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われら第六遊撃隊  作者: ふぁいる
7/12

メシアの護り方

「むふん」


視界いっぱいに広がる満天の星空


ドロシーはお昼に行われるメシアの模擬戦までの暇つぶしにメリッサの部屋に訪れていた


メリッサの部屋は拡張に目玉飛び出るほどのお金をかけてそれはそれは立派な部屋になっている


第六遊撃隊の部隊長をはじめ、他の部隊長も来ているとか



廊下から玄関を通り、進むとコンテナのような一部屋が広がる


ようなでは無く実際コンテナなのだが

そのコンテナには外が存在していて、常に夜のキャンプ場になっている


つまりは部屋の中に外があるのだ

訳が分からない

ついでに考えたら負けだ



そのキャンプ場は空気も山のそれで、気温も下がっていてひんやりとしている

寝転ぶと心地の良い草原に

火を起こすことの出来るセットまで

天候は変わらず、観測の邪魔になるような虫などもいない


こだわりにこだわり抜いたメリッサの部屋だ



たまに流れ星を見ることが出来ると聞いてドロシーもよく寝転んでいる

一度ちらりと見えたのが本当に流れ星だったのか、確かめるのも含めて見たいらしい



「うきゃーっ」

人形で遊びながらゴロゴロとするドロシー


部屋の中は夜だが、時刻はもう少し経つとお昼となる


「はふぅー」

火を起こして温かい飲み物を飲むメリッサ

あちらの世界の椅子という物に最近はハマっているらしい、思いがけないお給金で買ってしまったとかなんとか



「ドロシー、お昼はどうする?」


「ぅ?んと…なんでもいーぃ」


「なんでもいーかー…じゃあ食べなくてもいい?椅子が高くて節約生活したいんだー…」


「ぁぇ…たべないの?」


「うんー」


「ぅー…そっかぁー」


人形を動かして喋るのも忘れる程度にはドロシーも悩んだようだが、結論としては食べなくていいらしい



「え、えっと?ダメですよ?食事はちゃんと食べてくださいね?メリッサちゃん、ドロシーちゃん?」


「うあー…あえ?ソエルさん!?」


ホッコリと椅子に座っていたメリッサを覗き込むゆるふわ茶髪な女性のソエル


「んぁ…ぶたいちょ!?」

ドロシーもアセアセと正座をする


「あっ、そんなにかしこまらなくてもっ」

ソエルはメリッサとは縁深い人物で、縁関係なくとも第四土兵隊の部隊長だ


「そうね…メリッサちゃんがいいなら今日はお昼ご飯を作って上げてもいいわよ?」


「えっ!ホントですか!」


「ええ、その代わりメリッサちゃんのお部屋を満喫させてね?」


「もちろんですよ!」

ちなみにメリッサの部屋の合鍵をソエルは持ってたり…


「それじゃぁ、まえ勝手に作った畑か畑の跡地は残ってる?」

「コンテナの反対側にふかふかの土があると思いますよ」


「わかったわ、それじゃ少し待っててねー」


そう言うとソエルはコンテナの裏手に回っていった


「おぉあ…めさ…うあうあ…」


ハイハイと四つん這いでメリッサに近寄るドロシー

「ん?ソエルさんとここで会うの初めて?」


全力で頷くドロシー、冷や汗を拭う

ここでもそうだが基本は他の部隊長に会う機会は無い


「んー、まぁママみたいな人だよ、うん、何作ってくれるのかな」

メリッサはドロシーの様子をあまり気にせずにソエルの料理を待っていた


「はばば…」

メリッサには伝わらなかったがドロシーはどうすればいいのか分からずまるで目がグルグルになっているようだった



「はい、どうぞ、カレーです」

ソエルが鍋に作ってきたのはシンプルなカレーだった、量は多いが


流れるようにご飯の上にかけられ、カレーライスが完成する


「うまい!」「そう?ふふ…よかったわ」


メリッサは特に気にせず食べたようだが、ドロシーはこちらでは食材的に珍しいカレーに変な汗をかいていた


「ドロシーちゃん、美味しい?」

うふふ、と微笑むソエル


こくこくと頷くドロシー、正直ちゃんと味わえていない

