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118 シャンガラ到着一日目 2

 森に入り。カイナンガの狩場に入って獣を狩った場合は罰金とかあるのか聞く。


「狩場で揉めたことがあるとちらっと聞いたんですけど」

「一体二体狩るくらいならなにも言いませんよ。揉めたときは罠に強い毒を使って、狩場を荒らされたときのことじゃないかと思います。さっきも言いましたが森は私たちが所有しているわけじゃないですからね、荒らさなければ文句を言えるような立場ではありません」

「なるほど。常識的な狩りをするなら大丈夫という感じですか」

「はい。その認識で問題ありません」


 想像していたよりは荒っぽさが感じられないな。


「では最後にあの森関連で伝承とかありますか?」

「……たしか化け物がいたとかなんとか」

「化け物が「いた」ってことは倒された感じ?」

「たぶん? 昔に化け物が暴れたとか聞きますけど、それが倒されたのか追い出したのかさっぱりですね。本当かどうかもさっぱりです。ビッグフォレストといった昔からある施設に記録が残っているかもしれませんね」

「ありがとうございます」

「いえ」

「しかしこう言ったら失礼なんでしょうけど、思った以上に親切な対応というかきちんとしてましたね。ここの評価を宿の人に聞いていたんですけど、荒っぽいところといった感じでしたから、対応もいい加減なものになるんじゃないかって思っていたんですよ」


 職員は苦笑する。


「若い組織ですから、ノウハウのなさからまずい対応になったことはあります。それが評価として広まったんでしょう。現状はよその町のギルドに職員を研修で送ったり、ギルド長からメンバーに落ち着いた対応するように指示が出ています。それらのおかげか、少しずつ評価は上向いたものになっていますよ」


 俺への対応だったり、ほかの客への対応が何事もなく行われていることから、荒っぽい組織ではなさそうだとわかる。


「ちなみにここから見たビッグフォレストの評価とか聞けます?」

「あー、それは、難しいですね」


 素直に褒めることが出てこないってことは、なにかしら問題を抱えている?


「それに関しては私から話しましょうか」


 背後から女性の声がして、職員がそちらを見てギルド長と漏らす。


「なぜこちらに?」

「たまにはこちらの様子も見ようと思って足を運んだら、あなたたちの話が聞こえてきたのよ」


 答えながら職員と交代し椅子に座る。

 三十歳を少し超えたくらいの年齢で、赤みを帯びた髪をガーリーショートにしている。臙脂色のコートを脱いで厚みのある白シャツと黒のスラックス姿になる。


「初めましてカイナンガの長、ミーゼと言います」

「初めまして。ただの冒険者デッサです。ギルド長がわざわざ答えなくてもいいような気がしますが」


 答えられないって言われたらそれで納得したんだけど。


「若くて実力のあるあなたがなにも知らずに向こうに行くと、問題があるかもしれないから」

「問題があるとはっきり言うんですね。それと実力云々は勘違いかもしれませんよ」

「私も元冒険者。引退して五年が過ぎて勘も鈍っているとはいえ、おおまかな実力はまだ見抜けるわ」

「ギルド長、彼は本当に強いのですか? 十代半ばくらいですし、まだ駆け出しなんだと思っていましたが」


 ミーゼさんの背後に立つ職員が聞く。


「身に着けている武具の質はいいものだし、それを着こなしている。感じ取れる雰囲気も駆け出しなんかとうに超えているものよ。私が模擬戦をやったら負けるわね」

「ギルド長は大ダンジョンで六十階近くまで進んだって言っていませんでした?」

「引退後は本格的な鍛錬とかしていないから、六十階はもう無理。でも四十階ならなんとかなる。そんな私より強いから四十階を超える実力はあると思うわ」

「大ダンジョンで五十階を超えるところで戦ってましたよ」

「その年齢で五十階はすごいわね」

「そうですかね。俺と似た年齢で俺以上っていましたけど」


 ミナは俺以上だったはず。


「大ダンジョンを擁する都市には強い人が集まるから、そういった人もいるでしょうね」

「五十階が本当ならこの町だと上位陣ですよ」

「ここは小さな町だからね。所属している冒険者の質も低いのよね。話を戻しましょうか。ビッグフォレストの評価と問題だったわね」

「そうですね」

「ビッグフォレストは昔からあるだけあってギルド経営はうちよりきちんとしているわ。町の人たちにも知られていて、なにかやってもらいたいことや困ったことがあればあちらに依頼がいく。その依頼も基本的に問題なく終わるわね」

「基本的に?」

「たまに失敗するけど、それはうちも同じ。その失敗時の対応がね、ちょっと問題。もみ消しているときがあるのよ。古い組織だからね、腐った部分もでてくるわけ」


 いつまでも清廉潔白な組織でいるのは難しいってのはわかるんだけど、なんでもみ消したことを知っているんだ? ばれないようにするもんじゃないか?

 

「どうしてもみ消したことを知っているのかと思ったでしょ。顔に出ているわよ」

「ええ、思いました」


 それを俺に伝える理由もわかんないけどな!

