表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
われら第六遊撃隊  作者: ふぁいる
2/12

ドールメイカー

第六遊撃隊の一人、人形使いのドロシーはカーテンの締め切られた暗い部屋で魔法陣を展開していた


魔法陣の上で虎の人形がふよふよと宙に浮いている



「ん~~ドールメイク~」

床に直接書いたり、上機嫌で魔法陣を弄っていた


「きょうは~どの辺をー作ろっかな~」


普段とは人が変わったように

鼻歌と時折歌詞を口ずさみながら暗い部屋の中をスススっと移動している


暗い部屋に黒い服な為、まるで暗闇に溶け込んでいるかのようだ

ただ丈は非常に短いためすらっとした足が出ている



「まぁー決まってなくてもーふふふふーん~」



虎の人形が形を崩し丸いホヤホヤになる


「ぁーぁー~体わーぁあー良い素材がないからー」



部屋の壁沿いに置いてある傷だらけの宝箱を漁る、どうやら良い素材がないらしい、何かわからない細かな部品などを宝箱から出しては周りに散らかしている


「薬とー毒とーチェーンもいれてー」


緑の液体の入っている透明な瓶を空けずに宙に浮くドールに投げる


そのあとも紫の同じような瓶やガチャガチャとうるさいチェーンも投げ込む



投げられたものはふよふよのドールに際限なく入っていった


「あっでもかわいさも、ほしい~…」


入れた後にドールを見るドロシー


「…取りに行くのはめんどうー」


ふたたび宝箱を漁り出すドロシー

中はありとあらゆる物がごちゃごちゃと入っている、という様子だ

中には生き物も…



「虫とーネズミもーいれてー」


籠の中に入った実験用の虫とネズミも籠ごと放り込まれる


「いち、に!さん!!」


ぽんとコミカルな音を立てて人形が煙に包まれる


煙が晴れると…

「わぁ、ヘビさん!」


デフォルメのような蛇の人形がそこにはいた


「かわいー」


ドロシーが近づき手に取る

撫でたり弾力を確かめたりしている


「…あぇ?真っ白な子だ…うーん、何かいいのあったかな?」


蛇の人形になんの能力も無いことを見ると、人形を再び宙に浮かせて宝箱をあさり出す


蛇は空中でうねうねしている


「ぁーぁーんぁ、氷の結晶?これでいいや」


ポイと蛇に投げ込む

それを蛇はぱくりと食べた


「ぽんっと!」

再びコミカルな音


蛇の見た目に変化はない

ドロシーが人形を抱きしめる


「ひゃ…ちべたい…」


ぽとりと人形を落とす

その時後ろから光がさした



「なぁードロシー?返事がないから開けたから…まーた人形いじってたの?」

「…まぶあぶ…」

ワタワタと手を振り、顔を隠すドロシー


部屋の扉を開けたのはメリッサだった

逆光…というかドロシーの部屋が暗すぎるだけだが、メリッサの表情は見えない

その顔は呆れていると容易に想像できるが…


「こっちからすると暗くてなんも…また寝間着でやってたのか…しかも薬品こぼしてるよな…」


メリッサがスンスンと鼻を鳴らし、部屋の様子を見る

部屋の外からの光で照らされた魔法陣周りの床は薬品の瓶が転がり、きもち緑色に変色していた


「ぁ…ぇへ…」

先程までのテンションはどこへ行ったのか、周りからするといつものドロシーが照れたように頭をかいてる



「まぁいつも通りか…ご飯だから呼びに来たよ…ぎょ…今日の人形は蛇なのか?」


しゅるしゅるとドロシーに登っていく蛇の人形


ドロシーはコクコクと頷く


「ぅはー…まぁいいや、先行ってるなー」


扉が閉じられ部屋に暗闇が戻った


「…むふー」


ドロシーはどこか満足そうだ




第六遊撃隊は雷の街と呼ばれる非常に広い街の部隊の一つだ


六人の部隊長の元に構成され

街の安全を守ったり、時に喧嘩の仲裁として入り、不振な輩が居ないか日夜警戒したりと、ほかのところで言う衛兵とそう変わらない存在だ


ただ違いがあるとすれば、魔法や剣の腕が高い水準である所だろうか



「そいで、きょうは街の外で捕まえた盗賊の諸々の後処理と」


メリッサとドロシーが並んで歩いていた

既に街からは出ており、辺りは広く見渡せる平原だ



第六遊撃隊の主な仕事と言えば…

専ら雑用となっていた


他の部隊と比べて、人数も少なく、魔法や剣に統一性も無い


