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閑話 バルブレア4


「あ……」


ギィイイン!


勇者の剣が魔王を切り裂いた。その黒い巨体に亀裂が広がっていく。


『ミ、見事ダ……

 ダガ、一歩、遅カッタナ勇者ヨ。余ノ術ハ既ニ発動シタ。貴様ラモコノ世界ゴト滅ブ……余ハ討チ倒サレタガ負ケデハナイ…』


「ば、馬鹿な?!」


「馬鹿はおめーだよ! だから切るなってあれ程、言ったろこの脳筋! 魔王殺したら誰が禁術を止めれんだよ?!」


「……倒せばいいんだと思っていた。ど、どうしよう?!」


魔王の発動した魔法は、次々と新たな魔方陣を生み出し、その魔法陣がさらに多くの魔法陣を作り出し、大地へとどんどん広がっていく。現代人が見るならば、まるで核分裂のCGモデルを見るようだと言うだろう。


「古代の禁術か。最期に伝説を見ることが出来たのを何と言うべきかのう」


「せ、世界が……終わっちまう」


神聖な面持ちの賢者。そして先程まで怒り狂っていた女格闘家は、力が抜けたのか膝を大地につき涙を浮かべていた。勇者もバルブレアも言葉がない。

その時、ゆらりと空間に歪みのようなものが起こるのを聖女が感じた。


「……あ、あれはなんでしょう? 何かがひっかかるような…」


突然、魔王の死体の近くに扉のようなものが出現した。その扉はよく見ると、物質ではなく魔法文字が集まってできた魔法陣の一種のようにも見えた。

聖女は眉をひそめその文字を見詰める。古代魔法に詳しい聖女であったが、一度も見たことのないもので、文字であり人の表情のようでもあった。


「魔王が死に絶え大地が揺れるとき“終わりのダンジョン”への扉が開く」


バルブレアは謳うようにその一説を口にした。代々伝えられてきた“終わりのダンジョン”にまつわる一節である。


「ほう。それは“終わりのダンジョン”の唄じゃな。そは“魔力の吹き溜まり”、そは“世界の残滓”とも謳われるのう」


「賢者よ。私も聞いたことがあります。そこには大いなる真理があると」


「こ、これを止められるってのか聖女、賢者?!」


女格闘家の声に複雑な表情を浮かべ、賢者は押し黙る。

“終わりのダンジョン”を前に勇者も聖女も怯んでいる。

だが、バルブレアは臆することなく、その扉に手をかけた。


「なら行くしかあるまい。座して滅びを迎える訳にもいかぬ。それに、私の勘が告げるのだ、私の望む未来がこの扉の奥に待っていると」


ためらうことなく扉を開くバルブレア。たちまち光の本流に包まれその姿が消える。光はバルブレアを包むだけではなく、さらに広がっていき勇者、聖女、女格闘家までも飲み込み、やがて扉ごと消えていった。

後には何もない地面が広がるのみだ。


「行ってしもうたか。だが聖騎士(パラディン)よ“そこは人の生きるところに在らず”じゃよ」


転移魔法で光を回避した賢者は、禁術が星を包み込む様をただただ、じっと見詰めていた。


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