 

「ライバル組織だからね、情報収集には力を入れているのよ。これまで上手くやってきたからか油断していて詰めが甘いから、ちょっとした情報を集めて繋げればなにが消されたのかわかる」

「組織に問題があるかるもしれないというのは理解しました。それと俺にどんな関係があるんでしょう」

「有望な人材は確保したい。だから搦め手で契約しようとする可能性が高い」

「俺はここを拠点にはせず、長くても四ヶ月くらいでよそに行くんですけど。それを止めるだけの契約なんて可能ですかね?」


 強制力のある契約なんて四神の誓いくらいしか思いつかない。


「借金を負わされても夜逃げすればいいし」

「呪いの使い手がいて行動を制限できる」

「呪いですか」


 それは厄介だ。リューミアイオールの呪いを受けている身としては馬鹿にできない。

 あれ、そういや呪いって重複するんだろうか? ゲームだとそこらへんの話はでてきてなかったからわからん。重複するって思って警戒しておいた方がいいかな。


「問答無用で呪われるとどうしようもないですね」

「そういった呪いはある程度の実力者なら自分にかけられようとしているとわかるみたいだし、その場から離れれば大丈夫。注意が必要なのは書類を使った契約ね。言葉や文字で承諾すると呪いがかかったとわからないから、書類をよく読まずにサインするといつのまにか呪いがふりかかっている」


 ああ、それは四神の契約と同じかな。あれもあの村長に契約したっていう自覚がなかった。


「契約や約束には注意が必要ですね。でも向こうが俺の実力を見抜いてきますか?」

「向こうにも見る目のある人はいるわ。護衛というこの町から出てあちこちに行く仕事をしているからね。そのときに実力者を見る機会はある。正確な実力は見抜けないでしょうけど、それでもおおまかには把握できるでしょ」

「俺はそこらへんまだまだなんで、よくわからないんですよね。とにかく強くなることだけを目指したんで」

「呪いを警戒するなら近づかないってのが最善ね」

「でもこの会話が本当なのか疑う気持ちがあるんですよね」


 さすがに一方からの情報だけで判断はできない。


「まあ、無理もないわね。自分の目と耳で確かめてみないことには納得はできないでしょう」

「自分たちが正しいとは言わないんですね」

「言ったところで信じてはもらえないでしょうしね。こんな短時間で信頼関係を築けるわけがないわ」

「ちなみにどうしてそこまで俺に話すのか教えてもらえます?」

「向こうに所属されると困るのよ。争いになるわけじゃないけど、実力者の数は少ない方がいいし。あとは若者が騙されないようにっていう親切心かしらね」


 親切すぎる気もするから、それだけじゃないのかもしれないけどありがたく思っておこう。


「ありがとうございます」

「いいってこと。滞在は四ヶ月くらいだっけ。その間、ここでどうやって過ごすの?」

「探しものがあるので森を探索ですね。あとは自己鍛錬」

「情報料はとるけど、なにを探しているのか話してくれれば場所を教えられるけど」

「いえ、いいです。まずは自分で探してみます。時間はあるので」


 強者とやらは町の人たちも把握できていないらしいしなぁ。


「そう。時間があるなら暇なときでいいからこっちの依頼を受けてもらえないかしら。模擬戦を頼みたいのよ」

「俺は指導なんてできませんけど、それでいいんですか?」

「指導ができないのはちょっと残念だけど、強い人と戦うだけでも十分だわ」

「しばらくはこっちの生活に慣れることに集中するので無理だと思いますが、暇ができたら受けることにします」

「ありがとう。私からはこれくらいかしらね。なにか聞きたいこととかある?」

「そうですね……ああ、ここではお金を預かることってしてますか」

「しているわよ。小銀貨二枚の手数料をもらうわ」

「俺が利用しているところとそう変わりませんね」

「よそのギルドを参考にしたからね。ビッグフォレストを参考にはできないわ」

「ビッグフォレストの方はどんな感じなんですか」

「お金を出し入れするたびに、その金額の五パーセントを手数料としてもっていく。金貨の出し入れをしたら、うちの手数料なんてあっという間に超えるわ」


 利用するたびに五パーセントか、ちょっとお金がもったいない気がする。

 向こうで本当にそうか確かめて、本当ならこっちに預けよっと。

 話を終えて、カイナンガの敷地から出る。

 次に行ったビッグフォレストは頂点会のように大きな建物のそばに鍛錬場があるという形だった。

 建物の中はゴーアヘッドと同じような感じで、受付カウンターなどがある。

 受付に行き、知りたいことを尋ねる。

 こっちは情報料をとらず、内容はカイナンガと似たようなものだった。ただし詳しさはカイナンガの方が上だ。無料と有料の違いがあるから当然だろう。

 強者とやらに繋がる情報もなかった。

 お金を預ける際の手数料はミーゼさんの言った通りだった。


「ほかに聞きたいことはありますか?」

「カイナンガというギルドがあるじゃないですか。そっちの評価を聞きたいですね。利用する際の注意事項なんかも」

「あまりお勧めはしませんね。ノウハウがまだ少ないからかサービスの質が悪く、客と揉めることもあります。荒事を中心にやっているので、粗暴な者が集まりやすいのでしょう」


 きっぱりと悪く言うな。

 ミーゼさんもビッグフォレストは腐っている部分があると言っていたからお互い様かな。


「向こうのトップはもとはここに所属していたんですが、なにを考えて独立したのかさっぱりです」

「こっちに所属していたんですか。誰かともめたとか、失敗して評価が下がっていづらくなったといったことが原因ですかね」

「そんなところでしょうね」


 この職員は詳しいことは知らなさそうだ。

 ここでの用事は終わって外に出る。

 特に強さについて聞かれることはなかったし、今回は実力を見抜ける人がいなかったんだろう。


(ひとまずお金はカイナンガに預けて、なにか問題が起こったらこっちに預けるようにしとこうか)


 ギルドは見終わったし、森に行こう。

感想ありがとうございます

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― 新着の感想 ―
[一言] 詳しい内情とかはさっぱりですけども聞いた情報だけで判断するのならビッグフォレストは長く続きすぎて腐ってる部分が多そうですねえ トラブルに巻き込まれなければいいですが
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