第3話 少女の行進曲2
強さとは比較から生まれるものだ。
弱い者ばかりを集めても強弱が生まれる。
だが比較がなければ強いも弱いも存在しえない。
勇者パーティーの全滅。
(一人生き残っているが)
魔王の死後に現れる“終わりのダンジョン”。
秋は複雑な表情で考えこんでいた。
とすると、魔王はさっきのゴブリンより弱いのか・・・。
何とも言えない表情になる秋。
だが問題はそこにあるのではない。
ともかくこの聖騎士をどうにかし、早々に元の世界に戻らねばならない。
「バルブレアさんが大変な事態になっているのは分かりました。
しかし僕は、ダンジョンを探索する冒険者ではありません。
大きな使命(道場の掃除)のある身です。
早急にこの場を離れなければならないのです」
「おお、そうであろう。そうであろう。
それだけの腕を持つ御身だ。さそ重大な使命を帯びているのであろう。
邪魔にはならないので、是非、私を同行させてもらいたい」
秋の脳裏には、騎士姿の女が道場に現れる様子が浮かんでいた。
“コスプレさん”が現れたと驚かれるだろう。
いや、血の気の多い先輩方だ。ワクワクして手合わせを願い出るんじゃないかな。
・・・これはいけない。
平穏な日常を至上とする秋にとって、どちらも困った事態となりそうだ。
「いや、しかし、同行するのは色々と危険で(僕の平穏が)」
「ここに一人で留まる以上に危険なことなどあるまい。
後生だから、私を連れていってはくれまいか」
バルブレアは秋にすがりつく。
確かに、騎士とは言え、女一人を置いていくのは不味いだろう。
「・・・安全なところまでですが、そうしましょう」
「おお! 連れて行ってくれるのか!」
目を輝かせるバルブレア。
いちいち表現が大袈裟だが、顔立ちの派手なバルブレアにはそれが良く似合ってる。
バルブレアの笑顔につられ、笑みを浮かべる秋。
なんとなくいい雰囲気になり、二人は道場に向かってダンジョンを戻っていった。
後には勇者達の死体が残されていたが、
何故か二人の頭からはそのことが抜け落ちていた。