1.
選手たちが待機している部屋。
その中でアイゼンは“窓”に映る一人の少女を見ていた。
アルヤ・マークフェイ。綺麗な緑のショートヘアが特徴的な隻眼ターバン少女だ。白っぽいマントは土煙で汚れ、はためくその姿は一陣の風のよう。まるで嵐のように長棒を奮い、次々と選手たちをなぎ倒していった。
(エルル族なら当然っちゃ当然か…………………………)
静かに目を伏せ、試合終了の大銅鑼を聞いた。
決勝進出者の中にアルヤの名前があったのを聞きながらアイゼンは剣を取り、立ち上がった。
「アルヤは無事に決勝に進んだようだな」
ターバン少女を確認し、買ってきた干し肉を隣の紺色の髪の少女に手渡した。
ありがと、と言って少女はカプリと噛み付いた。
中々歯ごたえのある干し肉―有名な家畜の物―を咀嚼しながらシエルは感想を口にした。
「凄かったんだから、リアンは見てなくて残念だったね。もう、次々にあの棒で倒していったんだから」
身振り手振りを加えて大袈裟に表現するシエル。
「はいはい、お前が頼んだから見れなかったんじゃないか。別に決勝で見れるからいいけど」
「あ、そっか。ホントありがとね」
言って俺の右腕に抱きつくシエル。恥ずかしい気持ち半分嬉しい気持ち半分の俺は話を逸らした。
「ほら、次のアイゼンの試合が始まるぞ」
促され、シエルは眼下の決闘場(今は乱闘場)を見た。俺もシエルと一緒に見る。
ターバン少女と目があったので、手を降ったシエル。ペコリとお辞儀しただけだったが、意思は通じ合っているようだ。
俺は次の出場者が、色々な方向から一点へ向かって円状に並ぶのを見て取った。その中の金色短髪のお調子者の存在も。
「あれ、アイゼンだ」
軽く指差してシエルに教えた。
シエルはクスリと笑い、干し肉をもう一口。
「いつもと変わらないね。というかいつもより楽しそう」
「アイツだけ浮いてんじゃねぇのか?」
冗談の応酬は途中で遮られた。
大きな音、もとい金属の轟音が響く。
試合開始の大銅鑼の音だ。
「始まったな………………………」
いきなり動いたのはアイゼン・グリッダだ。混戦の中で戦闘を避けるセオリーを無視した動きだった。
「やっぱりな……」
俺は溜め息を一つ。
「やっぱりって?」
聞くシエルに、俺は懇切丁寧に説明した。
「アイゼン・グリッダってぇ奴はじっとしてられないんだよ、分かる? つまり――」
「逃げながらとかは苦手ってこと?」
言葉の続きをシエルに持っていかれた俺はシエルに肯定する。
「そゆこと」
俺はニッとシエルに微笑み、視線をアイゼンへ移した。
相変わらずの暴れっぷりだった。
迫り来る出場者たちを蹴散らし、混戦の真ん中へと進んでいく。
そんなアイゼンを見た観客は大興奮。歓声がどっと湧き上がり、会場全体を包む。
「ホント楽しそうだよな」
「うん……………………」




