少年。力尽きる。
英剣を召喚した僕は、亜種とぶつかる。
僕には魔力がない。
そのことを亜種も分かっているのか、遠距離の骨攻撃を使ってくる。
目の前に次々現れる骨の杭を斬り捨てる。身体を捻り、瞳と手に力を込めて。
亜種も負けじと骨の杭を増やす。杭が邪魔をしてなかなか距離が縮まらない。
埒が明かない。10mほど離れているため、このまま杭を斬るだけでは体力切れで負ける。
今ほど魔力の無いことを悔やむことはないだろう。
知恵を振り絞れ。頭をつかえ。捻りだせ。
どうしたらこの矢のような速度で迫る、地面から突き立てられる杭を止められる。
英雄なら、どんな手を使ってこの場を切り抜けるのだろうか。
魔力がないなら、どうやって亜種を斬る。きっと方法はある。
考えていた矢先、亜種は角を地面から抜いた。
そして角が光り出す。
ーーーーーーーーーー何か来るのか。
角が光ることに疑問を持ちつつも、残りの骨の杭が僕を殺そうと迫る。
考えろ。考えろ。考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ
最後の骨の杭を切り捨てた時、亜種の角が僕に向いていることに気がついた。
咄嗟に英剣を正面に構える。
光を増した角から無数の骨の杭が飛び出して来た。
僕は全ての杭を防御しきることが出来ず、杭は頭を掠り、両足を抉りながら木に背中を打ちつけた。木にぶつかった衝撃で肺が圧迫され、吐血してしまう。
木からずり落ちた僕はもう動けなくなった。力が入らない。
人は、簡単には強くなれない。その現実が牙を向ける。
諦めろ。お前は英雄にはなれない。無力だ。
現実がそう告げる。
血が出すぎている。間違いなく死ぬ。
意識が……薄れる。
赤く染る視界で、涙ぐむエリーと爺を見つめ、2人を、家族を失いたくない。その想いが強くなる。
僕は諦めない。亜種を必ず倒す。
そう思いながら、僕は……………………気絶した。