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私の人生ハードモード。  作者: 理音
1/1

寒冷獄門ゼルベテウス




速水奈々、27歳。


人間関係が苦手で、いつも人の顔色を伺い謝ってばかり。

身内には借金を押し付けられたり、仲がいいと思っていた友人には騙され裏切られたりと何かとついてない人生を送るどこにでもいる平凡な社会人だ。


「はぁー…上司も先輩も、言い方キツいんだよね。1回伝えれば出来るとでも思ってるのかっつーの」


今日も今日とて、上司や先輩から嫌味を頂戴しため息をつきながら夜道を進む



「はぁ〜、私ももう27なのに…。

どこで人生間違えたんだろ…戻れるなら子供に戻りたい。10代くらいで、体力もあって色んなことにチャレンジ出来たあの頃に。それかワンチャン生まれ変わるのもありかも。

小さい頃テレビで見た魔法少女とか!なんて、いい歳して恥ずかしいか…。」


誰しもが必ず1度は考える事を私は何百、何千と考えたことだろう。

友達にも冗談混じりで話した事があるが、不毛な話だね、あるわけないよ〜。と笑われたこともある


「…ある訳ないか。

親戚は嫌いだけど、家族は好きだし…私が死んじゃったら悲しむ人もいるだろうし…」


だから、馬鹿な考えはやめて家に帰ろう。と横断歩道に足を踏み入れた瞬間目が眩む程の光に目を閉じると強い衝撃で体が吹き飛ぶ




なに?一体何が起こったの?

体がピクリとも動かない




「‥お‥いで、こ‥‥に‥君は、」

誰かが近づいて来て声をかけられたが、聞き取れず意識を手放した




┈┈┈┈

┈┈┈┈┈┈┈┈



ズキズキと痛む体、肌を突き刺す寒さを感じて目を覚ます


「…あ、れ…私…生きてる、の?」


ゆっくりと声を出すが、ガタガタと震える体からはか細い声しか出てこなかった


「おや…お前さん、生きていたんだね…。

数日前から動かなくなったから死んじまったのかと思ったよ。」


ヒヒヒ、と不気味に笑う老婆は鎖に繋がれていた


「…お婆さんは…、どう、して…こんなとこ、に?

それに、その…鎖は?」


「おやまぁ、数日寝て頭でも可笑しくなってしまったのかい?

ココは寒冷極門ゼルベテウス…私達死刑囚を閉じ込めておく5本指に入る監獄さ。」


ジャラジャラと鎖を鳴らしながらこちらを見る老婆が不気味で顔が引き攣る


「寒冷極門、ゼルベテウス…?