唯一勝てるところといえば…個性の色強さ、だろうか


「ぅ」

ドロシーがか細く声を出す


「ん?…あー見えた」


二人の視線の先には赤い服装の人物が二人

第一炎撃隊の特徴とも言えるその赤い装備は遠くとも、見渡せる平原では目立つ服装だった


炎撃隊の方も気がついた用で一人が手を振っている

距離が近づき声も届くほどとなった


「おーい、遊撃隊のかたー!ここですー!」


「ほいほーい、わかってるよー」



メリッサとドロシーが炎撃隊の元にたどり着く

「お疲れ様です、昨夜ここからしょっぴいた盗賊の後処理をよろしくお願いします、如何せん我々燃やすことしか脳が無くてですね」


たははと頭を掻きながら話す炎撃隊の青年、赤く、光沢のある鎧と槍は手入れが行き届いておりその人の性格が出ているようだ


「…チッ」


その後ろで座っていた赤黒いローブの男性がのそりと立ち上がる

遊撃隊をジロリと睨むと鼻を鳴らし背を向けた


「遊撃隊のチビが来たんならさっさと行くぞ、森の奥に行ったサイの魔物も俺たちでやっちまおう」


「えぇー今から合流するんですか?二人なんで帰還しろって言われてたじゃないですかぁー」



そう言って炎撃隊の二人は歩き始める、街への方向ではなさそうだ


「遊撃隊の方!後処理の方お願いしますっ!」


最後に青年はちらりと振り返り軽く挨拶をしていった




「うーん、あのローブ、前もうちらのことチビって言ってたよね」


ドロシーは周りを見渡す

辺りは黒焦げの後に戦闘跡だろう穴ぼこ、ちらりと見えたのは人の…


「へんな、とこで…野営?」


虎の人形をモゾモゾさせてドロシーが喋る


辺りは見晴らしのいい平原、焚き火なんてすれば目立つ上に夜に活発化する魔物に位置を晒すことになる


「焦げ跡は炎撃隊としても、変な場所にはかわんねー」


チビという言葉にムスッとしていたメリッサだったが、もはや言われ慣れたのか、切り替えは早かった



メリッサが報告書を出して中身を確認する


ドロシーはそそくさと辺りを確認していく


遊撃隊の隊長が持ってくる仕事はいわゆる雑用が多く二人も随分と慣れていた



「今回は随分と生き残ったんだな」


メリッサはそんなことを呟いた


炎撃隊は戦い方が戦い方な為に敵とみなされた盗賊達は多くが帰らぬ者となる

そこら辺は隊長会議でもよく議論の種になっているらしいが…

今回は重傷者の人数が普段の数倍、ただ、生存者だ



「めぁ…て…」


ドロシーがボロボロの布切れを持ってきた


「…これは?」

「……ぁー」


布切れをメリッサに渡し虎の人形を抱き、いつもの構えをする


…メリッサの目は暖かい


「この布、あの、黒焦げからちぎった、でも、燃えてない」


黒焦げ、とはクレーターとなった跡の上で動かなくなっている盗賊をドロシーは指している


「…なんかキラキラしたのが引っ付いてんな」


「炎、から、まもる?」


「私も調べるか、ドロシーは後処理のやつ準備しといて」


「…わった」



メリッサも辺りを確認したあとドロシーに手を振る

それを見たドロシーは後処理を開始する

日は随分と傾いてきていた


「ドールメイク…みず…うま…すいば?」

「いや、こっち見られても」


虎の人形は形を変え、馬の形へと姿を変えていく

馬と言っても大きさが変わることなくドロシーが胸に抱きしめれる程度のサイズだ


「アクアダンス」


馬の人形が走り始め、後処理が必要であろう箇所を囲っていく、馬の後には水が生み出され、渦を伴いはじめる


ドロシーとメリッサはその渦から少し離れ様子を見る


水と渦は囲んだ地面を覆い、地面に被さった


馬が走るのを辞めて、ドロシーの元に戻ってくる


渦が消え、水も消えていくと荒れた土地は土砂降りの雨が降ったあとのような泥ドロとなっている、地面のでこぼこも泥で埋め尽くされている



「ぅ…」「おっけー」


さて帰ろうか、なんて雰囲気になった時


遠くで悲鳴が聞こえた


「…!」「どっから?」


夕日が遠くに沈もうとしているなか、一つの光が遠くで登っていった


「…炎…槍か!」

遠くに見える森の向こうからこちら側に向けて槍が投擲された

と想像ができる


その槍は燃えていて、つい先ほど見た覚えがある


「愛用の武器を投げるバカとは思えないけど…それとも投げざるを得ない状況?ドロシー」


