2.
肉薄する剣を、体を後ろに反らして回避。無防備な顎へ、大盾で一撃を食らわせる。
選手は敢え無く倒れた。
アイゼンへ迫る挑戦者の連撃が途切れた。
「…………どうした? ……来いよ…………」
息切れしつつ、アイゼンは人数も少なくなってきた選手たちに告げた。
しかし、選手たちは足元でジリッと音を鳴らすだけで一定の距離を保っている。
「……こっちから…………行くか? …………………………」
アイゼンが長刀を構えた時、一人の男が名乗りをあげた。
「俺が闘ろう」
男は筋肉質の体に、面積の少ないアーマー。得物はアイゼンと似た感じだ。肌もテカり、黒髪もボサボサ、一言で表せば汗臭い印象だった。
無言で剣を構える両者。
周りの選手たちも固唾を呑んで見守る。
先に動いたのはアイゼンだった。
地面を蹴り、大盾を前に突き出し勢い良く駆け出す。
対する男は剣を振りかぶっただけだった。
「もらった!!」
振り下ろされる白刃。
しかしアイゼンはそれを大盾で簡単に受け止めた。
「甘いぜ!!」
右手に握られた長刀が閃く。
しかしアイゼンの刃が男を斬り刻むことは無かった。
アイゼンのボディに、男の盾が突き刺さる。
鈍い感触と共に、アイゼンは数歩下がる。
「先ほどまでの威勢はどうした?」
薄笑いを浮かべる男。右手の剣を軽く回し、リズムよく体を弾ませている。
「……クソッタレ………………」
ボソリと呟き、アイゼンは俯き、獰猛な笑みを浮かべた。
直後、彼の動きが変わった。
アイゼンが突如駆け出し、その一撃を男に見舞わした。
大きく弾かれ、剣でかろうじて追撃を躱す男。
続く戦闘は一方的なものだった。あらゆる方向から迫る凶刃を防ぐのに精一杯の男は防戦一方だ。とても攻勢に転じる隙は無い。
アイゼンの豹変の様子を観客席から見ていた俺は、食い入る様に見つめていた。
「凄い。あいつ、ここまで」
シエルの方も、驚きに目を見開いていた。
「エルルの人たちってみんなこんな感じなの?」
戦闘民族エルル族――かつて、帝国に滅ぼされた傭兵業を営む部族。強靭な身体能力は遺伝し、最強とも最恐とも呼ばれる人々だ。アイゼンはエルルの生き残りだった。
「あっ!」
シエルの喉から思わず声が漏れた。
アイゼンの猛攻に耐えられず、男は装備を弾かれていた。今の彼は丸腰だった。
鬼神の如き力を見せつけた彼は剣先を男の鼻先に突きつけた。
その表情ははっきり見えないが、いつもの彼ではないと容易に想像出来た。
アイゼンは剣先を他の選手に向ける。誰もが鬼神の如き彼に近寄ろうとしない。
「決まったな。あれ見せられたら当然の反応だよ。俺だって恐い」
「敵じゃなくてよかったって言葉が、ここまで重いなんて思ってなかったよ」
自然と握っていた拳に嫌な汗が滲むのを感じた。
「お、俺は降りるぞ。あんなのと闘りあったら殺されかけない」
「俺も降参だ」
「悔しいが、俺も」
と、次々に武器を落としていく選手たち。
その様子を見て取ったアイゼンはふぅっと息を吐いた。
(残りは少ない。もう一戦しそうだ)
案の定、後ろから迫る気配が一つ。振り返り、その攻撃を大盾で防いだ。
甲高い音。
小さい刃を振るったのは一人の十三、四の少年だった。その表情は必死の一言。
「お前を倒して、俺が決勝に進む!!」
勇敢だが、その勇気は勇気でなく無謀と呼ぶのだ。しかし、身の程知らずだが気持ちの入った一撃はアイゼンの大盾を弾くのに十分な力があった。
「このっ!!」
アイゼンは大盾を投げた。自由になった左手で少年の腹部へ重い一撃。
「……ぐ、へぁ……………」
少し、口から水分が飛び散る少年。少しの距離を飛ばされ、転がった。うつ伏せの彼は起きない。
「手加減出来なかった。許せよ少年」
大盾を拾いあげた時、同時に選手を数えた。
四人だった。
その時、大銅鑼が鳴った。
「終わった」
「お疲れだな、アイゼン。楽勝だったかな?」
「多分、かなり疲れてると思う。連戦だったし」
俺はシエルと会話を交わしつつ、会場から見えなくなるアイゼンを見送った。
アイゼンさん無双となってしまいました(笑)
次の戦闘では彼に対抗出来るメンツは出るかな?
乞うご期待!!(頑張ってみます。。。。)




