだね。森のモンスターならそれで十分すぎるほどなんだよ」

「そうだったんですね。教えていただきありがとうございます」


 ゼーフェやフリクトは鎧を着ていたけど、外で違和感を持たれないように着ていたんだろうな。

 門の向こうには畑仕事をしている人や狩りを終えて獲物を持って帰ってきている人の姿が見えた。獣だけではなくモンスターの死体も持っていることから、狩猟団と同じ魔法が使えるんだろう。

 さらに門にそって歩いていると兵の鍛練場らしき広場が見えてきた。

 魔動鎧を使った訓練は外か別の場所でするようで、その広場には生身の人たちしかいない。


「鍛錬光景は普通だな」


 技術が発達した村だから鍛錬も特別感があるかなと思ったけど、普通に素振りをしていたり模擬戦をしていた。どんなに技術が発展しても基礎は大事ってことなのか。

 今は駆け出しの指導をしているようで目を見張る技量の人はいなかった。

 いろいろな生活風景を見ながらのんびり歩いて、二時間から三時間くらいで一周する。

 家や建物で密集した村ではなく、公園があったり、なにもない林だけの土地があったりした。土地の広さに人口が比例していないように思えた。

 平和な雰囲気だから、なにかしら問題が起きてこの人口なのではなく、普通に人が少ない場所なんだろう。

 バズスアムルがあった地下のように、村の中にも地下施設があってそこにも人がいるなら見て回ったよりも人は多いかもしれない。

 

「次は役所か資料庫にでも行こうかな」


 一周していたときにはそれっぽい建物を見かけなかったけど、人に聞けばすぐにわかるはず。

 というわけで道を歩いていた人に聞いてみるとその二つは隣接しているようだった。

 教えてもらった方向に歩くこと二十分と少々。外壁のような石でできた建物が二つ並んでいた。

 外観にさほど違いがないから、どっちがどっちかわかんねえな。


「まあどちらも入るんだし、どっちでもいいか」


 まず左に入ってみようと扉を開けて中に入る。

 近くにカウンターがあり、その奥で事務作業をしている人が数人いる。こっちが役所のようだった。


「こんにちは。今日はどのようなご用事ですか」

「こちらで貸し出せる武具や道具の一覧なんかを見てみたいんです。グリンガさんから許可はもらっています」

「少々お待ちくださいね」


 受付嬢は棚から紐とじされた本を持ってくる。


「こちらが一覧になっています。解説とかはついていないため、文字だけだとわからないかもしれません。実物が見たいときは保管庫に案内できるので声をかけてください」

「わかりました。あ、そうだ。これに使われている文字は森の外で使われているものと同じでしょうか?」

「はい。同じですね」

「それなら俺も読めますね。ありがとうございます」


 礼を言って、カウンター前から離れて、長椅子のあるところに向かう。

 座ってから本を開く。目次はなく、最初から流し読んでいく。

 

「最初は駆け出し用の武具か」


 読んですぐに気づいたのは材質に種類がないことだ。

 ミストーレの武具店だと木製、青銅、鉄といった感じでいくつもの種類があったけど、ここに載っているものは銅とモンスター素材の合金のみだった。

 形状の方はいくつもある。剣、斧、槍、弓、槌などなど。そして剣でも短剣、長剣、片刃と種類がある。

 探せば好みの形状や重量の武器が見つかるくらいには、用意されているのだとわかる。

 ただ少し疑問が湧いた。これだけ技術が高ければ銃もありそうだと思ったが、一覧にはない。魔動鎧には銃に近いものが搭載されているから、それを小型化したものがあってもおかしくなさそうなんだけど。あとで聞いてみよう。

 防具は盾と兜と籠手と靴が用意されている。胴防具は聞いていたように服のみらしく、項目はない。盾は金属製で、兜と籠手と靴は金属製ではないようだった。

 一人前に与えられる武具も駆け出しと似たようなものだった。

 ただし魔物が出現したとき、上位陣に与えられる防具には金属製の防具もあるようだった。

 どうしてそれが準備されているのか、その理由が書かれていないのでわからない。

 