死刑囚って、なんの…こと。私悪い事なんて…」


27年生きてきて犯罪なんて犯した事なんてない、と続けようとしたが自分の足にも鎖がついている事に気がついた


「お前は神の領域に触れようとした。

誰がなんと言おうが、死に値する程の罪だ」


「神の領域…?」


「ああ、そうさ…真理を歪ませるという大罪さ。

だから、お前さんのように若い子供がこんな監獄に送り込まれる訳さ」


「…じゃあ私は、もうすぐ…処刑、されるの?」


「あの小さな窓から見える吹雪が止む頃にはな。」


老婆が指差す方向には小さな窓があり、吹雪によりガタガタと揺れていた


「…雪が止む頃に…」


「だが、1つだけ助かる可能性がある。」


「!ほんと、お婆さん!」


「…この監獄を抜け出すのだ」


「簡単に、言うけど…鎖、切れないし…。

そもそも、私…なにも、わからない…」


この監獄がどこにあるのか

抜け出しても逃げ切れるのか

どこに行けばいいのか

私は死んでしまったのかどうかもなにも。



「ヒヒヒ…、まあそう焦るな。

コレを飲み込めばいい」


老婆の手にはビー玉位の大きさの青い石が。


「…その石を、飲み込む、の?」


「ああ、コレを飲み込めばお前は持ち前の魔力を活かし生き延びる事が出来る。

ただ、この石は少し特殊な石でな…お前さんの魔力と上手く溶け合わなければ反動で死んでしまう」


軽く言い放つ老婆に背筋がゾクリと震える


「可能性にかけるか、処刑を待つか2つに1つ。

お前さんはどうする?」


「…私、は…」


どちらを選んでも死ぬかもしれないなら


「…飲み、ます。

私は、まだ…生きたい!!」


老婆の手にある青い石を貰い、ゆっくりと深呼吸する


「…この監獄の裏手に森がある。

その森を抜け川沿いに下って行くと小さな山小屋がある。多少の物資があるから好きに使うといい…その後の事は自分で考えろ。」


「…お婆さんは、一緒に…逃げない、の?」


「ワシは…ワシらは出れん。

逃げる力も、生きる希望もなにもない。

ならせめて、生きたいと願うお前の手助けをしてやるだけだ」


俯く老婆に言葉に詰まる


「…お婆さん、名前…は?」


「ワシか?ワシはセレスト・フェール。

しがない魔術師さ」


「セレスト、お婆さん…ありがとう」


にっこり微笑むと青い石を飲み込む

すると直ぐに体に異変が出始めた


「…い、たい……!全身、が…!」


全身が切り刻まれてるような鋭い痛みにジタバタとのたうちまわる

頭の中に走馬灯のように知らない映像が次々と流れ込んでくる


┈┈┈

┈┈┈┈┈┈


燃え盛る大地 荒れ狂う魔物 苦しむ声

実際に体験したかのようなリアルな映像が流れ込んだかと思えば、雪のように溶ける。


真っ白な空間に、ぼんやりと人影が現れる


これは、ただの戦争なんかじゃない。

これは誰かが仕組んだ一方的な虐殺だ。

アイツらを絶対に許してなるものか。

1人残らず消すまで私は生き続けてみせるッ!!!



激しい怒りに驚き目を覚ますと、牢の天井が見えた


「…さっき迄の痛みも寒さも感じない。

それどころか凄く体が軽い」


ー青玉 マルムの吸収に成功ー


謎の声に警戒しつつも起き上がると足枷が瞬く間に凍り、パキンッ!!と音をたてて崩れ落ちた


「!お婆さん、足枷がとれたの!!

これで一緒に…ッ…!」


老婆がいた場所を見ると氷漬けになった老婆の姿が


「…お婆さん」


対象セレスト・フェールはマルムの氷にて絶命


「さっきから何、この謎の声…マルム?青玉?

さっき飲み込んだ石の事?…ッ?!」


飲み込む前の老婆の言葉が頭をよぎる


「もしかして、こうなる事がわかってて…?