メリッサがドロシーの方を向く


それは確認


それにドロシーは無言で頷いた


「霊獣ウルフ召喚」

メリッサが駆け出しながらも唱える


ドロシーも後を追うように走り出すがメリッサとは既に随分と距離が離されていた



ドロシーは宙に水を残しながら走る水馬の人形に掴まって森に入った


森に入ってすぐに川、水辺が見えており、迷うことなく、戦闘中のメリッサを発見する


「…めぁ」


メリッサは地面を背にし、そのハサミをすんでのところで止めていた


ハサミの持ち主はメリッサの二倍はありそうな大きさの、蟹の魔物



水馬から手を離し、着地する

水馬はそのまま走り蟹のハサミの付け根に体当たりをしていく


周りを見れば切り倒された木が辺りに散らばり


木の幹に泡で絡め取られている第一炎撃隊の青年と

地面に泡で固定されてぐったりとしている赤黒ローブが見える


…死んではなさそうだ



「ドォロシィー助かったぁー」

ハサミから抜け出したメリッサが横に掛けてくる

水馬も宙を駆けて戻ってくる


蟹の魔物は口からモアモアと泡を出してこちらを見ている


「…ぉこ?」

「ん?…うん、多分怒ってる、さっき殻をへこませてやったし」


ぺっぺっとメリッサが振り払っているのは、泡


「確かあいつはふぉれすときゃんさー…だっけ?」


ドロシーは名前なんて知らないとばかりにメリッサに着いた泡を突っついている


「…ぁあ、うん、どうでもいいね、とりあえず討伐したいけど、周りの泡が邪魔で引っ掻けない」


「よぁ?」

「……うん、弱ってる、でも火が効かないみたいで、風兎じゃさすがに火力不足じゃないか?」


「へへんっ、ドールメイクっ!」


ドロシーのドヤ顔がフードから少しだけ見える


水馬が光り、形を変える



「…っ」


その間に襲いかかってきた蟹のハサミをメリッサが受け止めた


メリッサから生えているようにうっすらと見える爪とハサミがギリギリと音を立てる


「氷の…蛇…ひょうだろー?…かわいくない…」


ヒュコォォォォッッ!


光が収まる前に、光からまるで、いやまさしく、『ブレス』が放たれた


そのブレスは蟹の正面に当たり、白い霜で覆い、パキパキと氷の結晶に変わっていく


バキャンッ


いつの間に移動していたのか

蟹よりも大きな水色の蛇が

凍りついた蟹を絞め砕いていた


その柔らかそうな見た目とは裏腹に蟹の殻が割れるのは一瞬だった


蟹は見るも無残な姿へと形を変えた


「おぉ……さむっ!」


メリッサもブレスの影響を多少受けたらしい




「という訳でフォレストキャンサーも討伐したってわけよ」


第六部隊長の部屋、本日は赤い髪の女性ではなくドロシー達と同じくらいの年齢の見た目の少女

副隊長バンシーだった


「この殻…だと、フォレストキャンサーじゃなくて、フォレストキャンサーかもしれませんね」


「…んぁ?」


今日の報告はメリッサ一人、ドロシーは帰ってくる途中で寝た、部屋に運ばれベットにポイだ


「どう違うんです?」


「森林か深林…ですけど、ハサミの力が強くなって、食べ物も変わるんです、そもそも大きさと凶暴性も変わりますし」


「全部じゃねーか、名前一緒にするなよ…」


「一緒じゃないですよ?」

「え?」

「え?」


「…まぁ調査書は出しておきますか、お疲れ様です、メリッサさん、ドロシーさんは別件で呼ばれそうですけど、まぁそれはそれとして」


「んぁー…?」

「もう大丈夫ですよ」

「おっけー!私も寝るわ!」


ブンブンと手をふって部隊長の部屋から出ていくメリッサ


「ふふっ、お疲れ様です」


本日も第六遊撃隊は大活躍だったってね


報告書

盗賊たちの大体の人数と報告の生存者数、後処理をした所での人数がある盗賊団だろう予測の人数と大体合致


土地の後処理は両方とも処理済み

泡も採取済み


蟹の泡に火の耐性

盗賊たちは泡を受けていた可能性有り


森の入ってすぐの場所で戦闘、水辺の辺り


ドロシーの氷の人形で討伐

メリッサ、特に何もせず

蟹の殻(氷付き)を持ってきた


炎撃隊の槍は回収済み

助けたから炎撃隊の方に報酬求む


1話のトカゲも亀も両方爬虫類ですね…

…うんっ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