「次は道具だな」


 武具のページが終わり、道具一覧のページを読み始める。

 ポーションといった見慣れたものがあり、護符はない。マナジルクイトで代用できるからかと思っていたら、プレートという項目がある。そこに筋力や頑丈といった文字が並ぶ。


「護符の発展系かな」


 あとで聞くことにして読み進める。

 プレートといった知らないものだけではなく、俺がダンジョン内や宿で使っている見知ったものもあった。

 ぱらぱらと目を通し終えて、本を返すためカウンターに向かう。


「ありがとうございました」

「実物の見学はどうしますか?」

「お願いします。あと隣の資料庫に道具の説明が書かれた本とかありますかね」

「ありますよ。管理人たちに聞けば、どの棚にあるか教えてくれるでしょう」


 答えながら受付嬢はカウンターから出てくる。

 ついてきてくださいと先導されて、保管庫に向かう。

 歩きながら、上位陣に金属製の防具が与えられる理由を尋ねる。


「上位陣は通常魔動鎧を使うのですが、全員が魔動鎧に適正を持っているわけではありません。そこで壁役として防御に特化した防具を作って与えることになっています」

「魔動鎧を使うのに適正なんかあったんですね」

「魔動鎧を身に着けて動くと酔うみたいです」


 乗り物酔いみたいなものか。魔動鎧は生身よりも激しい動きになることがあるし、そのせいかもしれない。


「それらの防具はかなり頑丈なんですか?」

「希少金属を使っている以外に、魔法仕掛けで防御に関した効果も持っていますよ。物理にも魔法にも強いですね」

「どれくらい守りが硬いのでしょう」

「そうですね……たしか実験では坂道の上から直径二メートル以上の岩を勢いよく転がしてぶつけたことがあるそうです。その結果、吹っ飛ばされることなく仁王立ちで耐えたそうですね。身に着けた人も怪我しなかったと記録が残っています」

「それはすごい」


 もっと強力な攻撃でも耐えきれそうだ。

 地下への階段を下りて、保管庫に入る。


「どういったものが見たいですか」

「防具ですね」

「武器は必要ありません?」

「この剣、帝鉄を使っているんですがこれより上はあります?」


 持っている剣をポンと叩いて聞く。

 受付嬢は目を丸くした。


「帝鉄というのが本当なら、それ以上はありませんね。外でも帝鉄は貴重と聞いていましたが、よく作れましたね」

「大ダンジョンを抱える都市の大ギルドに伝手があって、そこが頼っている腕の良い職人を紹介してもらえました。ちょうど帝鉄の在庫があったみたいで、作ってもらえたんです。そういえばその人も草人でしたよ」

「そうでしたか。さすがにこの村とは無関係な人でしょうね」


 受付嬢は話しながら、服を渡してくる。


「これが一人前になった人に渡される戦闘用の服ですよ。物理や魔法に強い布で作られています」


 見た目はつなぎだ。見張りをしていた人たちも似たようなものを着ていた。

 こちらもどうぞと渡されたのは、ライダースーツほどではないけど、体にフィットするつなぎだ。


「こっちは?」

「さっき話した防御に特化した鎧の下に着るものです。刺突や斬撃にはそこまで強くありませんが、高温低温と衝撃吸収に優れたものになっています」

「なるほどー」


 もらうときは前者でいいかな。全身鎧は使ってないし、斬撃や刺突を受けることもあるから前者の方がありがたい。

 服を返して、手袋やブーツや兜を見せてもらい、見学を終える。

感想ありがとうございます

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― 新着の感想 ―
[一言] 各分野で先を行かれてますが武器だけは手持ちの物をそのまま使っていけそうですねえ 作ってもらったばかりですしお払い箱には早すぎますし良かった良かった
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