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第37話 誕生歌

実力差は精神論では埋まらない

ましてや理論のない指導など論外だろう

だが精神論が支えになる例があることにも留意したい


そこは4つの塔と高い城壁に囲まれた城塞都市だ。レンガ造りの屋敷が立ち並び、かつて栄華を極めていたであろうことが伺える。というのも街は全て凍結しているからだ。“霜の巨人”達が居住しているが、元々住んでいるのか後から来たのかは分からない。


都市内、最奥は広大な庭園となっているが、ここも凍り付き、一面銀世界となっている。その木々の間に隠されるように“廟”のようなものがあった。そこで1体の“霜の巨人”が秋達を待ち構えていた。


『女神“バランタイン”と小さき者どもか』


鎧姿の“霜の巨人”が呼びかてきた。先程会ったのとは違う巨人のようだ。


『そこが“門”なのですね』


『そうだ。地下迷宮の最奥へと続いている。破滅につながる道ともなることを心しておくがいい』


『(ちょ、ちょっとあんなこと言ってるわよ?)』


不安がる女神は秋に助けを求めた。このやりとりも慣れたものだ。


「(いいから適当に返しとけ。なんかそれどころじゃない予感がする)」


『(適当って・・ほんといい加減な男ね・・・え?!)』


ズズーン・・・。


女神が返事を考えあぐねていると、“霜の巨人”は声をあげることもなく唐突に倒れた。

見ればいつの間にか門の前に黒衣の若者が立っていた。ステータス表示を警戒していた秋だったが、いきなり“到達者”が表示されている。


「破滅につながる? いやいや“真理”につながる道さ」


到達者は“霜の巨人”を見据え薄い笑みを浮かべていた。そして右手をあげると、地鳴りのような音を響かせ、門が開いていく。


「何をする気だ?」


「久々の再会になるけど、語り合うのは下層に降りてきてからの方がいいね」


秋の問いに応えず到達者は、まるで祈りをするような仕草で目を閉じた。


「さて、真理に至るには血が必要だよ。一体、ここにいる何人が最下層まで行けるかな?」


笑いながら到達者は姿を消していく。その後には大きな角を生やした悪魔“長老”の姿があった。


「おっと説明がまだだったね。右手の太いのが“龍の(かいな)”、左手の太いのが“火花の(こぶし)”だ。そして中央の小さいのには気をつけた方がいい。最も恐ろしいのが彼が“虚無の(たなごころ)”だ。これまでの長老と違って、直接“力”を与えてある。それも名前に(ちな)んだ能力なんだ。さあ抗ってみてくれ」


姿の見えない“到達者”の声と“長老”達の身も凍るような唸り声が周囲に響いた。あまりの迫力に、歴戦の探索者達の多くは身を引きつらせて固まってしまっている。到達者が言うように“虚無の掌”の威圧感は凄まじい。


「陣形を整えろ! 強敵だが僅か3体、恐るに足りん!」


それを打ち破ったのはバルブレアの勇ましい声と血がたぎるような聖騎士(パラディン)のオーラだ。バルブレアは威圧を意に介さず、まっすぐに“虚無の掌”を睨みつけている。


「そうだ! 力を合わせればどんな悪魔にも対抗できるぞ」


探索者達からも声があがった。雰囲気を変えたのはリーダー格のオーバンだった。


「「「「おおおおお」」」」


すぐさま戦士達が盾を掲げ前衛の守りを固める。バルブレアと老戦士オーバン、そして重騎士がそれぞれの“長老”の正面にあたり、戦士と格闘家が側面から攻撃を仕掛ける陣形をとった。魔法使はいつでも支援攻撃ができるよう詠唱を開始した。


「子供達は任せろ」


蓮華は荷物持ち(ポーター)達と子供達を囲み、被害が及ばないように後ろに下がっていく。それをサポートしているのは盗賊や魔物使いだ。一緒になって周辺警戒にあたっている。

まるで訓練された軍隊のようにきびきびとした作戦行動が進められるなか、秋と暗殺者(アサシン)は素早く“長老”達を(かわ)して門へと走っていた。“到達者”を逃さないためだ。


「さすが素早いな。確かヘーゼルさんだったか。狙いは敵の親玉か?」


「そちらこそ暗殺者(アサシン)と遜色ない足をしているとは驚いた。首魁の動きをおさえるのは常識だろう?」


黒髪の女暗殺者(アサシン)・ヘーゼルは高速で走りながら息も乱さず答える。言うほど驚いているようには見えない。だがその顔が驚きに変わる。力を込めてもどうやっても、門の中へ入れないのだ。


「これは?!」


「これは、あの長老達を倒さないと先には進めないということかな?」


「いやいや、貴殿は入っているだろう?」


そうなのだ。秋の身体は苦もなく門の内側へと入っていたが、暗殺者(アサシン)は中に入ることができないようだ。


「これは奥まで来いということなのか??」


ヘーゼルを置いてダンジョンを奥に進む秋。ヘーゼルは仕方なく秋が姿を消すのを見詰め、それから長老達の戦いへと戻っていった。





長老の前を阻むバルブレア、オーバン、重騎士。

正面には“龍の腕”、“火花の拳”の2体が立ちじりじりと近づいてくる。“虚無の掌”は一歩下がった位置から戦いの様子を伺っていた。


うおお!


重騎士が“龍の腕”に近寄る。すると振りかぶった右手が唸り、重騎士を盾ごと吹き飛ばした。


「ぎい?」


「なんだか拍子抜けとでも言いたそうな顔をしておるな。だが、これだけの力量であれば、それも無理なららぬことか」


バルブレアは敵の剛腕に感心しつつも、攻略の糸口を探していた。


「これはなかなかの強敵だな」


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