1.
「始まったな……」
俺はシエルに聞こえるように小さく呟いた。
「アイゼンは相変わらずだね。アルヤも頑張ってる」
彼女の言う通り、アイゼンは先ほどの試合と同様に最初から飛ばし気味だが。アルヤは堅実に進めるらしく、他の選手の出方を伺ってる。
「さっきの試合のようにはいかないみたいだな」
俺の感想は的を突いていた。
前回の試合よりも格段に少ない人数。そこには厳選された強者が集まるという意味がある。
今もアイゼンは三人の選手を相手取っているが中々苦戦気味のようだ。
「このままだとスタミナが尽きる感じだよね」
シエルは言うが、俺はアイゼンに何か秘策があると信じている。いや信じていたい。
しかし今も鼻先ギリギリで剣を避ける彼を見ていると心配でたまらない。
「あ、アルヤが戦ってる」
隣の少女に教えられ、俺は棒術使い隻眼ターバン少女へと視線を移した。
視線の先に捉えたのはこちらに手をかざす細身の男。
――魔法術――
感覚で感じ、右方向へと跳ぶアルヤ。
アルヤが立っていた場所へと氷の矢が降り注ぐ。
「シッ――――」
短く息を吐き、魔法術士との距離を詰めるべく駆ける。
深い前傾姿勢のまま棒を構えるアルヤ。彼女が捉えたのは、術式詠唱を行う魔法術士の姿。
術式詠唱を完了させた魔法術士の手が大きく開く。
アルヤは感覚で動いた。
両手で持った棒を地面へと突き立て、急停止をかける。
案の定、アルヤの進行方向に火柱が上がった。
ここまで魔法術を回避してのけた彼女の感覚には目を見張るものがあるが、彼女の表情はピクリとも動かない。
「この距離なら――――」
彼女は全て言い終える間もなく、跳躍した。
数秒の滞空の間に、魔法術士は詠唱を開始するが間に合わない。
アルヤの着地。直後、長棒による渾身のなぎ払いが炸裂した。
魔法術士は大きく横に飛ばされ、数回のバウンドの後体を動かすことは無かった。
一仕事終え、体を起こすアルヤ・マークフェイ。そんな彼女へ複数の視線が集まる。その中に身の丈を越える槌を担いだ褐色の少女の姿があった。
久々に魔法術が登場しました。魔法もしっかりと使いたいと思い、登場させてます。
大会規定は“なんでもあり”なので魔法術もありですよ?
ほとんどの参加者は突っ込むだけの脳筋ですけどね。(アイゼンさんこっち見ないで!!)




