小さな毛玉
お前だけが私の心に入った
お前は小さな 本当に小さな毛玉だったのよ
罪深い者に地中へ入れられかけたお前は
必死に生きようとして
精霊がお前の魂の道を引き上げた
お前が辿り着いた場所に
私はお前を迎えたけれど
最初はお前に名を与えるのを悩んだ
すぐに 手放すと思ったから
でもお前は最初の日から
私の手や頬を舐めて
一生懸命 きっと 一生懸命愛情を示したのよね
私は人の情がない冷たい心だけど
お前は私の体にくっ付いて眠り
毛玉のような小さい体で
毎日精一杯息をして
怖さと苦しさと寂しさを頑張って乗り越えて
私と一緒にいようとした
小さなお前にどれほど我慢させただろう
お前と離れるものだと決めつけていて
名前を渡すこともなかったが
直向きに生きるお前の無事を願って
数日して呼び名をつけた
鉄 と名付けたこと
弱くて細くてやせ細ったお前が
鉄のように強く生きろと願った名前
その後
お前は誰かの元へ引き取られるはずが
私と一緒に
今 何年経っただろうね
誰も愛したことのない 私の心が
初めて 誰かを愛することを知った
これを愛すると言うのかさえ
私にはよく分からないが
お前だけは
自分の命より遥かに大切でならない
お前のために生きなければと思う
お前の無事を守るために
私も無事でいないといけない と
だから
捨てられなかった習慣を後に置いて
忘れていた気遣いを
毎日気にするようになった
お前が無事なら良い そう思う
心からそう思う
お前が幸せなら それがいいと思う
お前が何不自由なく
全てに落ち着いて 安心して
自由で 穏やかで
眠り 食べて 遊んで
幸せでいてくれるなら それで良い
そのために何でもしようと思う
お前が嫌だとしても
お前の分かっていない先に安堵があるなら
それを私が知っているなら
私は辛くて泣いても お前にそれを勧める
お前が嫌がることをしたくない
お前が怖いことを
疑問や 不安に 囚われる時間を作りたくない
だとしても お前が避けられる悲しみを私が知るなら
私はお前に悲しみを与える自分を恥じながら
お前の安堵に続く時間を求めて それを選ぶだろう
小さな毛玉
鉄のように強く生きろ
誰一人愛せなかった私に
愛情を生んだのは
お前だけ
お前の一生を守ろう
お前の命と魂のために生きよう
血がつながらないとか
種族が違うとか
どうでも良い
きっとこの心を
愛しているよと言うんだろう
お前をね
私は愛しているよ
お前が私を慕うのを
私は幸せに思う
お前が無事に眠る時間を
私は何より誇りに思う
お前をね
私は心から愛しているのよ