【短編】魔法に関する常識がない僕は規格外な魔法使いだったようです
唐突にファンタジー作品も書いてみたくなりました。
この世界には“魔力”と呼ばれる魔法の力がある。
魔力をもって生まれた者は5歳になるとその力が発現し、魔力をもつ者は“魔力持ち”と呼ばれる。
“魔力持ち”は王族や貴族に多く、平民に発現するのは珍しいと言われている。
◇
とある村に生まれた栗色の髪に黒い瞳の少年―――アルトは、不思議な力を持っていた。
本人がそれに気づいたのは、ちょうど5歳の誕生日をすぎた頃。
母が大切にしていた花壇の花が枯れていたのを見て、アルトは「もう一度元気になってほしい」と願った。
すると翌朝、枯れていたはずの花が元気に咲いていたのだ。
このことを村で仲良しのおばば様に伝えると、アルトは“魔力持ち”であると言われた。
この村では“魔力持ち”が生まれた記録はなく、田舎すぎて詳しい知識も本も伝わっていないのだとも。
嬉しくなったアルトは両親にこのことを伝えようとしたが、おばば様はそれを止めた。
“魔力持ち”は良くも悪くも注目を集めるため、隠しておいた方が良いのだと。
そして、自分や周囲を傷つけないためにも、力をコントロールする必要があるのだと、おばば様は教えてくれた。
しかし、残念ながらおばば様は“魔力持ち”ではないので、魔力の使い方も訓練の仕方もわからなかった。
素直なアルトはおばば様の言葉を守り、誰にも内緒にして、手探りで少しずつ訓練をしていった。
◇
8歳になったアルトは森の木の上にいた。
「わぁ!すごい!こんなに高いところまで跳べたぞ!」
地面を蹴るときに脚に魔力を込めると、10m近くジャンプできると知った。
それだけではない。掌から炎や水、氷や雷を出すこともできるようになった。
魔法を使ってできることがどんどん増えている。
「よっと」
木からぴょんと飛び降り、ふわりと地面に降り立つ。
本人は「ゆっくり降りた」だけのつもりだが、無意識で「重力を操っている」のだ。
◇
10歳になったアルトはおばば様のもとを訪ねていた。
「おばば様。今日はこれをあげるよ。」
宝石のような、透き通った薄緑色の小さな石。
「おや、ありがとうね。これはなんだい?」
「魔法石、とでもいうのかな。おばば様が元気でいられますようにって思いを込めたんだ。治癒とか病気避けとかの力があるはずだよ。」
この頃のアルトは、更に多くのことができるようになっていた。
剣や矢に魔力を纏わせて威力を増したり、炎や雷の力を付与したりできるようになった。
行きたい場所を思い浮かべれば、そこへ一瞬で移動できた。
そして、自分の魔力を結晶のように固めて取り出せるようになった。この薄緑色の石もそのひとつだ。
一度に使える魔力には限界があることもわかった。
ただ、比べる相手がいないので、自分の魔力が多い方なのか少ない方なのかはわからない。
寝る前に余った魔力を魔法石にして、とっておくのが日課になった。
両親は2つ年上の兄のことばかり可愛がるので、アルトは12歳になったら家を、村を出るつもりでいる。
そのときのために、もっともっと魔法の訓練をして、魔法石もたくさん蓄えておくのだ。
◇
アルトが11歳のとき、転機が訪れた。
大好きだったおばば様が亡くなったのだ。
魔法石のおかげでおばば様は元気だったし、十分に長生きだった。
しかし、寿命はどうにもならない。
魔法は役に立つが、万能ではないのだと、アルトは悟った。
―――アルトは、優しくて強い子になったね。おばばは嬉しいよ。
村を出たら、“魔力持ち”として―――胸を張って生きなさい。
おばば様の最後の教えだった。
それから、予定よりも早いがアルトは村を出る決意をした。
両親も兄も、引き止めはしなかった。
むしろ「息子は1人いればいい」「もう戻ってくるな」と言われた。
後悔は―――――ない。
◇
アルトは一人で村を出て、森の中を進んだ。
道中、弱っていた精霊に出会い、助けた。