…セレスト・フェールさん、私絶対、絶対に生き続けてみせますから。

誰が来たって、何があっても絶対生きてやります!」


自分がここにいる理由も、マルムという謎の石も、謎の走馬灯もなにもかもわからないけど。

私が逃げるために犠牲になったこの人の為にも、生き続けなければいけないと思った




「さよなら、セレストさん」


牢を凍らせて砕き、階段を下り監獄を抜け出す

セレストに言われた裏の森に向かう


「…こんなに吹雪いているのに本当に寒くない。

それに足跡も残さず進める」


ザクザクと雪を踏み締めながら森を抜け、川にたどり着いた


「この川沿いに下って行けばいいのね…。

少し水を飲んでからまた歩こう」


川の水を救おうと手を入れると水がパキパキと凍りついていく


「な、なにッ?!どうなってるの?!」


慌てて手を引っ込めたので川全体が凍らずに済んだ


「…どうなってるの?まるで…」


夢物語みたいに魔法使いになったようだ、と思うと目の前に半透明の画面が現れる


青玉・マルムの適合に成功

魔力許容量が拡大、氷系統の魔術を習得

制御可能範囲を超えているため、接触部分凍結開始

一定範囲内に猛吹雪発生


「なに、コレ…まるでゲームの画面みたい。

…て、やっぱりさっきの石を飲み込んだからこんな事になってるの?凍結しないようにするにはどうすれば…」


エラー・修練不足により調整不可


「修練不足?!ど、どうすれば…とりあえず何回も触ってみるしかないのかな?」


何度も川に手を入れたり、周りの木に軽く触ったりしてみると


修練ゲージMAXにより出力調整可能


「よ、よし‥今度は凍らせないように‥ゆっくり‥」


画面表示だけでは一見何が変わったのが、分からなかったが水や木に触れると凍りつく範囲・速度が明らかに変わっていた


「…力の調整練習をしながら先に進もう」


木々や水を凍らしながら進んでいくと小さな山小屋が見えてきた


「…あれが、セレストさんの言ってた山小屋ね」


古びたドアノブを回して中に入ると長年使われていなかったのか埃が積もっていた


「‥ごめんなさい」


誰の家かもわからないが、セレストに言われた通り棚や引き出しの中身をチェックしていく


「‥服と本と、このコインはお金かな?」


小さな袋の中から金や銀のコインが出てくる

それぞれ模様も違うから日本円と同じように区別されているのかもしれない


今着ているボロボロの囚人服を脱ぎ、少し埃っぽい服に着替える

暖炉に囚人服と薪をくべ火をつける

室内が少しずつ暖かくなってきた


「‥これからどうしたらいいのかな」


暖炉の近くに薪を用意して、座り込む


「‥」


近くに落ちていた紙を一枚ずつ確認すると地図をみつけた


「‥大きな大陸が3つ、世界地図なのかな」


「その通りです、マルム様」


「誰?!」


いつの間にか背後にいた少年から距離を取る


「脅かせてすみません、マルム様。

僕はこの小屋でずっと貴方を待っていました」


「私を?どうして」


「この孤島からマルム様を連れ出す為に。」


「‥」


「監獄で僕の祖母に会った筈です。

セレスト・フェール、と言う名前の人です」


「!」


「マルム様が囚われていた監獄が出来る前から、青玉マルムを守護する小さな町がありました。

その町で暮らす者達は氷の民と呼ばれ、僕や祖母もその町で暮らしていました。

しかしある日、急に大陸の人達がやってきて監獄を作り町の人々は連れて行かれ誰も帰って来ませんでした。」


「‥貴方はどうして」


「僕は祖母が隠してくれたおかげで、見つからずにすみました。

‥近い未来、青玉マルムを宿す方が現れる。

祖母から聞いたお告げを頼りにずっと貴女が来るのをお待ちしていました」


「‥私は、貴方の祖母を、町の人達を凍らせ死なせた女よ?そんな私を助けるの?」


監獄を抜け出す時に、沢山の人達が凍っているのを見つけた。

寄り添いあう人達や、恐怖の表情のまま凍っていたりと様々だったがあの監獄には沢山の人達が収容されていた


「‥僕達氷の民は、エルフの末裔なのです。

人間より長く生き、一生をこの島と青玉マルムに捧げるのです。

監獄で囚われた皆は、人間達により酷い拷問を受け監禁されていましたが貴女の氷によって苦痛から解放されたのです。

だから、どうかご自分を責めないで下さい。

我々は感謝しているのです。」


「‥」


にこり、と微笑む


「私も人間よ。それでも貴方は私を助けてくれるの?」


青年の表情が固まるが、すぐに笑顔に戻る


「マルム様が人間であろうと助けます、それが私たち氷の民の願いですから。」


奈々の前に跪く


「私は速水奈々。貴方は?」


「私はまだ名の無い戦士ゆえ、お好きにお呼びください。」


「名前がない‥‥。」


白い髪に、深海を彷彿させる青い目


「じゃあ、貴方は今日からラピスよ。」


ふわりとラピスの体が光り、右手に雪の結晶の印が浮かび上がる


「ありがとうございます、ナナ様。

この命、ナナ様の為にお使いください。」


「ラピス、何その印?」


「これは青玉マルムと同化したナナ様のみができる魔力の刻印です。」


「魔力の刻印?」


「はい、詳しく説明したいところですが‥この世界の現状を見ていただければ理解していただきやすいかと。」


「世界を?」


「はい、こちらへ船を用意しております。」


ラピスに案内された場所には一隻の船が用意されていた。

二人で乗るには十分な大きさだ


「この島を離れ、近くの港町に向かいます。

少し揺れますがしっかりとこの世界を見て下さい。」




孤島から離れて少しした後、私はラピスの言葉の意味を理解した


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