1プロローグ
静かな夜サンゼリカは銀色の髪が風に当たり月を眺めていました。城の片隅に立ちバルコニーから空に手を翳し届かない空を見て願ってしまう。
どうして自分は、こんな仕打ちの中で死ななければならだろう?ただ願っただけなのに、側に支え合う関係を望んだだけなのに!
お腹からは赤い血が滲み、痛みが襲う。
誰も助けてはくれない。
あの人も、あの子に向けられた呪いに夢中で、気づいていないから。
今頃は私を刺して笑う彼女に愛を囁いているのでしょうね。
ねえ神様、貴方はこんな結末を望み
私をこんな茶番の舞台に立たせたのですか?
そうだったのなら、もう少し幸せな時間をくれたら良かったのに。ハルス.....貴方なら私を助けてくれたのかしら。
いいえ望んではダメね。
貴方はもうこの世にいないのだから。
「あら....まだくたばってはいないのね。」
バタンとドアが開いて声がする方を見て恐怖する。
そこには乙女の聖女が口元を怪しく笑み、冷たくも憎悪の瞳が私を貫き固まる。
肩と唇からは震えしかなくて、両手で身体の震えを抑えようとするも、彼女から立ち上る邪気がそれを許してくれない。
「ふふふ怯えてるんだ。でも...許してあげない、私の舞台に貴方という虫は不要なの。死んで醜いお姫様!」
ザクッと瞬間的に刺さっているナイフが奥へと食い込み痛みと激痛が襲い引き抜きたいのに、何かの力か抜けなくて内臓を傷つけていく。
血が滲み出血が酷くなり地面には赤い花が咲いていき、ばたりと私は地面に倒れ伏す。
「いい気味だわ、これであの方も私を見てくださるはず。」
ふふふ、あはは!
彼女の狂気は、嫉妬から来ている。
こんなに狂わせたのは私のせいなのかもしれない。
ごめんなさい。
闇夜で笑う彼女に謝りたくても意識は、このまま失っていく中で、この物語には私は不要なのだと突きつけられたようで
ただ涙が一粒流れ落ちていった。
意識は失って次に目を覚ますと、空に浮かぶ青空と日差しが私を包み込んでくれるように降り注ぐ。
横を向くとそこには、あの事件で失った友人のハルスが小さくなって横になっている。
スースーと息をし、呼吸もしている姿を見て。
私は感極まり、起き上がりジッと見てると本当に生きてるか確認したくて、触ってしまっていました。
頭や顔に頬、そして彼の胸に耳をあてるとトクトクと鼓動が聞こえ顔を埋めてしまう。
「.......っ。あのさあ、サンゼリカ。甘えてくれてんの嬉しいんだけど、さすがにこそばゆいんだが。」
優しくも懐かしい声に、私は余計に彼が生きている事が嬉しくてギュウと服を掴んで泣いてしまった。
するとハルスは、えええ!
なんで泣くわけとか驚きながらも、私が泣き止むまで頭を撫でてくれた。
「落ち着いたか?」
「うん。急に泣いてごめん。」
「別に良いさ。もともとサンゼリカが元気ないから連れ出したんだし。ちょっとは気分転換になったか?」
ん? 気分転換ってどういう?
そう思ったとき、ふいに思い出すのは昔の記憶。
私が両親から厳しく育てられて、あれもダメ、これもダメと規則性を持ち遊ぶ時間もプライベートもなくて、逆らえば地下室に閉じ込められる地獄があった。
服なんてお洒落もできなくて、お母様のお古だったり妹の飽きた服とかだし、扱いなんて政略結婚させるために育て相手家からの支配権を持とうと野心家が我が家である。
妹なんて自由で明るく服も新品、私なんていらないような扱いだった。
そんな中で今日は家族が妹を連れて舞踏会に行っていて、私だけお留守という仕打ち。
寂しくて悲しみの中、ハルスが私を見つけ気分転換にと。
ここに連れてきてくれたのだ。
「うん。ありがとうハルス。」
目を擦りながらもお礼を言うとハルスはボリボリと頭をかき、おう。とだけ言い顔を背けてた。
彼の照れるときの態度に、もう一度笑うとポツリと小声で。
「まったく、お前はさあ。」
とか言っていたのなど聞こえおらず、ただ懐かしい気持ちで胸がいっぱいになっていた。