チートっぽいスキル
さて、色々と喚き散らしたが、これからの事を考えるかな…結局俺の今の境遇を幾ら嘆いても勇者の当て馬に成るのは確定事項だからな…先ずは現状、裏路地で独りで居る事だな。確か教祖(父親)から他の街への巡業を命じられて、嫌だ!と家を飛び出して我武者羅に走り回って気が付けば裏路地に辿り着いた所で俺の記憶が戻ったのだが…困った事に帰り道が全く分からない。
見た目年齢は6歳だが精神年齢は30を越えているのに迷子になるとは我ながら情け無い限りだ、取り敢えず大通りに戻るか…。
「オイ坊主こんな裏路地で何やってんだ?」
「!あぁ、いや別にチョット道に迷って…」
大通りへ戻る途中で明らかに犯罪者っぽい見た目の男が話し掛けて来た
「そうかい、そうかいソレは可哀想になぁ、ならオレが家迄送ってやるよ。へっへっへ」
「じ、自分で帰れるから大丈夫…です」
アレンは為るべく相手を刺激しない様に言葉を選びつつ返答を返す。
だが男はアレンの言葉を無視するかの様にアレンへと近付いて来るのだった
「そう邪険にしないでくれよ、オレは親切心で言ってんだぜ!」
男は少しばかり語気を荒げながらアレンに言葉を掛ける。
「そ…そうでしたか、で…では宜しくお願いします……」
「オッ!分かってくれたみたいで嬉しいぜ!んじゃ早速行こうぜっ!!」
そう言いながら男はアレンの腕を掴み明らかに大通りとは違う方向へと向う
「あの〜…大通りはそっちの方角では無いのでは?」
恐る恐るアレンは疑問を投げ掛けた
「アァ?コッチから行った方が近道何だよ…良いから黙ってろ!」
「は、はい…スイマセン……デシタ。」
(ヤベェ!異世界メチャ恐え!ってか転生早々命の危機何だが?!取り敢えず女神に貰ったスキルを確認するか…)
現状を打開する術を求めて嫌悪感を抱く女神にすら縋るアレンであった。
(え〜っと…治癒魔法レベル3と使い魔レベル2…あと、デバッグルーム?何だコレ)
治癒魔法と使い魔に関しては何となく理解出来るが、唐突なゲーム用語と言うか、余りにも違和感が強いワードに困惑しつつももしかしたらチートでは?と淡い期待をしながらデバッグルームの項目を開くアレン
(え〜と、見た目を変えれる、性別を変えれる、声を変えれる、種族を変えれる……確かにデバッグルームっぽい感じだが…コレって絶対に女神が俺に与えたスキルの筈だよな?このスキルでどうやって勇者と戦うの?)
扉の先には絶望が待っていた更にその先には女神の高笑いをする姿が見えた気がしたアレンであった。
(現状の打開も勇者と戦う事もマジでどうすんの…コレ?……いや、この男の意識を逸らして、腕を離してくれる状況を何とか作り出せれば姿を変えて脱出出来るか?)
女神のスキルに一筋の光明を見出し計画を立てて後は、どう実行するか?それを思考していると男の歩みが止まった
「着いたぞ、此処だろ坊主の家」
何を言われているのか分からずに顔を上げて正面を見ると……
「……家だ………え〜と…到着?何で?」
「?何を言ってんだオメェの家だろ?」
「えぇ、そうですね…ワタシの家ですね…」
「ふむ、変な奴だな、まぁ良いかそんじゃな坊主」
「あぁ、どうも助かりました。」
(…誘拐じゃ無いの?てっきり奴隷商とかに連れて行かれるのかと思ってたが…えっ?普通に良い人?あの見た目で?マジかぁ…)
自分がどれだけ彼に対して失礼な感情を抱いて居たのか今更ながらに気づいたのだった…
(そう言えば、この街はウチの教団の功績でかなり潤っているし、教団の私兵が見回りをしてるから治安も良いし、しかも教団が崇拝してる邪神は回復魔法を得意としているから教祖は勿論信者達も回復魔法を使えるし、それを施しとして格安の治療院を開いて入るので冒険者達や市民達に親しまれて入るし…俺がこの街で誰かに危害を加えられる可能性はほぼ無い…コレは俺の記憶が戻った弊害かもしれないな…)
前世では、ほぼ争い事とは無縁な人生を歩んで居たが、テレビでニュースを流し見をした朧気な記憶では子供が誘拐されたり何らかの事件に巻き込まれることを痛ましく思った感情が呼び起こされる。
(詰まりは、先程の男は只の善良な市民で俺が危機感を募らせたのは…俺の完全な勘違い…と言うか思い込みだな…そもそも俺って一応、教祖の息子だからそれなりに顔が知られてるし、ある程度の我儘なら通る位には知名度が有るんだよなぁ……ハァ……マジで恥ずいわぁ〜…多分もう会うことは無いだろうけど……何か恥ずかしいわ〜)
「………取り敢えず、家に入るか…」