風を司るという、緑色に光るその精霊にアルトは「エメラ」と名付け、一緒に旅をすることになった。
彼女は森に詳しかったので、食べられる木の実や果物、薬草などの場所をアルトに教えてくれた。
旅の中で、アルトは様々な魔法を思いつき、次々と試していった。
魔法を効率的に使うにはハッキリとイメージした方が良い、とエメラから教わり、よく使う魔法には名前をつけてみた。
エメラに力を借りて、より大きな魔法に挑戦することもあった。
新しい魔法が成功する度に、旅はどんどん変化していく。
昼は【飛行】でエメラと一緒に森の中を飛び回ることもあったし、夜は周囲に【障壁】と【索敵】の魔法をかけてから眠るようになった。
カバンにも魔法をかけてみた。すると、驚くほど多くの物を入れられるようになり、中に入れた物は劣化しなくなった。
アルトはこの魔法を【格納】と呼ぶことにした。
次第に【格納】で仕舞った剣や弓矢を狩りの度に出すのが面倒になってきた。
そこで、魔法で出した炎や氷で剣やナイフ、弓矢を形作って使うようになった。
◇
そうやって何日か森を行くと、倒れている男性を見つけた。ケガをしているようだ。
「た、大変だ!えっと、大丈夫ですか?」
アルトは急いで駆け寄って声をかけた。
「落ち着いてアルト。意識を失ってるだけでちゃんと生きてるわ。」
エメラの言葉に冷静さを取り戻したアルトは男性に【治癒】をかけながら、エメラに周囲を警戒するよう頼んだ。
しばらくすると、男性が意識を取り戻し、キョロキョロと周囲を見回した。
「うぅ……ん?ここは…?俺は、確か…」
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ。お前が助けてくれたのか?」
「ええまあ。何があったか教えてもらえますか。」
アルトとしては【治癒】を少し使っただけなので、返事を濁す。
恩着せがましい言い方はしたくないのだ。
「助かったよ、恩に着る。ええと…」
「あ、僕はアルトと言います。」
「そうか、アルト。まずは礼を言わせてくれ、おかげで助かった。それが…」
そうして、男性――キースと名乗った赤髪の青年――は話し始めた。
ギルドの依頼でこの森の調査に来ていたこと。
調査を終えて帰る途中に、魔獣の群れに襲われたこと。
魔獣は撃退したが、ケガと消耗によって意識を失っていたことなど。
―――魔獣とは、魔力を持った生き物たちのことである。
普通の動物よりも強いものが多く、知能が高かったり狂暴だったりする。
精霊も“魔力を持つ知能の高い存在”だが、魔獣とは違って神聖視されている…らしい。(エメラ談)
ギルド―――この言葉はアルトもエメラも初耳だった。
キースは驚いた様子だったが、馬鹿にすることなく教えてくれた。
ギルドとは、冒険者を統括・管理する組織のことである。
魔獣の討伐や薬草などの採取、護衛任務など、平民・貴族問わず皆の依頼を取りまとめて、それらを実力の見合った冒険者に割り振る。
冒険者とは、ギルドに所属して依頼を受け、その報酬で生活する、いわば傭兵のようなもの。
“魔力持ち”はもちろん、そうでない人も、実力があれば冒険者になれるらしい。
「今度は俺から質問してもいいか?」
「うん?いいですよ。薬草の場所とかですか?」
「いやそうじゃなくて。さっきからずっと気になってたんだが…その、アルトの横にふわふわ浮いてるのは…もしかして精霊、なのか?」
「ああ、紹介がまだでしたね。この子は一緒に旅をする仲間で、風の精霊のエメラです。」
「エメラよ。よろしくね!」
「はぁ~やっぱりか。俺は精霊って初めて見たけど、純粋な子供には懐きやすいってのは本当なんだな。」
子供と言われてアルトは少しムッとしたが、キースから見ればまだまだ子供なのかもしれない、と思い直した。
すると、キースはそんなアルトの気持ちを察したように言葉を続けた。