米や香辛料をどこから出したのやらが勝っているようだ


「ぁ…ぅ…ん…」

「かわいー」

ドロシーの頭を撫でるソエル


「綺麗な髪色ね、白と黒の間、柔らかい髪質なのもいいわね」

さわさわと撫でられるとドロシーは背筋を伸ばしカクカクとスプーンを口に運んでいる

目線でメリッサに訴えかけているがメリッサは気づく様子がない



食べ終えるとそろそろ時間だと気づく

ドロシーはチラチラと卓上の時計を見ていたが



「ぁぅ…」

「うん、そろそろ行きます」

「わかったわ、私は満足するまでここにいるわね…あ、カレーは匂いが強いから…っと、これで大丈夫、二人とも行ってらっしゃい」


頭をポンポンとされる二人

ドロシーはパンク寸前のようだ


「ではいってきまーす!カレー美味しかったです!」

「ぁ…ぅぁ…ん…」



そうして二人はメリッサの部屋を後にするのだった



「やっぱり、ドロシーちゃんは全属性に適性があるのね…」

ソエルの呟きは居ないはずの虫の鳴き声に掻き消えていたりして





「なんか…いーにおい」

部屋から出てドロシーが呟く

人形は介してない、未だテンパっているのか


「なっ!この前持ってきてくれた紅茶の匂いだ」


ドロシーがこの前っていつだよとメリッサにジト目を向ける、当然メリッサは気がついてないが




部隊に所属している人は仕事の一つに模擬戦がある

この模擬戦は訓練とは別で、街の人達への見世物でもある、場所は地下闘技場

そして、模擬戦とは名だけで全力の倒し合いとなる


模擬戦の形式は様々で人対人にタッグ、チーム戦など主に街の冒険者、部隊メンバーで行われる

他には小型から大型まで様々な魔物を冒険者達が狩るというものだ


賭け事の対象だったり、順位付けをしていたり、他の町から雷の街に来たがる理由の一つとも言えるものだ



本日メシアが行うのは人対人で一対一だ

対戦相手の詳細は客であるドロシーとメリッサには名前と順位しか分からない

「ヴァレ?聞いたことある?」

客席側でメリッサが隣のドロシーに聞く


ドロシーははてなマークを浮かべている

周りは大音量の音楽が流れ、開始までのカウントダウンがされている

ドロシーにはシンプルに聞こえてなかったかもしれない


ドロシーはうるさいからと地下闘技場は嫌いらしいので


昼時は夜の客席満員とまでは行かないが数日前に第六遊撃隊が活躍したからかそこそこ人数が集まっていた


二人の前方で解説しているおじさんの声が聞こえる…たぶんメリッサにだけ


「…へぇヴァレは風撃隊の一人なんだ」

「…ぅ?」

変わらず首を傾げるドロシー

これは聞こえてないな、と確信



カウントダウンがゼロになり実況の人の声が聞こえてきた


ヴァレ対メシア

メリッサ達はもちろんメシアの応援だ





闘技場の真ん中で二人が並ぶ


互いに相手のことを確認した

メシアは相変わらずのドレスコーデで黄色が印象的だ

ヴァレは茶色いロングコートを着ている

正面からしか見えないがコートの内側のベルトのようなものに「への字型」のものをいくつもぶら下げている


メシアは事前調査通りの、風撃隊の装備であると確信した

「銃…ですわね」


ビーーッ!とブザーが鳴る


模擬戦が始まった



メシアは固定の開始位置からすぐさま横にずれ、光の障壁を展開する

事前に唱え準備していたものだ


展開直後、開始位置の頭のあった部分を弾が通り、直ぐにきた別の弾が障壁に当たり、砕けた


「なっ!?」

盾をドレスの裏から出しながらメシアは驚愕していた


銃の情報は事前に集めていたがメシアの予想の何倍も先手を撃てるもので攻撃力のあるものだった


盾を構える隙に腕に弾が掠る

ピッと吹き出す血


「ヒッ!?」

盾を出してそのまま縮こまるメシア


薄く軽い盾にカンカンと高い音がなり、軽い衝撃がメシアの手に伝う


「不味いのですわ、まずいのですわ…」

更に大きく分厚い盾を模擬戦中に手間をかけて出すことが出来る機能で出そうとする

身長近くある盾は回り込まれたら終わりと一瞬躊躇した、その瞬間

