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帝国の銀狼

「アリアンローゼ!」

寝室の扉が開け放たれ大層ガタイのいい…いえ、鍛え抜かれた体躯の銀髪の美丈夫がガシッと私を抱きしめる。

「お父様、おはようござ…かはっ!」

せ、背骨が折れます、お父様。

「具合が悪いと聞いた。健康そのもの、歩く破壊兵器のような其方が朝稽古を休むなど、どうしたというのだ」

お父様、形容に六歳の貴族令嬢に決して使われぬ不穏な語句が含まれております。

我が父にして、帝国の守護神にして銀狼の異名を持つガラム・ル・ヴァン・グリセリダ将軍はようやく腕の力を弱め、私の顔を間近に覗き込んだ。

「なんでもありません、お父様。夢見が悪かっただけです。ご心配をおかけしてすみません。」

「其方の母も強い人であったが、病には勝てぬ。其方まであちらに行ってしまうような事があれば、父は………」

眉を下げてしょぼんとしている姿は前世の実家で飼っていた大型犬を思い出す。

「だ、大丈夫です。私はいつまでもお父様のそばにおります」

小さな手を伸ばして父の太い首に抱きつけば、せっかくの美丈夫が崩れまくりの表情である。

「旦那様、お嬢様のお支度を。ご一緒に朝食をお取りになるなら御出仕のお時間が。」

私の専属侍女のサーリュウに留められて渋々私を解放する。

美しい薄緑色の髪に琥珀の瞳のサーリュウは亡くなったお母様の学生時代からの友人で、お母様が私の為にたってのお頼みで私の側に来て頂いた方。

物腰は優雅で柔らかだけど、執事のウォルターと共に我が辺境伯家の家政を取り仕切る実力者である。

「エル、お嬢様のお支度を」

にこやかに退室を促すサーリュウにすごすごと従うお父様。

ホッとする間も無く、サーリュウがガシッと私の肩を捉える。

「アリアンローゼ様、さ、何があったか仰ってくださいませ」

じっと目を見て迫られる。

あぁ、一難去ってまた一難…………あるいは前門の狼後門の虎

思わず遠い目になって前世のことわざを思い出す。

「本当になんでもないの。お母様の夢を見ただけ………」

悲しげに目を伏せれば、はっと息を飲んだサーリュウの豊かな胸に抱き寄せられた。

く、苦しい………先程のお父様に続き息が出来ません、サーリュウ。

「お嬢様にはお父様やこのサーリュウがお側におります。」

ありがとう。そろそろ息が………………。

息が苦しくて涙目になった私を痛ましげに見守るメイド達、お願い、助けて。

「サーリュウ殿、お嬢様はご朝食は召し上がれそうか?」

ナイス、ウォルター。

執事のウォルターが、現れて声をかける。

「旦那様の御出仕のお時間がありますわね。お嬢様、召し上がれますか?」

「お父様が心配なさるわ。頂きます。」

健気にうなづく私の様子にそっと目頭を押さえてサーリュウがメイド達を促して朝の支度が始まる。

はぁ、朝から大変………………。

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