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第24話 結婚行進曲

“手を出す”“手を出さない”という判断は難しい

自分にその能力があるなら尚更だ

むしろ能力などない方がいいとも言える

まずは最初の組み合わせを試すことになった。秋とバルブレアが前衛となり敵を釘付けにする。そこを後衛のスキャパとプルトニーが叩くという戦術だ。最悪、背後を突かれた際は、スキャパがスケルトンで疑似的に盾役(タンク)を務め、急場を凌ぐ。


「まずはやってみましょうか。毎回、“苦痛”のような強敵じゃない訳だし」


「レンバ殿。あの爆発するフェティッシュの例もあるので、気は抜けないぞ」


バルブレアの言うことにも一理ある。RPGではボス戦より通常の敵を相手にしたときの方があっけなく死亡することが多い。しかもこの“終わりのダンジョン”では教会で蘇ったりすることはなく、むしろ敵が使役するゾンビとして蘇る恐れがある。


「……前方に敵影3つ。識別はオーク」


「ふむ。オークはオークじゃが、これもまた大物じゃな」


砂丘の向こうから武装したオークが近づいてくる。だが普通のオークではない。一面砂の世界なので、比較物がないことから最初は分かりにくかったが、プルトニーの言う通り桁違いに大きい。


「これは背丈で倍はあるかの?」


「……オークキングとオークジェネラル」


GHOOOOOOOOO!!!


スキャパの声に合わせるように、オークキングから咆哮が発せられる。物凄い声量だ。足元も揺れ動き、バランスをとるのに大変なぐらいだ。秋が振り返ると、スキャパもプルトニーも状態異常を起こしているようだ。何やらモヤモヤとしたものが見える。


え? 見える?

秋は不思議な感覚が備わっていることに気付いた。


聖なる零域(ホーリーフリーズ)


バルブレアの新しいオーラが輝くと、あたりは霜が降りたかのように凍り付き、敵の動きを奪っていく。オークキング達はバルブレアのオーラの影響だと見定め、ゆっくりながらバルブレアに武器を振るおうと近づいてきた。


「範囲内の敵の自由を奪うオーラか。見事なものだな」


「……一体が後ろに下がった。後方支援するようだ」


「小賢しい、まずはそいつから炙ってくれる。


プルトニーが呪文を唱えると、オーラの範囲外に下がったオークジェネラルの前に、多頭炎竜(ヒュドラ)が召喚される。慌ててオークジェネラルは盾で炎を防ごうとするが、その手には何体ものスケルトンがからみついていた。


「ほう“同志”殿よ、いいフォローではないか。それでは、心置きなく焼かれよ醜きオークよ」


多頭炎竜(ヒュドラ)が次々と炎の玉を吐き出し、オークジェネラルが炙られていく。スケルトンも巻き込まれそうなものだが、プルトニーは上手くコントロールして炎を吐かせていた。


GHUHOOOOO!!!


オークキングが巨大な斧をバルブレアに振るう。だがその動きは緩慢で冴えがない。余裕で回避しつつバルブレアは、その登頂に雷を落としてみせた。ちなみにもう一体は秋が横合いから槍をつき、動きを封じている。


「おお! 相手が遅くなっているので、これは当てやすいぞレンバ殿」


「いや、こっちまで寒くなるので、向こうでやって欲しいですね。しかし、このオーラはよく効いてますね。オークの動きが3割近く削られてますよ」


「?」


バルブレアは疑問を感じたが、目の前のオークキングに集中することにした。

ステータスダウンが見えるようになった秋は、自分の言うことが理解されていないのを確認しつつ、オークジェネラルの腿を突いて転倒させ、喉、頭部に順に槍を突き入れ昏倒させた。


残るはオークキング一体のみ。そう思った瞬間、オークから異様なオーラが立ち昇るのが見えた。何やらオークの数値が上がっていく。

ステータス上昇? いや、力を溜めているのか?

秋が精確に判断しようと目を凝らした瞬間、オークキングの斧が物凄い勢いで眼前に振り下ろされた。


GHAAAANNNNNNN!!!!!


咄嗟に回避する秋とバルブレア。だが、地鳴りのような轟音と共に足元の石畳は崩れ、身体が落ちていく。

危険を感じつつ秋は稽古槍を握りしめ、落下しながらも周囲の様子を掴もうとしていた。


「レンバ殿ーー!!」


バルブレアの叫びが聞こえる。声は反響するが、オーラがあるので位置は把握しやすかった。

秋は周囲の岩を槍で突き、反動でバルブレアの方に飛ぶ。必死な形相のバルブレアの顔が近づいてきた。自由ではない自由落下のなか、何が出来るかは分からないが、右手は槍の動くままにまかせ、左手でバルブレアを抱き寄せた。


「ぃいいいえええい!!!」


その後は真っ暗で何も見えなくなった。





「こ、これは?! たかがオークがこれ程の力を出すとは…」


プルトニーは驚きの目をオークキングに向けた。眼前には巨大な穴が口を開いている。砂は飛び散り、ダンジョンを構成する石壁のようなものが露出していた。その中心は斧で切り裂かれ、見えないぐらい下まで続いている。


「……2人の姿が見えない。

 下層に落ちたのかも知れない。すぐ救出に向かわねば」


「まて」


飛び降りようとするスキャパをプルトニーが止める。その視線の先にはオークキングの目があった。


GRRRRRR!!!


「ほれ、唸っておるじゃろ。下手に飛び出したら真っ二つじゃぞ。ここはじっくり我らであやつを屠らねばなるまいて」


「……時間をかけるつもりはない。

 2人がいないなら全力を出す」


スキャパは表情を変えオークキングを睨む。その瞳は赤く燃え、身体の魔力が一段と増しているようだ。


「何で隠しておるのかは知らぬが“同志”殿は面倒じゃのう。せっかくじゃし、後で聞かせてもらおうか」


「……骨の槍(ボーンスピア)


スキャパはそれに答えず、倒れているオークジェネラルに次々と骨の槍(ボーンスピア)を打ち込む。


死体蘇生(レイズ)


そうすると2体のオークジェネラルは黒いゾンビのような姿となって蘇った。虚ろな双眸をオークキングに向け、右手の斧を振り下ろす。


「おう怖い怖い。本来の死霊使い(ネクロマンサー)の姿じゃな。いやお仲間の姿といった方が良いかの」


不意を突かれよろめくオークキング。その足元にはスケルトンが亡者のように群がり自由を奪う。さらにスキャパは骨の槍(ボーンスピア)を次々と打ち込んでいった。


「なかなかにして固いのう。さすがは階層を割る大物じゃ。妾も手伝おうかのう?」


「……不要。砂の中に面白いものを見つけた。

 死体蘇生(レイズ)


GHUAOOOO!


長大な黒い影が起き上がった。のたうつミミズのような巨体、堅牢な皮膚。それは砂の竜と呼ばれる魔獣“サンドワーム”の死骸だった。


「これはえらいもんを見つけたのう。妾は出番なしか」


オークキングが大きいといっても所詮は人の倍ほどの身長だ。これに対しサンドワームは25mほどもある。長いその身をオークキングを巻きつけるとサンドワームはギリギリとしめあげていく。


「ふむ」


ため息のようなプルトニーの声とともにオークキングはジュースとなって息絶えた。スキャパは何を思うのか深紅の瞳を燃やしつつ、その様子を眺めていた。

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