「いや、恩人を子供扱いは良くないな。アルトのおかげで命拾いしたよ。…それで、いくら払えばいい?」
キースの言葉にアルトは驚いた。
「そんな!お金なんて貰えませんよ。」
「いやでも、俺の傷が治ってるってことは、アルトの持ってるポーションを使ってくれたんだろ?だったらその分くらいは払わせてくれ。安いモンじゃないんだから、こういうことはちゃんとしないとな。」
「ポーション?」
「え?」
「「んんん?」」
ポーションとは、軽い病気やケガを直すことのできる薬である。
魔獣討伐など、危険な依頼を受ける高ランクな冒険者にとっては必需品。
ちなみにキースは持っていたポーションをすでに使い果たしていた。
「え?ちょっと待て。じゃあアルト、お前どうやって俺のケガを治したんだ?」
「魔法です。僕は【治癒】って呼んでるんですけど…」
「ちょちょ、ちょっと待ってくれ!アルト、お前まさか“魔力持ち”なのか?え?ていうか魔法で治療?そんなの聞いたことないぞ!?」
アルトの発言にキースはかなり驚いた。
アルトが希少な“魔力持ち”であることもそうだが、それ以上に魔法で傷を治したというところに驚いたのだ。
「キースさん、とりあえず落ち着いてください。」
「あ、ああ。悪いな。」
「アルト?今更だけど、近くに魔獣がいたのなら【障壁】と【索敵】をかけておいた方がいいんじゃない?」
「それもそうだね。ありがとう、エメラ。っと…【障壁】、【索敵】、ついでに【無音】!」
アルトが唱えると、3人を囲むようにドーム状のモヤのような壁が出現した。
「!?!?」
その光景を目にしたキースは更に驚いたようだが、声はドームの外には漏れない。
「それで、キースさん。何にそんなに驚いたんですか?」
「全部だよ!!!」
キースの叫びは、バリアの中だけにビリビリと響いた。
キース曰く、“魔力持ち”の使う魔法は、【火球】や【氷槍】など、中~遠距離の攻撃魔法が一般的だという。
才能のある“魔力持ち”であれば【氷壁】のような大魔法も使えるという噂はある。
しかし、それはあくまで噂であり、もはや伝説に近い代物らしい。
つまり、アルトが使った【治癒】や【障壁】のような攻撃以外の魔法を使える者など、キースは聞いたことがないのだ。
それこそ、国お抱えの宮廷魔導士にも、都市や街に所属する魔法使いにも、もちろん冒険者にも、そんなことができる“魔力持ち”はいないだろう。
この話を聞いたアルトは一気に不安になった。
「えっと…僕の魔法は悪いもの、ですか?国の偉い人とかに、怒られたりしますか?」
「あ、いやいや!そういう意味じゃないよ。ただ、凄すぎるというか規格外というか、な。その魔法、全部アルトが考えたんだろ?俺は純粋に尊敬するよ。」
キースの言葉にアルトの心は軽くなった。
「ありがとうございます。でも、全部…ではないですよ。エメラと一緒に考えた魔法もあるし、エメラと一緒じゃないと使えない魔法もあります。」
「エメラと一緒に、てことは…エメラはアルトの契約精霊なのか?」
「そうよ。」
「ひょっとしてとは思ったが…ますます凄いな、アルトは。」
「エメラ、契約精霊ってなんだい?」
「あら、言ってなかったかしら?アルトが私を助けてくれたとき、魔力と名前をくれたでしょ?」
「うん。」
「魔力の授与と名付けを受け入れた精霊は、その“魔力持ち”と契約したってことになるの。だから、アルトにだけは私の魔力を貸すことができるのよ!」
「アルトは知らなかったのか?」
「全く。一緒に旅をするなら、名前があった方がいいかなと思ったんです。」
「そうか。ま、こういう純粋さがアルトの使う魔法の根源なのかもな。」
◇
それからキースの話を聞くうちに、アルトは冒険者を目指すことを決めた。
それを聞いたキースは、それなら自分と組まないかと誘った。
理由は2つ。
1つ目は、アルトが12歳の少年であり、田舎育ち故に世の中(都会)の常識に疎いから。
ただでさえ希少な“魔力持ち”なので、悪い大人に騙されたり狙われたりしかねない。
