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われら第六遊撃隊  作者: ふぁいる
5/12

メリッサ 2

つづきです

ザァザァと雨の音がする

分かるのは、それくらいだ




霊能力、霊を操る、多分、そういう所だろう

女の霊がすぐ近くにいる気がして、身の毛がよだつ


よだつどころか、半分乗っ取られている気さえする


足の感覚はないが動いている感覚はある

視界はないが、聴覚がずりずりと音を捉えている


ヌメリとしたものを拾った


「…うぇ、お前の頭か?これ…」


なんとなく、なんとなくそう思っただけだ


多分そうだろうけど


未練タラタラなのが伝わってくる、まだ生きたかったと教えてくれる


まぁ、分かるよ、私を利用しようとする程にはってことも



トスっと

足音が聞こえた

すぐ近くだ



「…うわぁ、グロい狼?と…人?」

「コレ…人ですか?」


「だ…れ」

声を振り絞った


「…ゾンビだよなぁ、私はセーラ、意識あるなら上を向け」

「私はバンシーです、セーラ、上向いても意味ないような…上向いた…」


まだ死んでない、半分以上死にかけているけど、死んでない、殺されるのは不味い


「…へぇ、これ欲しいなぁ、ソエルに頼めば何とかしてくれるよね?」


「…はっ!?つまり私にこれを食えと」


「保存するだけだって」


「…うぅ、ぐすん…」


がパァと音がしたあと


パクンと、何も感じなくなった





心地の良い、夢を見ていた

グズグズに崩れた孤児院から空を見上げると、いくつもの流れ星が夜空を彩っているのだ


いつまでも、いつまでも。

周りにマザーも孤児院の皆もいない


それでも、心地よかった





私が目を覚ました所はどこかの部屋だった


綺麗なところで、孤児院とは比べ物にもならない


「あら、早かったですね」

寝かされていたベットの傍の椅子に腰掛けていた茶髪の柔らかい雰囲気の女性


そんなことを言うと部屋から出ていってしまった


部屋に残され、体を起こして周りを見る

窓からは木の葉っぱだけが見える


知ってる、立地が悪いって言うんでしょ



ガチャりと、部屋に入ってくる、赤髪の女性


と、多くの幽霊

「…っ!」


「…あぁ、見えるのか、珍しい」


ケラケラと笑う、どこか楽しそうに


「…だれ」


「命の恩人だ」

その声は最後に聞こえてきた声と同じだった


警戒を緩める


「…ありがとう」


「ふふん…いい子じゃん」


そう言いながら、傍の椅子に座った


「じゃあまず、自己紹介、私はセーラそっちは?」


「メリッサ」


「…メリッサね、この幽霊は私の使い魔、害はない」


「ないよー」「ありません!」「ないっ!」


ビクリと体が反応する


「ばか喋んなって、驚いてるじゃん」


「ごめん」「すまぬん…」「ごめんね」

しゅんとセーラの体に沈むように消えていく幽霊達


…ちょっと可愛い


「メリッサか、質問するね?」


頷く、ここがどこかなど聞きたいことは多いけど


「あの狼はメリッサが倒したのか?」


「…ぁー多分、それで間違ってはない」

事故に近いけれど


「それは毒使いをその、能力下におけた…たまたま置けたって感じ?」


こくこくと頷く

私の能力…魔法を知っているのだろう

…どうして知っているのだろうか


あれからどれだけの時間が経ったのだろうか


「ふんふん、行く宛て無かったり?」

頷く


「うし」小さくガッツポーズするセーラ


「あ、これに見覚えは?」


そう言ってチャリ…と出したのは


マザーのネックレスだった


「ある、あるけど…どこでそれを?」


「おぉー繋がった」

一人で納得するセーラ



「これは、ある錬金術師のネックレスだ、その錬金術師は主に人体錬成で擬似生命体を作ることをしていた、別にそこまではアウト線上でセーフだけど、その擬似生命体を売って金儲けしてたんだよねー」


線上ならアウトでは…?


「だから実験施設ごと燃やしてきた」


「え?」


その結果がこれ、とネックレスを垂らす


…つまりはマザーが錬金術師で、私たちは作られた擬似生命体

そして孤児院は燃やした…と?


「私は…えっと…人間じゃないのか?」


色々と混乱した、他にも聞こうと思ったこともいくつか生まれたが、口に出たのはこれだった


「…あぁ、元ね?」


「…元?」


この人と話していると定期的に思考が止まる


幾度目かの思考停止の末、そう結論づいた



「じゃあ今は人間なんだ…ぅぅ」


「ひゃ?な、なんで泣くの!?あぁ、そうだよね?人間になって嬉しいもんね?じゃあ後で人間にしてくれたソエルにお礼言わないとね?」


ぐすんと顔を触った、セーラが慌てている時に触れた

その時に、私の顔に違和感があった


思考停止は思考の放棄に変わった


「…じゃあ、最後の質問ね!すぐソエルのとこ行こう!」


スっと出された物を見る

私の顔が映る


「…おおかみさん?」


私の顔自体、見ることは少なかったけど、湖の反射で見たことある限り、毛深いし…


…耳も4つもなかったはずだ


「うん、違うみたいだね、憑依タイプかぁー、じゃあソエルに会いに行こー!あっ、このネックレスはメリッサが付けといて」


1度溢れ出した涙が止まらなかった結果、セーラに連れられて行くことになった


私に付けられるマザーのネックレス


多くの疑問は残るけど、まずはソエルさんという人に感謝の言葉からだ




部屋の去り際、私の座っていたベットの小さな机を挟んだ反対側、もうひとつのベットに誰かが眠っているのが見えた


不思議とその誰かは、知り合いな気がしてならなかった





廊下を歩きながら、セーラさんがずっと喋っている


「その顔…というか毛と追加の耳はメリッサが倒した狼の霊のせいだよ、ってうちの子達が言ってる」


「そなの!」「おーかみ!」「つよ!」


「…その霊を引っ込めれば毛深いのと、獣耳は治る」


「なおる!」「さっぱり!」「きれい!」


「ただ引っ込めるのには能力下に置くわけだから…その姿にいつでもなれるのか、いいな」


「それた」「はなしが」「いーなー!」


「…」

苦笑い


「肌の色が変わるけどうちのレイスを一匹憑依していいよ、それで狼みたいな姿は治る」



「試さなくってもいいけど、嗅覚、聴覚と身体能力がなんかすごいことになってると思う」


「すごい!」「ずわって!」「なんか!」



「いやー、面白い子拾ったなー、これからよろしくね、メリッサ」


「よろー」「こーはい?」「よろ!」


「え?あ、はい…?」



「ソエルー…さん!」

他と変わらない扉の前に止まり、セーラさんがコンコンとノックする


先程の茶髪の女性がいた


さっきのこの人が、擬似生命体だった私に、本当の命を与えてくださった…



「セーラ、無理ならさん付けはいいって…あら?」



ソエルさんが私を見る

セーラさんの笑顔が視界に入る


「えっと、メリッサっていいます!あ、えと、ソエルさん!ありがとうございます!」

頭を下げる



流れ星のような、私だけの特別なネックレスを揺らして



私の、メリッサの人生が始まった時だった。

次回は12日です

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