おばあちゃんっ子の僕へ
こんにちは。
僕は未来の君だ。
今日は君に知らせたいことがあって、
会いにきたんだ。
―――どうやってきたか?って?
・・・そんなことはいいから
ばあちゃんが
2015年の三月に亡くなったよ。
―――死んだところ?
・・・ちゃんとは見ていない。
―――死因?
・・・肺炎かなぁ。
―――なんで死んだか?
・・・知りたいの?
『お婆ちゃんっこ』の君は
今、12歳。
いっちょまえに、
反抗期の入口に立っている君は、
君のことを
おじさんの名前で呼ぶ
ばあちゃんにイライラしているよね?
今は認知症と呼ぶけど、
確かにばあちゃんはボケているよ。
でも、
君が見ているばあちゃんは、
ずっとマシなんだ。
むしろ年相応なのかもしれない。
君が想像しているより、
ずっと、
ずっとずっと、
ばあちゃんは
ばあちゃんじゃなくなっていくんだ。
機械のように壊れていくんだ。
―――僕が何したかって?
・・・何もしていないさ。
今の僕が27歳。
ばあちゃんが死ぬまで15年間。
僕は何もしていないさ。
―――ひどい?
・・・ちがう、僕は大人になったんだ。
じゃあ、
君は何かばあちゃんにしてきたかい?
君のことを
おじさんの名前で呼ぶばあちゃんに、
「俺の名前はもときやら!!」
って怒鳴って、
ばあちゃんを泣かしたのは
どこのどいつだい?
・・・いいかい?
大人になっていく上で
必ず付きまとうのが
『諦め』
だ。
これからばあちゃんがどうなっていくのか、
12歳の何も知らない君に教えてあげる。
そうやって現実を身にまとって
君も
僕みたいな大人になるんだ。
前向きっていうのは、
現実を見ないことじゃない。
現実を見た上で、
どう行動するかだ。
といっても
僕もどこまで覚えているかあやふやだけどね。