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第1依頼 【神尾湊月】其ノ壱

ーすいませーん…捜し物をお願いしたいのですが。ー


凛とした黒髪と額に光る汗。

手元には畳まれた日傘。

憔悴しきらんばかりの表情から、ここを探すのに相当苦労したと見える。

「あ…え…はい。えー…この度は見栄えのせぬ汚い所へのご来店誠にありがとうございます。

私はこの店の店主、白藤王史と申します。

本日はお捜し物との事ですが、【どちらからのご紹介で?】」

先程までカウンターに伏せていた男から発せられた、

取ってつけたような物言いに苦笑を零しながら、

入口の女性はこう続けた。

「【Cafeモリアーティの主人は博識だそうで。シャーロックによろしく】と。」

その言葉を聞き王史はニヤリと笑うとこう続けた。

「いや、申し訳ない!一応形式的なものでね。

モリアーティとウチは家族ぐるみの付き合いがあってね。

そりゃもう代々と。

そこの紹介とビラの依頼は分けるようにしてるんだ。

立ち話もなんなので、奥へどうぞ。」

カウンターの奥のドアを開けると、応接間のような部屋があった。

ソファで挟まれたテーブル。デスクにはPC。

さらに奥に簡易的なキッチンがあり、

王史に促され女性はソファに腰掛けた。

「コーヒーでいいかい?暑いからアイス?紅茶もあるけど…。」

慣れた手つきでコーヒーを入れながら飲み物を尋ね、

紅茶を、と言う返事に手で丸をして答えた。

「さて…と。今回のご依頼について伺いたいのですが、

お名前と【なにを】捜してらっしゃるのかお伺い出来ますか?」

女性は少し目を伏せ、何か言葉を躊躇うようではあったが、

ぽつぽつと話し出した。

「私は、神尾湊月かみおみつきといいます。

モリアーティのご主人から【なんでも見つかる】とお伺いして…。

弟を…捜して欲しいんです。」

「なるほど。分かりました。

それでは弟さんが居なくなってしまった日、

どこへ行く、帰る途中だったか、わかる範囲で教えてください。」

湊月は、あまりにも当然のように事を進める王史に唖然としてしまった。

人を捜してほしいなんて探偵のすることだ、お引き取り願う。

くらい言われてもおかしくないことを言ったはずだったのだが、

王史は知っていたかのように話を進めるのだ。

拍子抜けしている湊月に気づき、ニヤリとしながら王史はこう告げた。

「なんて当たり前のように進めるんだろう?って顔してるね。

気にしなくて大丈夫だよ。

モリアーティからのお客さんは、割とみんなこうなんだ。

探偵や警察、それこそ自分達で見つからなかったもの。

そういうものを見つけたい時に、マスターはウチを紹介するんだ。

皇古書堂をね。」

「どうして…ここなんですか?」

湊月は素直な疑問を王史に告げた。

なぜこんな古本屋に探し物を頼むのか。

そりゃ言ってしまえば自分もそうなのだが、

何故かマスターは自信ありげに勧め、湊月自身、もしかすればと思ってしまった。

だが訪れてみれば、ただの古い古本屋。

店構えに似合わぬ青年が1人店番をしているだけの古本屋だ。

「少し長くなるけどいいかい?

まぁ依頼内容も個人情報だからね。

信用した相手に話した方がいい。

モリアーティとウチ。そして俺。

皇古書堂に捜し物を依頼すると必ず見つかる。

その話を聞いてみて、今回の依頼をどうするか決めてもらうことにしよう。」

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