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間章

 燃え盛る炎。

 焦げ臭い匂い。


 まさに地獄絵図だった。

 五、六歳頃の、紫がかった髪の小さな少年は、燃えカスとなった元村でうずくまっていた。

 肩を震わせ、嗚咽を堪え、必死に何かを抱きとめている。

 それは三人の遺体とも呼べぬ遺体だった。


 真っ黒に焦げ、ほとんど識別もつかないような状態の遺体は両親と姉のモノだった。

 少年は偶然か、必然か、はたまた特別な能力でもあるかのように彼らの遺体にすがって泣いていた。


 紫の少年が泣き崩れる場所に数人の男たちがやってきた。

「ママが死んで悔しいでちゅか?」

 腐った声を発するのは数人の男の中の一人。

 彼らはこの小さな村を襲った犯人―盗賊たちだった。

 村を焼き払い、少ない金品を漁り、同じく少ない食料をも全て奪った連中だ。


 紫の髪の少年はキッと睨みつける。

「なんだよ、そう恐い顔すんなよ」

 最初に声をかけた男が笑いながら言う。

 しかし、紫の少年は睨み続ける。

「なんだよ? やんのか?」

 次第に機嫌も悪くなったのか、腰の刃物に手をかけた男。しかしその手を抑える手がもう一つ。

 リーダー格の男のものだった。彼は視線を紫の少年へ向けて言った。

「悔しかったら、また強くなって俺らを殺しに来い。まぁ、無理だろうがな」

 ニマリと笑い、踵を返す男。

 少年はひたすらにその憎い背中を睨みつけるばかりだった。






(クソッ嫌なモン思い出しちまった)

 仰向けでベッドに寝転がるのはゼノ・レークという紫がかった髪の少年だ。

 横向きに転がり、入り口に背を向ける。

(結局、盗賊の連中は崖から転落してたのを見つけたんだけどな)

 その後、復讐の為だけに磨いてきた剣術に目をつけたレイス・シュトリーネンにスカウトされ、教団に入ったワケだ。



 唐突に、背中の方からボスッと重たいものがのしかかってきた。

 見ると、薄緑のチュニックを纏った茶髪の小さな少女が勢い良く、ゼノの背中の方へダイブした後だった。

「今日も元気だな」

 少女はニコニコ笑顔で、何かの紙をゼノの眼前に押し付ける。


「これじゃ、見えねぇだろ!」

 紙をひったくって体を起こし、紙を確認した。

「西の都の大会? 西の都ってぇと、共和国の方か」

 少女の方へ視線を向けると、キラキラと瞳を輝かせていた。

「なんだよ? 行きたいのか?」

 勢い良く、コクコクと頷いた。

 しかし、ゼノは冷たい現実を突き付ける。

「残念ながらそりゃ無理だ。だって、これ今日開催なんだろ? じゃあ、帝国から共和国までなら全力で走っても無理だ。最低一週間以上はかかるんだからな」

 ゼノに言われ、ショボーンと肩を落とす少女。その背中が酷く寂しげに見えたので、思わず声をかけてしまった。

「なんだ、その、あれだ。なんなら今日は色々遊びに連れてってやってもいいぞ」

 若干照れながらゼノは少女に言うと、少女は太陽のような笑顔を満面に浮かべてゼノへタックル。そのまま抱きつく。

「……………………親馬鹿」

 終始を見ていた、ローグル・レイ――彼女の本名、リーナ・アリスンは素の彼女が出た時だ。今の彼女は作られたキャラの為に偽名を使う――はボソっと呟いた。

「うるせぇよ、お前ぇだって似たようなモンじゃねぇか」

 ゼノが仕事をしている午前中、彼女も茶髪の少女を色々連れ回していた。

 ゼノに言われた黒髪の少女は視線を外しただけだった。


「おら、とっとと準備しろよな」

 ゼノはベッドから立ち上がり、少女の真っ直ぐな茶髪をワシャワシャっとした。

 小さな少女も満面の笑みを浮かべ、紫の少年の後を追った。

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