大人である自分がついていれば、そういった危険な輩から守ることができるだろう。
2つ目は、単純にアルトと一緒にいると面白そうだから。
今まで見たことも聞いたこともない魔法を使い、精霊と契約している“魔力持ち”の少年。
一緒に冒険者をすれば、驚きと発見に満ちた楽しい旅になるのは間違いない。
「どうだ?アルト、エメラ。」
キースに問われて、アルトとエメラは互いに顔を見合わせ、頷きあう。
「私は良いと思うわ。キースは信用できるって、精霊の私にはわかるもの。」
「それじゃあ、よろしくお願いします。キースさん。」
「決まりだな。これからはキースと呼んでくれ。それから、敬語もナシだ。仲間なんだからな。」
「わかりまし…わかったよ。よろしく、キース。」
二人は握手を交わし、エメラは祝福の印にと、周囲に緑の光を散らした。
それから三人は、キースの依頼完了報告とアルトの冒険者登録のために、ギルドのある街を目指した。
道中、アルトの使う魔法の数々に、キースは度肝を抜かれることになった。
魔法石の存在に始まり、【格納】に【飛行】、魔法で形作った【炎の剣】や【氷の矢】など。
キースはその都度「もう何を見ても驚かないぞ」と半ば呆れたように言うのだが、またすぐに驚くことになってしまうのであった。
◇
そうこうしているうちに、目的の街に到着した。
精霊が人前に現れると大騒ぎになるということで、エメラは姿を隠している。
一行がギルドの支部に向かっていると、ちょっと強面の男性が話しかけてきた。
「おい、キース!やっと帰ってきたのか。」
「げっ!ギルマス…」
「ぎるます?」
またもや聞き慣れない言葉にアルトが聞き返す。
「ギルマスってのは、ギルドマスターの略で、街にあるギルド支部のトップのことだ。んで、この街のギルマスが俺。よろしくな。」
そう答えてくれたのは、目の前の強面の男性である。
強面の男性―――ギルマスは視線をキースに移して言葉を続ける。
「キース、俺は森の調査依頼をしたはずなんだが…なんで迷子の保護なんかしてんだ?」
「違いますよ!後で詳しく話しますけど、この子…アルトは俺の恩人で、冒険者志望の新人。実力は確かです。俺のパーティーメンバーなんで。」
「おいちょっと待て。色々と聞き捨てならんのだが…あー、まあいい。後で詳しく聞かせろ。とりあえず、その子。あー、アルトっつったか?冒険者志望なら、俺も一緒にギルドまで行こう。いくらキースの推薦でも、試験は受けてもらう必要があるんでな。お前の報告を聞いてる間に、試験を受けられるように手を回す。」
ギルマスの言葉に、どうしようかとアルトが視線をキースへと向ける。
キースは頷きかけて、躊躇いがちに話す。
「そうですね。試験を受けるなら早い方が良い。…ただ、アルトはなんっつーか、ちょっと特殊でして。試験には俺とギルマスも立ち会った方がいいかと。」
「特殊?」
「ええ。それも含めて報告しますよ。アルト自身のことなんで、報告の席にアルトも同席させたいんですが?」
「ったく…その言い方だと断れねぇだろうが。その代わり、きっちり話してもらうからな?」
こうして3人(と姿は見えないがエメラ)はギルド支部へと向かった。
ギルドに到着すると、ギルマスが受付で何やら話をしたのち、一行は会議室へ通された。
◇
「っはー……キース…お前それ、本気で言ってんのか?」
キースから調査の報告とアルトのことをひと通り聞いたギルマスは、大きなため息をついて頭を抱えていた。
「もちろんです。嘘つくメリットがないでしょうよ。」
「それはそうなんだが、あまりにも荒唐無稽すぎてな。森で幻覚草にやられたとか、頭打っておかしくなったって方がまだ真実味があるぞ?」
「ま、ギルマスの意見も最もです。自分の目で見た俺自身ですら、まだ夢なんじゃないかって思ってるぐらいですし。でも、精霊がいるってのは見てわかるでしょう?」
