第31話 トラップ2
切り札。本来は勝負を決する手段を意味しているが
現代では「効果的な手段」程度のものだろう
必殺技が「必殺」でない状況に似ている
老齢のリザードマン。神官はいぶかしむように秋を睨む。
「槍の男よ・・・交渉とは何だ」
「そこにある宝珠や間道具。もとは、石化された人達が持っていたものだな
剣や盾がないのは、冒険で使用するから一緒に石化されてしまっているんだろう?」
「何を言っているんだ?」
「何、お宝への興味は本能的なものなんだろうと思ってね。
お、そろそろチャージが終了したようだな神官さん?」
神官のステータスを見ればチャージが終了しており、“魔力2倍”の表示が出ている。
これは魔法攻撃をされると相当、怖いことになりそうだ。
「……見えるのか?」
「色々と見えるさ。だから先に能力を明かしたんだよ。
少しは交渉する気になるだろう?」
神官は油断なく秋を見詰めている。切り札が何かを推し量っている様子だ。
「幾ら貴様に力があろうと、あの方の前では無力じゃ」
「そうなんだよ。教皇と呼ばれてるんだっけ?
一度、しこたま力を吸われて、えらい目にあったよ」
「なら逆らうことの愚かしさが分かるじゃろう」
「うーん。逆らうってのはどうかなあ。
実験に価値を感じる限りは、手を出さないようにも感じるんだよね」
「わしらはそんな危険な船に乗る気はない」
「でも、石化している財宝には興味があるだろう?」
神官は再び押し黙った。財宝には目がない。これは抗えない本能とも言える。実際、鍾乳洞は、名剣や鎧、盾など、伝説級のアイテムが集まる宝物殿のようになっていた。これはたまらない申し出でもある。
「石化を解除する白魔法はここにはない。それは分かるよ。強敵を倒してきたお蔭かレベルは鰻昇り。遂に、広くステータスを捜索できるまでになったんだ」
「槍の男よ、それがブラフか本当かは分からぬ。だが、結論はそうだと私にも分かる。
何故なら、我々リザードマンをここに留める有効な手法だからだ。あの方はわざと石化解除能力を付与しないのじゃろう。上の階層にも下の階層にも高位の白魔法はおそらく存在させない」
「だが、プーカみたいに凄い能力を持った子供がいるよね。
子供は戦闘に巻き込みたくない。神官さんとも戦いたいとは思っていない」
秋はニヤリと笑い、目覚めたばかりのプーカを見る。やはり“暗示”は表示されていない。
神官も戦う気が失せたのか、魔力チャージが減ってきている。
「神官さん、ここには“時を操る魔法”が存在するよね。
あの石化を、時を戻すことで解除したい」
「・・・・。
“時の魔法”が存在するのは事実だ。だが、あの方がそれを放置している意味が分かるか? つまりは常命の者に使いこなせる魔法ではないからじゃ。発動にはもっと大いなる力が必要なんじゃ」
秋は手にもつ槍を見詰め、ゆっくりと記憶を辿っていく。
そう、レベルアップとともに、様々な記憶も戻ってきていた。失われていた事実が色々と見えてくる。
「もう一枚、切り札があるんだ」
秋は能力を稽古槍へと向けた。そこに表示されるのは、“非破壊属性”“抵抗値上昇”“基本能力値上昇”・・・など、まさに神の加護と言えるステータスの数々だ。
そして末尾には、記憶通りの表示があった。
・・・・“女神退避中”
「さて、働いてもらいましょうか」




