表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/54

第23話 砂嵐の回顧3

理解はできなくても納得のいく言葉がある

当然と思いつつも納得できない言葉がある

考えと思いの違いを感じる瞬間でもある

“苦痛”を倒したことで、レベルが上がったのか、秋は身体が充実する感覚を味わっていた。試しに槍を振るってみると軽い。槍自体の重量は変わらないが、自分の手足のように感じられる。身に着けた技の感覚は残念ながら戻っていないが、身体自体はもう一息といったところか。“さて”と一呼吸置いてから秋はプルトニーを振り返った。とても高揚しているが気分は全く晴れない。


「魔王は倒す。しかし理由は記憶にないと」


「うむ」


「そしてパーティーを組むと」


「そうじゃ。見たところ汝らは最下層をめざしておるのじゃろう?

 ならば大物を倒し、レベルアップを続けるのが必定じゃ」


「記憶がないことはいいんですか?」


「うむ。記憶があろうとなかろうと、魔王をたいらげることに違いはなさそうじゃ。精々、狩りを楽しみたいと思うておる」


実際、その通りだった。バルブレアもスキャパも下層を目指している。秋は“終わりのダンジョン”から元の世界に戻るのが目的だったが、その方法が分からない。手がかりは真理に到達したとかいう自称“到達者”ぐらいだ。これがRPGの世界観で作られたダンジョンなら、どうせクエストをクリアしなければ脱出は叶わないだろう。秋はレベルアップの必要性を感じていた。


「……現状の最大火力は“同志”の魔法だ。

 これなしに魔王クラスに対抗するには相当のレベルアップが必要」


スキャパは冷静に現状を分析する。ここは協戦するしかないのだろう。スキャパ自身はプルトニーの参加を気に入ってはいないらしいが、そこは大人なようで折り合いをつけることに苦はないようだ。だが、精神的に子供なバルブレアは気に入らないのを態度で現し、しきりにプルトニーが秋に近づかないよう阻止している。長命であるエルフであり、しかも成人しているにも関わらず、精神年齢はほとんど小中学生だ。


「“変態”は妾を“淫乱”に近づけたくなさそうじゃが、それは無駄な努力じゃぞ」


「な、何故だ?!」


「その男は妾に興味を持っておるようじゃ。これはかなりの年上好みと見たぞ。汝のようなお子様は眼中になさそうじゃ」


「そ、そうなのかレンバ殿~?!」


泣きそうな顔で秋を振り返るバルブレア。大きな瞳は涙でウルウルし“私がもっと年長であれば”と喚いている。お前より年上って一体、何歳だよと秋はうんざりしながら2人をじとっと見つめた。


「じゃ、魔族とエルフの年齢の話にしますけど、いいですか?」


「「それはよそう(よすのじゃ)」」


2人はハモりながら断言した。年齢(とし)の話を自分らで進めておいて“年齢を訊かれるのは嫌”とはどういうことか。1000歳が2000歳になったところで大差ないだろうに。二人の子供っぽさにため息をつく秋であった。





「……それより役割分担だ。

 “同志”の考えを聞かせてもらおう」


スキャパは不満を。(にじ)ませつつ話題を変えた。実際、紹介するスケルトンが通用しなくなっているのを肌で感じている。せっかく身に着けた槍の技術だが、脆過ぎてどうしようもない。もっと頑丈な手下か別の手段が必要だった。


「汝らの今の能力を確認するべきじゃ。“淫乱”は槍で間合いがとれるとは言え、基本的には近接攻撃型じゃ。 攻撃役(アタッカー)盾役(タンク)しか務まらん。逆に妾は遠距離攻撃型じゃ、攻撃力そのものは高いと自負しておるが、近接戦闘はできぬ。攻撃役(アタッカー)でも 盾役(タンク)でも良いが、前衛がおらんと即死じゃ。で“変態”は、遠距離攻撃役(アタッカー)もできるが所詮(しょせん)は真似事じゃ。妾とは火力が比べようもない。盾役(タンク)に徹した方が得策じゃろう。残るは“同志”は・・・これが難問じゃ」


スキャパは一息に持論を披露し、そこで顎に手をやり小首を傾げる。少女の仕草なら誰もがきゅんとしそうだ。推定1000歳を超えていそうだが。


「これまで“同志”はスケルトンを操ることで、疑似的に盾役(タンク)を果たしておったが、もはや通用するレベルではない。“淫乱”を槍の盾と考えれば既に盾役(タンク)は足りておる。ここは死霊使い(ネクロマンサー)の奥義を尽くして攻撃役(アタッカー)になるべきじゃろう。あくまで盾役(タンク)にこだわるなら、スケルトンを切り捨て他の頑強な何かを召喚せねばなるまいて」


死霊使い(ネクロマンサー)の召喚術って他は何があるんですか?」


「……ゴーレムもしくは倒した死体だ。

 だがいずれも美学に反する。骨こそ至上」


思わず秋とバルブレアは顔を見合わせた。スキャパの感性は独特だ。だが、プルトニーはこの答えを予想していたかのように、平然としていた。


「じゃろうな。では“同志”は引き続きスケルトンを使いつつ、ダメージの大きい死霊術を行使せねばならん」


「……理解している。

 だが、レベルがあともう少し届かない」


「どんな術を使うんです?


死体媒介爆破コープスエクスプロージョン。神に背く大技じゃよ。なあ“同志”よ」


思わせぶりな視線をスキャパに送るプルトニー。習得の決意は決めているようだ。本来は骨だけでこの“終わりのダンジョン”を制覇したかったのだろう。スキャパは表情には出さないが、悔しさを手の震えに滲ませていた。


「む、死体媒介爆破コープスエクスプロージョン? 聞くからに生を冒涜するかのような魔法名だな」


「……止めるか?」


「いや、相性のいいオーラを教えてくれ。冒涜より強敵に突破だ。このダンジョンを制覇してから幾らでも懺悔をしよう」


バルブレアはスキャパに決意の眼差しを向けた。これには3人とも意外な印象を受けるのだった。


「ではまずはスキャパさんのレベル上げですね。ゆっくりダンジョンを進み、フォーメーションを試しましょう」


秋自信、試したいことがあった。実は攻撃役(アタッカー)とか盾役(タンク)とか言われてもしっくりときていない。もっと自分なりの戦闘手法があるのではないかと感じていた。


「おお頼もしいぞレンバ殿」


「ほほう“淫乱”がリーダーシップを発揮するのか。それは楽しみじゃな」


「リーダーぶるつもりはありません。悪いのですがプルトニーさんの案に完全同意した訳ではないのです。皆さんの説明はしっくりくるのですが、自分は何か違うような気がしてなりません」


秋は槍を見詰めつつ3人に応える。秋の言葉に呼応するかのように稽古槍が輝いたようにも見える。


「……気付いてないところで吸われている。

 そんな気がする」


スキャパは誰に言うともな不安になる言葉を口にした。秋は、スキャパの言葉の意味が分からなかったが、その言葉が腑に落ちるような気がしていた。


「僕もそんな気がします。気はするのですが答えはありません。戦いながら見つけましょう」


秋の言葉に頼もしさを感じつつ、バルブレア、スキャパ、プルトニーはダンジョンの奥を見詰め、歩を進めていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