面接官「特技に『イオ○ズン』とありますが、これはどういう事なのですか?」
「特技はその...イオ○ズンとあるのですがこれは...?」
面接会場という重々しい雰囲気で、面接官がその場所にはふさわしくないであろうその言葉を口にした。パイプ椅子に座っているその面接中の男は、はい!という一言の後そにその言葉について説明を始めた。
「相手に爆発の攻撃を行います」
「ば、爆発...?」
爆発という恐ろしげなワードに面接官は視線をエントリーシートに戻すが特技には「イオ○ズン」としか書かれていない。その得意を書く欄はそこそこの大きさがあるのだが、その「イオ○ズン」としか書かれていないため下の方は大きく余白が余っている。
「ええと...それは当社において働くうえで何のメリットがあるとお考えですか?」
「はい。敵が襲って来ても守れます。敵全体に100程の爆発ダメージを...」
その言葉に、面接官も顔をしかめる。爆発を起こすのもどうかと思うが敵に当てるのだから怪我で済む話ではないだろう。そんな危ないものを扱える者を入社させるわけにはいかない。そもそも敵とは一体..?
「敵..?100...?」
「100ヒットポイントです。HPとも書きます。ヒットポイントというのは・・・」
ヒットポイントというゲームのような話を始めるその男に、面接官はメガネをクイっと上げてその話を遮るように話を始めた。
「おかえりください」
面接官が、そう言うも、その男は帰る気配が無い。聞こえなかったのかと思いもう一度「おかえりください」と促すがその男は席を立つ様子がない。不思議そうに面接官が首を傾げていると、その男はこう口を開いた。
「いいんですか?使いますよ?イオ○ズン」
「どうぞ、使って満足したのなら帰ってください」
男は、はぁー!と言いながら腕を前に突き出す。すると壁が大きな爆発を起こして粉々に砕け散ってしまった。面接会場は爆発と爆風で椅子や飾ってあった観葉植物が散乱し、黒い爆発の跡と粉々になった壁の一部だけが残っている。面接官に向けて打って居なく、幸い面接官に怪我はなかった。
「どうですか?これがイオ○ズンです」
その言葉に面接官も言葉を失いただその男を見ているだけだった。男は「だから使いたくなかったのに...」と呟きながらスーツに飛び散った壁の破片をパンパンと払った。
「あなたは...一体??」
「これでも入社できませんか??なんならもう一発...」
この爆発の影響か、外ではサイレンの音が鳴り響く。外を見るとパトカーや消防車が何台も止まっている。どの車も頭の赤いランプがピカピカと光を放っている。
「チッ、証拠隠滅をするためにこいつだけは消しておくか...」
「はわわ...」
今度は面接官に向けて手を伸ばすが今度は爆発は起きなかった。男が何度もやってみるが爆発はやはり起きない。
「なんだ?どういうことだ?マジックポイントはあるはず...!」
「やはり、あなたも『選ばれた能力者』でしたか...!」
面接官がフラフラと立ち上がり男を見る。ニヤリと笑みを浮かべながら男の方に近寄ってきて腕を掴んだ。
「いやね、ここにはよくあなたのような能力を持った者が面接にくるんですよ。それに備えてある特技をもっているんです。なんだと思いますか?」
「それは一体なんなんだ...?」
恐る恐る男が聞くと面接官はずれたメガネを戻して顔を近づけ、その質問こう答えた。
「呪文を封じる特技なんですよ。ここはあなたのような特別な能力のある人のね。どうでしょう?あなたを警察に引き渡さない代わりにここで働く気はありませんか?やる子事はとっても簡単。能力を持った者が起こす事件を解決するだけなのです」
「それは...どういう事ですか?」
「うち、表向きは普通の会社ってことになってるんですが、実はそうではなくてですね...『能力者対策本部』という名前なのですよ。なのでね?あなたが起こした爆発だと知らされ刑務所に入るか、それともあなたが入りたがっているこの場所に入るか...お好きな方を選んでいいんですがね...」
続く!
「これで終わりかよ!!」
その少年スマホで見ていたその動画に向かって、そうつまらなそうに呟いた。動画内では「続く!」と白い文字で真ん中にデカデカと表示され、その後に『能力者対策本部、テレビアニメは深夜3時に絶賛放送中!!』というテロップが流れてその動画は終了した。
「いやー面白かったなあ。『能力者対策本部!』まさか面接に行った場所がそんな所だなんてなあ!!一話だけ無料配信されてたし、チェックしなきゃなあ!!」
そう言いながらその子供はスマホをソファに放り投げてテレビをつけた。