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剣戟の幻想物語 3 栄光の舞台  作者: やきたらこ
二章~剣閃の合間の休息~
9/30

2.

「西のみやこの大会?」

 聞き返す父はキョトンとした表情を浮かべていた。

「コイツが出たいっていうからさ、俺も出ようかなと」

 隣に座るアイゼンを指し、パンをかじった。

 すると、我が可愛い妹から冷たい質問が返ってきた。

「ふ〜ん、お兄ちゃんって強いの?」

 咄嗟の事で、俺は答えることが出来なかった。しかし、シエルがすぐさま答えた。

「すっごく強いんだよ。この前なんか、あたしが誘拐されそうになった時に助けに来てくれたんだから」

 答えを聞いたイリナは、スプーンでスープを口に運びつつ頷いた。

「そっか…………ところでさ、お兄ちゃんとシエルさんって恋人さんなの?」


 目をキラキラ輝かせたイリナ。

 俺とシエルは言葉に詰まった。

 苦笑いを浮かべる俺とシエルは互いに目を合わせる。

 答えたのは、なぜか誇らしげなアイゼンだった。

「そりゃもう、相思相愛のラブラブカップルだぜ」

 イリナは頬を紅潮させ、更に目を輝かせる。

「素敵。私もそんな人出来ないかな〜」


 一人妄想にふけっている妹を置いて、話を戻す。

「それより父さん、移動手段だけど」

 言われた父はゆっくりと首を横に振った。

「ウチじゃ金は出せないから、ラクダなんて無理だぞ」

「そう、だよな」

 俺は俯いてしまう。分かってた事なのだがやはり実際に言われると苦いものがある。

「ラクダ? 馬じゃないの?」

 質問したのはシエルだった。

 父が丁寧に答えた。

「大会がある西の都と、この街の間には小さな砂漠が広がっているんだ。だから砂漠越えしなきゃならないんだよ」

 答えを聞いたシエルは納得した様子だった。

「大変そう」

 苦笑いしたシエル。

「実際そうでもないんだ」

 俺が付け足す。

「砂漠なんてただ単に広いだけ。魔獣なんて滅多に出ないし、水と食料を十分持っていけば大丈夫」

「そんなものなのかな」

 シエルは木製のコップに口をつけた。





 食器を片付ける母が俺に話しかけた。

「シエルちゃんの事、どう思ってるんだい?」

 皿洗いしながら質問を投げかける母。

「どうって…………なにがなんでも守りたい」

 語尾の方は小さくなってしまった。胸にあるのは妙な締めつけ感。

「そう。大切にしておやりよ」

「うん」

 俺はしっかりと頷いた。

 母は皿洗いの手を止め、何か思い出したかのような表情で振り返る。

「そうそう、西の都ではここ最近謎の誘拐事件が頻発してるそうだよ。なんでも狙うのは男女問わず容姿端麗な者ばかりだとか」

「分かった。気をつけとくよ」

 母は軽い微笑みを俺に向けた後皿洗いに集中し始めていた。

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