7.
シエル姉さんに謎のお説教を受けていた俺のもとへアイゼンが、帰ってきた。
「あれ、お取り込み中?」
若干お酒入ってるようだった。
正座させられた俺を見たアイゼンの反応はそれだった。
「いや、これは、その」
俺の言い訳虚しく、シエルにまたも、怒られた。
説教も終わり、俺は開放される。
一応、アルヤに謝罪する。
無表情のまま、プイっと顔を背けた。しかしその表情の内に僅かな恥ずかしさを感じた。
「なるほど、アルヤは女の子だと」
納得したような顔でアイゼンはベッドに座るアルヤをジロジロ見つめる。
無表情ながら頬を紅潮させるアルヤ。
勿論、シエルの制裁の一撃が下る。
ゴッという音と共にアイゼンは地面に倒れ伏す。
シエルは、アイゼンをぶっ叩いた拳を開いてアルヤの頭を撫でた。
「心配しないでね」
アルヤの頬が赤く染まった。琥珀色の瞳はターバンに隠れて見えない。
「お前、その眼…………」
アイゼンはアルヤの琥珀の瞳を見つめた。
「その隠してる左目見せてくれ」
言われ、アルヤは左目の包帯を手で覆った。
「ちょっと、アイゼン――」
シエルが止めるも、アイゼンの真剣な眼差しは止められなかった。俺もアイゼンの様子にただならないものを感じた。
「い、嫌だ」
ゆっくりとアルヤが首を振る。しかしアイゼンの言葉は止まらなかった。
冷やかに、彼は告げた。
「お前、エルルの人間だろ?」
部屋内に衝撃が走った。
このタイミングでのデタラメは考えられない。
それに、アルヤの様子がおかしい。
「その左目は琥珀色じゃない、淡い銀色の筈だ」
言い放ったアイゼン。言われたアルヤは驚愕に右目を見開いている。
「な…………んで?」
覆う左手が顔にじわじわと食い込んでいく。
それを止めたのはアイゼンの右腕だった。
「俺の母も同じように銀色の瞳を片方持ってたからさ。お前と同じように幻術を使えたんだ、生まれつきの才能って奴だよ」
アイゼンの手に合わせ、アルヤの左手が外されていく。
そしてアイゼンは優しい手つきで包帯を解いた。
その瞳は全てを反射するかのような銀だった。光を反射して淡く輝いていた。俺やシエルが思わず感嘆の息を吐く。
「怪しいと思ってた。お前が幻術かけた時から。俺と同じ色の瞳だったからな」
アイゼンも琥珀色の瞳を見せるように目を見開いた。
「俺も、お前と同じエルル族だ」
アルヤはベッドの上でパタンと倒れた。その右腕の服の布が目元を覆っている。
アイゼンはベッドの上のアルヤに歩み寄り、頭を撫でた。
「辛かったろうな、一人で、ずっと」
微かな嗚咽が聞こえてくる。それは若干十四歳の若い少女のものだった。