そういうキースの横、アルトとの間には話の途中から姿を現したエメラがいて、うんうんと頷いている。
アルトはというと、内心焦っていた。
自分の魔法は変なのか、やっちゃいけないことだったのかと、とても不安になったのだ。
「とにかく、ここで話していても埒が明かん!アルトが“魔力持ち”なのは間違いないんだよな?だったら冒険者試験も兼ねて、アルトの魔法を見せてもらおうか。キース、お前も来るんだろ?」
「そうですね。アルト、今から試験になるけど、大丈夫か?」
「は、はい。」
「そう不安がるな。アルトのいつも通りの魔法を見せてくれりゃいいんだ。…ギルマスの度肝抜いてやれ。」
キースはアルトの不安を感じ取ったように言葉をかけた。後半はニヤリとした表情で、小声で付け足した。
◇
〈ギルド地下 試験場〉
「それじゃあアルト、とりあえず俺と対戦して、お前の力量を見せてもらう。今回は、精霊の力を借りるのは無しだ。」
「はい。よろしくお願いします。ギルマスさん!」
「審判はキースに頼もう。キースの話通りなら俺が先に降参するハメになると思うが、その時は攻撃の手を止めてくれ。もちろんお前が降参した時は、俺も止めるからな。」
「わかりました。」
ひと通り確認をしたのち、ギルマスは双剣を構える。
「っておいおい。お前、武器は?」
「あ、えっと、とりあえずは無しでやってみます。必要そうならその時に。」
「そうかいそうかい。そんじゃ、好きにしてくれや。(こんなボウヤに、俺も舐められたもんだねぇ)」
「(ギルマス、舐めてんのバレバレですよ。ま、せいぜい驚いて下さいや。)それでは、用意…はじめ!」
「【鈍化】、【重力】!」
「うおっ!」
アルトが唱えた途端、ギルマスの体が2つの意味で重くなる。
動きが緩慢になったかと思ったら直後、ズン!と重しを乗せられたかのように感じ、思わず床に膝を着く。
アルトはその隙を見逃さず、ギルマスのもとへと駆けながら手に魔力を込める。
「【炎の剣】」
アルトが剣を振るとヒュッと風切り音が鳴る。
「っそこまで!!」
キースの声が試験場に響くと同時に、アルトは手を止めた。
ギルマスの背中から振り下ろされた炎の刃は首筋の手前で止まっている。
「「「…」」」
「アルト、ちゃんと止めるつもりだったんだよな?」
「もちろん。火力も絞っているので、髪一本、焦げてないでしょう?」
【炎の剣】をフッと消したアルトは、事も無げにキースに答えた。
「…確かに。それで、ギルマス。どうです?アルトの腕は。」
「あーもう!やめだやめ!なんっだよ今の!初めて見たぞあんな戦い方!」
「そりゃあ、魔法も戦い方も、アルトのオリジナルだもんな。」
「そうそう、アルトはすっごいのよ?」
「そ、そんなに褒められると…照れるんだけど。」
「すごいのはもう十分認めてるっての。わかったよ。アルトは冒険者試験に合格!んで、ランクはBな。本来ならAランクにも引けを取らない腕だが、俺の一存じゃあこれが精いっぱいだ。」
冒険者はその実力に応じてランク分けされている。
一番上がSランクで、その下にA、B、C、D、Eと続き、一番下がFランクである。
通常はD~Fランクくらいから始めるものなので、いきなりBランクというのは異例中の異例なのだ。
ちなみにキースもBランクである。
「十分ですよ。そんじゃ、アルト。さっそく依頼貰いに行こうぜ!」
「待て待て。冒険者カードの発行がまだだろうが。」
「そうだよ、キース!それに、森で集めた木の実や薬草も売りたいって言ったでしょ?僕、お金ないんだから!」
こうして、すったもんだの末、アルトは冒険者への道を歩み始めた。
アルトとキースの二人組パーティーがあっという間にAランクに昇格するだとか、アルトの噂を聞きつけた魔法学院や宮廷魔導士の重鎮たちが動き出すだとか、そういったことはまだまだ先のお話である。
読んでいただいてありがとうございます。
面白いと思っていただけましたら、連載版もぜひ!