一発の弾が盾を貫通してメシアの目の前を横切った


「ひぃ…」


たったのこれだけでで積まされたと確信してしまう

先程の弾は貫通して尚、勢いは殺されていなかった





観客達は既に次の試合のことを見ていた

あれはもう仕方がない

終わるのも時間の問題

盾役で盾が使えなきゃ…

一瞬で勝負がついたものだとみて客席側の声はいい声は聞かない



「あれが銃っていうやつなのか?今までの武器とは大違いだ…」


銃自体は使われていたらしいが使い手が悪かったのか、今までの相手は対策が出来ていたのか一方的とは聞かなかった


「メシア…負けちゃうの?…」


ドロシーがメリッサに聞く

胸元で握られている手と上目遣いが可愛いと思うと同時に、腕で潰されている人形はいいのか…と思うメリッサだが


「メシアは絶対に負けないんだろ?ドロシーがそう教えてくれたんじゃん」


「…うん、メシアは負けない、こころが強いから」


そう言って二人は闘技場の二人を見る





「近づくことも出来ないなんて反則ですわ…」

大きさのない盾に身を隠し、縮こまり、膝をつき、俯いていた


模擬戦だからと諦めてしまうのもいいかもしれない

部隊は違えど心強い仲間がいると身をもって知れたからいいかもしれない

死にかけに致命傷だとしても模擬戦で死ぬことは絶対にない、蜂の巣にされても…



もう一度、貫通弾が目の前を通過した


…わざとですわね

メシアはそう確信する



また、盾役は…とバカにされてしまうのですか?

また、自分の殻に引きこもってしまうのですか?

また、ドロシーに助けてもらうつもりですか?



その思考は一瞬だった

メシアにとって運命の日が思い出される


覚悟を決める


その覚悟を決めた顔に先程までの弱さはない



立ち上がりながら後ろに飛ぶ



着地した次の瞬間には足元に弾が着弾する

しかし高い、弾が弾かれる音


ドレスの穴から除くのは銀色…盾だ

ヴァレは苦笑いをしながら別の銃に手をかける


メシアが走り出した、ヴァレに向けて、正面から


「…!ふん…」

ヴァレは一瞬驚いた顔をするが引き金をひく


メシアの盾のない手が動く

着弾音と共にメシアの服の腕部分が燃える

そしてすぐ背後で大きく爆発



ヴァレは目を開く

燃えてわかったのは腕部分にある装備で着弾を逸らしたのだと

なお距離を詰めてくるメシア



着弾地点を爆発させる銃のクールタイムを待つ暇は無いと次の銃をだす


構えて、撃つと、どう合わせたのかメシアの盾が投げられていて、空中で氷の塊となる



次の銃を構える

引き金を引いた瞬間には着弾し、しびれさせる、どれだけ目が良くても捉えることは出来ない銃


それすらもメシアには効かなかった

撃ったのは胴

見えるのは銀色


「…全身とか、甲冑かよ!」


ヴァレは笑っていた



クールタイムの済んだ炎の、爆発の銃と通常の銃を取りだし、撃つ


メシアの目の前で爆発する

…がそれでもなお走ってくるメシア


服は燃えているが、関係ないとばかりに迫ってくる


距離的にせいぜい撃てるのはもう一回

取り出すは闇、当たれば昏倒させる、切り札だ


撃ち、着弾、着弾地点から爆発するように広がる黒い衝撃がメシアを飲み込む

「…悪いね」



勝ちを確信したヴァレは銃を納めた

一手遅ければ肉弾戦となっていただろう距離、ヴァレに銃以外の武器はない

掴まれれば負けだろう

黒い嵐のような衝撃が収まれば倒れているはずのメシアを…



次の瞬間頭に衝撃



「おあいにく、わたくし元領主、今は無き天帝の娘ですの…お覚悟くださいまし」


倒れ、馬乗りにされるヴァレ

天井の照明がメシアに後光がさすように光っている


服が燃え落ち見えるのは

全身に装備された、皿のような盾たちがワイヤーでドレスを型どっていた



「…あはは、負けだ、参ったよ」

ヴァレは降参した

次回19日

メシアの過去

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