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第5話 生き残りの歌

出会いは最悪なほどいいらしい

身分差もあればあるほどいいらしい

でも魔法の効果は持続しないものなのだ

「ところでレンバ殿の槍だが・・・」


バランタインは、うっとりするように秋の稽古槍を見つめている。


「刃こそついておらぬが、オークの凶悪な武器をものともせず打ち破ってしまった。

 さぞや名のある槍なのであろう」


稽古槍を見詰めるバルブレアの視線は熱い。

キミは木と竹で出来た槍にどこまで見惚れているのか。


これ、練習用の自作品なんです。御免なさいね。

・・・そうは言えず、秋は話を合わせることにした。


「いえいえ、“銘”はついていませんよ。

 これは十字槍といって、460年もの昔から伝わる僧兵の得物(稽古用)なんです」


「僧兵! 公務をなす者と聞いておったが、

 御身は宗教騎士団に相当する組織の者なのか!

 ということは、聖騎士(パラディン)である私と同業ではないか!」


いや、バルブレアさんみたいにオーラなんて出ませんから。


バルブレアのテンションはマックス状態だ。

460年前となるともう神代のものではないか? 神が残したものだろう? などと盛り上がっている。

そのあまりの喜びように秋は誤解を埋める気にもなれず、なんだか帰りたい気持ちでいっぱいになっていた。





「バルブレアさん、情報共有をしたうえで、一度、整理したいのですが。

 ・・・いいですかね?」


「おお、レンバ殿! 私もそれがいいと思っていたところだ。」


「本当ですか?」


何でもハイテンションで反応するバルブレアに、一抹の不安を抱きつつも秋は、

この怪現象について一つ一つ確認し、情報を整理することにした。


「バルブレアさんは、魔王討伐を達成した勇者パーティーの一員なんですよね。

 いわば“一騎当千”の力があると考えていいでしょうか?」


「うむ。貴公の前で一騎当千というのははばかられるが、

 魔王城の戦いでは、パーティーの盾として、敵の卑劣な攻撃を受けきり、

 オーラで皆を支援するなど、まさに聖騎士としての役目を果たした」


バルブレアさんは敵を引き付けるタンク役、そして支援効果を発揮するバフ役という訳か。

実際、敵の攻撃は防御出来ていたしな。


「攻撃役は勇者と女格闘家、回復役が聖女という訳ですね」


「うむ。互いに協力することで、ようやく魔王を撃破することが出来た」


男女比はともかく、攻守のバランスは良さそうだ。

だけど、それがゴブリンに敢え無く全滅させられる。

一体、どんなゲームバランスなんだろう・・・。

というか、それなら僕はどういうレベル設定になっているんだ?


「バルブレアさんのレベルはお幾つでしょうか

 私たちの世界のゲームでは、強さをレベルで現す習慣があるのですが」


「おおレベルか! 鑑定士によると私も含め、パーティーは皆、7レベルと聞いたぞ」


魔王を倒して7レベルか。

○ラクエ(Ⅲ)なら5~6倍相当といったところだな。


「して、レンバ殿のレベルは幾つなのだ?

 あれだけの腕を持っているのだ。8・・・いや9。

 ひょっとすると2桁(神の領域)に達しているのではあるまいな」


バルブレアの目はさらに輝きを強めている。

あ、これダメな流れだ。


「・・・鑑定していないんです」


「なんと! 鑑定もせずに、ひたすら強さを追い求めるとは・・・。

 恐るべき御仁だな。いや感服した。

 しかし、鑑定していないと言われると余計に気になるな」


私も気になります。どんな結果になるのか怖いけど。

どこかの転生ものみたいにカンストしてたらどうしよう。


「レベルも気になるところですが、それより大切なことがあります。

 なんだか随分、我々は住む世界が違うように感じるのです」


「おお! 身分違いの恋物語のようだな!

 一番、燃える流れではないか!」


「・・・どこまでもポジティブですね。

 そこらへんも私とは随分異なりますが、そもそも私たちって全く違う世界から来たのではないかと思うのです。

 異世界って分かりますか?」


首を傾げるバルブレア。

どうも反応がおかしい。通じないのだろうか。


「変なことを言う御仁だな。

 貴公だけではない、私も異世界からこの地に来ている」


「え?」


「ここは“終わりのダンジョン”・・・正しくは“世界の終わりのダンジョン”。

 いわば既に滅びた世界の残滓だ。

 ここに辿りつく者はみな“異世界人”ということになる」


世界の終わり? 

不穏なキーワードが重く響いて、それ以上、言葉が出なかった。

どうも、魔王を倒した後の“やり込み要素”という訳ではないらしい。

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