少年。遭遇する。
英雄になりたい。
誰かを救うヒーローになりたい。
かつて英雄と呼ばれた彼のようになりたい。
ーーーーーーーーーー例え魔力がなくたって。
固い意思の元、また努力することを決めた。誰かを守るために。
いつも通り剣の鍛錬をし、朝ごはんをとる。
今日は昨日と同じように"ホーンラビット"を狩る予定だ。
朝食を取り、アース、エリー、爺でまた森の奥へ向かう。昨日とは違う、新しい気持ちで。
森に入って少ししたら、1匹の"ホーンラビット"がいた。
2回目ということもあり、難なく倒せた。
ーーーーーーーーーーはずだった。
その"違和感"に気がついたのはモンスターの死体を見た時だった。
その死体から、血が流れていない。深紅の血がない。
その事に気がつくと、爺が鬼気迫る声で
「アース!!直ぐにそこを離れるのじゃ!!」
人生で初めて聞いた爺の焦る声。
爺の声が聞こえるのとほぼ同時に、僕は横に跳んだ。
僕がいた場所を地面から突き出た骨が抉る。鋭い杭が無数に目の前に現れる。
爺とエリーの場所にもその骨は突き出るが、爺が防御魔法を使用したおかげで事なきをえた。
流石元冒険者だ。行動が素早い。
しかし、2人がいる場所は骨でできた檻のようになっており、爺が脱出を試みて、何度も剣を振り、火魔法を唱えるが……できなかった。
爺はアースの剣の師匠でもある。腕は折り紙付きだ。だが、得意の火魔法も骨の檻に傷1つ付けることはできなかった。
アースは2人と離れて、"ホーンラビット?"と向き合う。
ここではそいつを亜種と呼ぼう。
"ホーンラビット亜種"は明らかに歪だった。
その瞳は紅く、体毛は逆立ち、発達した脚は血管が浮き出ている。先程倒した"ホーンラビット"には似ても似つかなかった。
変貌した亜種を見て、本能が告げる。敵わない。絶対に。
そのモンスターを自分1人で相手しなければならない。気がつくと動けなくなっていた。
そしてすぐに、亜種が額の角を地面に突き立てた。
直後、僕の足元が地響きを起こし、また骨が突き出る。
僕は咄嗟に剣を盾にし、直撃を防いだ。
一瞬でも『遅れていたら』死んでいた。
頼れる爺は檻から出られず、この場を切り抜けるのは僕しかいない。
逃げることは出来ず、倒すこともできない、絶対に敵わないモンスターとの戦いが始まった。