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第8話 毒骨少女の霊歌2

“私のために争わないで”

男女が入れ替わると

何故、成り立たないのだろう

「………私は死霊使い(ネクロマンサー)のスキャパ

 ………救援を感謝する」


スキャパは破れた法衣を腰に巻きながら秋を振り返った。

パレオを巻いたビキニに等しく、豊満な胸が揺れている。


秋は目のやり場に困り視線を逸らす。そうすると眉間に皺を寄せたジト目のバルブレアが目に入った。

なんだか機嫌の悪そうなオーラが立ち昇っている。


スキャパの回復をバルブレアに任せると、秋はオーク達に単身立ち向かい、これを退けてしまった。

やがて回復したスキャパは、秋を質問攻めにした。


何故、槍が折れないのか

何故、簡単にオーク達を倒せるのか

何故、自分を助けたのか


だが秋は曖昧な返事をするだけで全く要領を得ない返事しか返さない。

いや返せないと言っていいだろう。

鎧姿のバルブレアと違い、スキャパはほとんど裸に近い姿なのだ。免疫のない秋は混乱を極めていた。


「いい加減にしたらどうかね。

 まずは名を名乗り、礼を言うのが筋というものだろう」


不機嫌なバルブレアに正論を言われ、ようやく冒頭の返事となった訳だ。


「大体、死霊使い(ネクロマンサー)殿は、肌の露出を抑えるべきではないかね。

 それではレンバ殿も目のやり場に困ろうというものだ」


「………私が肉付き過多なのは知っている。骨に近づこうと努力しても何故か遠ざかる。

 (パラディン)が羨ましい」


「は!?」


「………冗談だ。自分の魅力は知っているが興味ない」


スキャパは両手で自分の胸を掴んで持ち上げバルブレアに見せつける。


「………自分が興味あるのは君だよレンバ」


バルブレアは無言で立ち上がり剣を抜いた。

怒りのオーラに驚いた秋は、急いでバルブレアを押しとどめる。


「まあまあ、落ち着いて。それよりさっき言ってた“世界の終わり”ってどういうことなんですか?

 それも世界の残滓って?」


秋の目を見詰めたままスキャパが口を開く。


「………君は“終わりのダンジョン”を知らないのか。

 『魔王が死に絶え大地が揺れるとき“終わりのダンジョン”への扉が開く』

 これは子供でも知っている言い伝え‥‥」


「世界が崩壊すると、魔力や怨念が何もない空間を彷徨い、

 やがてその果てにあるダンジョンに流れ込むそうだ。

 賢者は“魔力の吹き溜まり”とも“世界の残滓”とも言っていた」


バルブレアの知識にスキャパは意外そうな顔をした。


「………完全な脳筋だと思っていた。

 “終わりのダンジョン”には大いなる魔力と失われた世界の知識がある。

 死を超越した探究者はこの深淵を目指す」


「私が目指すのも同様だな。

 ここには、失われた聖典と真理があると聞く。

 聖騎士(パラディン)が求めるに相応しいとは思わんか」


「………色惚けている癖に」


「何を言うか!! 死霊使い(ネクロマンサー)殿こそレンバ殿にご執心ではないか」


「………自分のは色じゃない。知的好奇心」


「色仕掛けで攻めておいてよく言う」


これがハーレムというヤツなのだろうか。

なんか想像していたのと違ってあんまり楽しくないぞ。

なんでこんなに険悪なんだろう。


秋はオロオロしながら2人をなだめていた。


「………レンバは何を求めてここにいる?」


「いや、迷ってきただけだけど」


「それはおかしいぞレンバ殿。

 “終わりのダンジョン”に入るには条件があると言ったろう」


なんだかまた嫌な予感がする。


「前にも言ったが私は魔王を倒したパーティーの一員だ。

 つまり、世界の終わりを救った人間だ。

 死霊使い(ネクロマンサー)殿もおそらく、そうした経緯でここに来たのだろう?」


「………自分は勇者を倒してここに来た」


お前は魔王側の人間かよ。

裏切者じゃないか。


「あの、そもそも魔王とかいないんですけど・・・私の世界」


「………世界が終わりに瀕しないとここには来られない」


スキャパの声が冷たく響いた。

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